ミツバチたちは給仕係り(2)
※ 2026/4/17 修整済
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白いクマ子ちゃんは、ようやく客クマたちが席に戻ってくれて、胸を撫でおろしました。
そしてエプロンのミツバチたち数匹が、各テーブルに置いてあったポットの上をクルクルと回りだします。
すると、あら不思議──!
ミツバチたちが触れてないのに、埃よけのために、逆さまにしていたティーカップが、クルりと上向きに持ちあがりました。
「へ?」
客クマたちがいっせいに驚きました。
更にミツバチたちはアカシア茶の入ったポットから、そのティーカっプに1つずつお茶を注いで、ソーサーにそっと置いていきます。
「おお見たか、ミツバチがお茶を淹れてる!」
「本当だ凄いぞ。こんなの初めてみたよ」
「まあ、なんて良い香りなんでしょう」
席に着いたクマ客たちは驚きで、目をまんまるくしました。
白いクマ子ちゃんの側にいた黒クマ君もびっくり仰天です。
「驚いたよ、白いクマ子ちゃん。まさかミツバチが、カップにお茶を注ぐなんて!」
「エヘへ、そうでしょう黒クマ君──実はね、私、黒クマ君も驚かせようと思って、今まで秘密にしてたのよ」
「ええ~ひどいなぁ……僕、本当に白いクマ子ちゃんが、ミツバチに刺されないかと心配したんだよ」
「ああん、ごめんね~!」
白いクマ子ちゃんは、悪戯っぽくつぶらな瞳をきらきら輝かせて、黒クマ君に謝りました。
「私も昨日、叔父さんから教えてもらったの。明日はクマ客がたくさん来るだろうから、魔法を使ってミツバチを給仕教育したんだって」
「へえ~黄色いクマ叔父さん、いや店長って本当にすごい魔法使いなんだね」
「そうよ、私の叔父さんは昔、王宮にいて王様にもお仕えしていた大魔法使いですもの!」
白いクマ子ちゃんは鼻高々にいいました。
彼女は魔法使いの黄色いクマさんを崇拝していたのです。
そして席に着いたクマ客たちに向かって、白いクマ子ちゃんは言いました。
「皆さん、お茶のお変わりもミツバチがしてくれますからね。このミツバチは店長が魔法を使って飼育してます。──なので、ミツバチも皆さまに奉仕しますので、どうか怖がらず安心して接してくださいね!」
「おお、なるほど魔法か!」
「どおりで、こんなに従順なのね」
「働きバチっていうだけあるよな」
クマ客たちも、すっかりミツバチのおもてなしに感心しきっています。
先ほどまで騒然としていたお庭の雰囲気から、一転してとってもホッコリしてきました。
「それでは皆さん、店内へお呼びするまで、ごゆるりとお過ごしください」
「「は~い!」」
ザワザワと席についてるクマ客たちも、和やかな団らんとなりお茶を飲み始めました。
とはいいつつもクマ客たちは、最初はミツバチを訝しがっていましたが、かいがいしく給仕してくれるミツバチたちが、自分のカップにお茶を注いでくれたり、運んできたお皿のマフィンに蜜瓶からたっぷり、はちみつをかけてくれたりすると、しまいには大喜びしました。
「まあ、アカシア茶の美味しい事。なんてよい香りかしら」
「うん上手い、このはちみつをたっぷりつけたマフィンは最高だ!家の子どもたちが喜ぶぞ、これもケーキと一緒にたくさん買っていこう!」
と若い奥様風のくまさんと、大きなグリズリークマさんは同じテーブルで、お互いすっかり意気投合していました。
他のテーブルの客クマたちも、アカシアの花を見ながらお茶を飲み、またマフィンを食べて和やかにしています。
また1から15番の整理番号をもらった初めのクマ客たちも、『せっかくだからアカシア茶を飲みたい』と希望したので、お茶とマフィンを食してから店内に入ってケーキを購入してもらいました。
こうしてアカシアはちみつ店の午前中は、あっという間に過ぎました。
それでもはちみつケーキを予約したお客様は、午後以降もたくさん来店します。
白いクマ子ちゃんと黒クマ君も、まだまだ忙しく、働き続けねばなりません。
これからが正念場なのです。




