はちみつマフィン泥棒
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今日はとっても暖かくて、まさに小春日和です。
クマ王国の生誕祭は、これまで一度も雨が降った事がありません。
真っ青な空を覆うように銀葉アカシアの花が咲き誇っています。
アカシアは“オジギソウ属”で別名ミモザとも呼ばれています。
山吹色の小さな花が枝がたわむほど、どっさりと咲いていました。
赤い尖がり屋根の『アカシアはちみつ店』の入り口にも『休憩中』と看板を立てました。
その黄色い花びらがふんわりと風に揺れる、のどかな午後の庭──。
エプロンを付けたミツバチたちも、客グマがいないのでいったん小休止しました。
みんなでお昼寝をしてるのか巣へ戻っています。
みつばちがいなくなると、今度はアカシアの木に止った春告げ鳥が、ホーホケキョーと気持ちよさそうに鳴いています。
テーブル席で白いクマ子ちゃんと、黒クマ君はお昼ご飯を食べていました。
テーブルには、はちみつマフィンが積み上げられた大皿と、黄色いクマ店長が作ってくれた特製ふきのとうとクルミのスープが入ったお鍋がありました。
2頭共遅いお昼につけたので、その食欲はすさまじいものでした。
特に黒クマ君は凄い食欲で、白いクマ子ちゃんにスープのおかわりを頼んでいました。
「はい、黒クマ君」
「ありがとう!」
と白いクマ子ちゃんが黒クマ君のお皿に特製スープをたっぷりと、よそってあげました。
裏庭はとっても美味しそうなスープの匂いが、そこかしこに立ち込めています。
ふきのとうは、クマたちにとって大好物の山菜で春の訪れといわれる食べ物でした。
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「ああ美味しい。このスープ、なんて爽やかな味がするんだろう」
と黒クマ君は満足そうにスープを飲みながらいいました。
「本当ね、ふきのとうのスープを飲むと、ほろ苦さと爽やかな香りがして、ああ春がきたんだなあって思うわ」
と白いクマ子ちゃんは鼻をクンクンさせながら、上品にスプーンで剝くってスープを飲んでいます。
テーブルにはたくさんのマフィンが、大皿に山盛りになっていました。
白いクマ子ちゃんはマフィンを2つ、自分の小皿に取りました。
黒クマ君はなんと5つもマフィンを取りました。
モグモグと美味しそうにマフィンに、はちみつをかけながら食べる黒クマ君。
口元にはびっしりはちみつとマフィンの屑がついてます。
「ねえねえ白いクマ子ちゃん。このはちみつマフィンもすっごく美味しいよ、僕ね、いくらでも食べれそう!」
「まあ黒クマ君ったら、そんなに急いで食べると喉をつまらせるわよ」
「だってとっても美味しいんだもん。けほっ、もう止まらないよ。それにお腹もとっても空いてたからね」
と黒クマ君は口いっぱいに、はちみつマフィンをほおばりながらモグモグ食べ続けます。
「もう黒クマ君たら、ふふ、口の回りが蜜だらけよ。食いしん坊さんね」
と白いクマ子ちゃんはかいがいしく、黒クマ君の口の周りをナプキンで拭いてあげました。
「あ、ありがとう……白いクマ子ちゃん」
「あんまり食べ過ぎると眠くなるわよ、午後もお客様くるんだし」
「モグ……そうだった。でも駄目だ、美味しくて止まらない……」
「フフ、いったい何個食べたの?」
「えっと……まだ3個だよ。あと2個残ってる……あれ?」
と黒クマ君は自分の残りのマフィンのお皿を見ました。なぜかマフィンのあったお皿が空になってます。
「あ!」と驚く黒クマ君。
「どうしたの?」
「あれ~変だなぁ?……あと2個、マフィンをお皿に取ったのに消えてるんだ」
「ふふ、もう食べちゃったんじゃないの」
「い~や、そんなことない。確かに2個あったんだもん。……どこいったんだろう、あっ!」
突然、黒クマ君が叫ぶと同時に指さしました。
「どうしたの?」
「あいつだ、あいつがマフィンを盗んだんだよ!」
「え?」
見ると裏庭の出入り口の柵からマフィンを持って逃げようとする、水色の子グマがよたよたと走っていました。
「こら、待てマフィン泥棒!」
と黒クマ君は慌てて小グマの後を追いかけました。
「あ、黒クマ君!」
白いクマ子ちゃんも、黒クマ君の後を追いかけました。
※ あら?突然のはちみつマフィン泥棒が現れました!




