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アカシアはちみつケーキとクマ王国のお祭り  作者: 星野 満


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3/11

お庭でゆっくりと

✧ ✧ ✧ ✧



「皆さん、これから整理券をお配りします。お手数ですが一列に並んでください!」


 白いクマ子ちゃんはよく通る声で、わんさかと店に入ろうとするクマ波を一声で止めました。


「何だ整理券って?」

「ひどい、早くきたのに!」


 グリズリーみたいなクマさんと、品の良い若奥様風のクマさんは口を(とが)らせました。


「ご安心ください。早く来た方から整理番号を渡しますので大丈夫です。ただこの通り、店はとても狭いので一度には入れません」


 白いクマ子ちゃんはニッコリと微笑んでいいました。

 

 彼女の笑顔はとっても可愛いのですが、不思議と大人でも有無をいわせない迫力がありました。


 なので強引なグリズリーのクマさんも、若奥様風のクマさんも、白いクマ子ちゃんの説明は、黙ってしまいます。


「では整理券の順番にお呼びします。お待ちいただく(あいだ)、裏庭でお客様たちの席を設けますので、アカシアの花を眺めながら、お茶とお菓子を頂いてゆっくり、くつろぎください!」


「え、お茶がでるのか?」

「まあ、お菓子も?」


 グリズリーのクマさんと、若奥様風のクマさんの顔がパッと明るくなって、白いクマ子ちゃんに聞き返しました。


「はい、そうです。お茶は店で販売してるアカシア茶で、とっても甘い香りがしてとても人気があります」


「おお、私はそのお茶も買いたかったんだ。アカシア茶が飲めるとは!」


「まあ、あの黄色いお花が咲いているお庭に入れるの?」

 

 今度は他のクマ客たちまで驚いています。


「はい、裏庭でお手数ですが待っていてください。すぐに呼びますから」

と今度は黒クマ君も笑顔でクマ客たちに返事しました。


「だったらそうだな~、俺は整理番号、後でもいいよ」

「私も。ゆっくりお茶が飲みたいわ。ずっと立ってて疲れちゃったし」 

 とグリズリーのクマさんと若奥様風のクマさんまで同意しました。

 

あらまあ、さっきはあんなに『早く入れろ!』と騒いでいたのに。2頭ともサービスでお茶が飲めると聞いたからか現金なものです。


 とはいえこのアカシアはちみつ店は、年中アカシアの花が咲いていると、王国中から噂されていたので、ひと目アカシアの花が咲く庭が見たくなるのもわかります。

 

「はい、お客様の好きな整理番号を渡しますよ。せっかくわざわざ遠方からお越しくださったのです。お疲れでしょう。──どうぞ庭でゆっくりしていってください。アカシアはちみつをふんだんに使った、自家製マフィンもとっても美味しいですよ!」


 白いクマ子ちゃんがハキハキと返事しました。

 はちみつケーキ以外のお菓子も、ちゃっかりと宣伝してさすがです。


「おお、それはいい考えだ!」

「素敵、はちみつマフィンもあるのね」

 とグリズリークマさんと若奥様風のクマさんは大喜びです。


 他のクマ客一同も皆、納得してくれて、ようやく騒ぎは一旦おさまりました。



✧ ✧



「ねえねえ白いクマ子ちゃん!」

 と黒クマ君は白いクマ子ちゃんが整理券を配っている時に、ゴニョゴニョと彼女に耳打ちしました。


「なあに黒クマ君?」

「整理券は良いけどさ、お客さんとっても多いよね。裏庭のテーブルやイスはお客様の分あるの?──あとね、誰が給仕するのかな? 僕、それとも白いクマ子ちゃん?」


 黒クマ君が心配したのも無理はありません。

 ざっとみてもクマ客は100人以上いました。


「それは大丈夫。昨日の夜から店長と相談してたの。すでに裏庭には、お客様のテーブル席も用意してあるのよ。あとね、優秀な給仕も待機してるから」


「え、そうなの?」


 くろくまくんは薄茶の大きなお目々をパチパチ(まばた)きしました。



✧ ✧


 整理券を全員に配り終えると、2頭はクマ客たちを裏庭に案内しました。



 そこは、なんとまあ別世界みたいでした。


 大きなアカシアの木が数本あり、裏庭の回りをぐるりと辺り一面、囲んでいます。

 

 全てのアカシアの木が満開で、それはそれは見事な光景でした。


 橙色(だいだいいろ)や黄色の可憐なアカシアの花びらが、風にチラチラと舞い、朝のおひさまの中でキラキラと輝いています。


 庭には真っ白なガーデンデッキ用のテーブルとイスがあちこち用意されていました。


 テーブルの上にはモスグリーン色の、テーブルカバーが敷かれており、白いポットとおそろいのティーカップセット、お皿と白ナプキンがそれぞれイスの分だけ用意されていました。


 茶器はおひさまの光に反射して、ピカピカと白く輝きを放っており、とっても美しいです。

 

 裏には、さながら春のガーデンレストランのようでした。


「おお、これはいい!」

「まあ、何て素敵なお庭なのかしら?」

「驚いた、アカシアの花がこんなに満開なの、初めてみたぞ!」

「すごい、庭中が黄色い王国のようだ!」


 客グマたちは感嘆の溜息(ためいき)がもれた後、口ぐちに裏庭を()めました。



「それでは15番までの整理券の方は、私たちと一緒に店内へご案内します。他の方はテーブルについて、お茶を召し上がってお待ちくださいね」


 白いクマ子ちゃんが、クマ客たちをテキパキと誘導(ゆうどう)します。


 クマ客たちは、それぞれ番号札の席に着きました。


 その時でした──。

 

 庭の隅の物置小屋が開いてブーンとすごい音がした途端──。 

 突然、たくさんのミツバチたちが集団になって、こちらへ向かって飛んできました!



「きゃー!ミツバチだ!」

「わあ、大変だ、刺されるぞ!」

「逃げろ!」


 さあ大変です、一難去ってまた一難!

 

 今度はミツバチの大群がぶんぶんと物凄い早さで飛んできました。

 

 ミツバチたちは、アカシアの花の甘い匂いの蜜をかぎつけて、やって来たのでしょうか!


 あわや、恐れおののく黒クマ君、そして客クマたちです!




※2026/4/17 修正済み

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― 新着の感想 ―
すごい♪整理券を配るだけでなく、待ち時間の間にもてなしまで(*^^*) とても素敵な計らいですね〜♪ お庭の満開のアカシアの花も、お茶とお菓子もいいですね。 うわっ!ミツバチの大群!大丈夫かな…??…
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