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スカイ・レコード  作者: 平田公義
第八章
60/118

~揺らぎ~ カルスト地形激戦区〈前編〉

 (サクラ)たちの気合はこれまで以上に充実していた。


 少しの休息であったが、シャトーとレナンをはじめ、多くの人が御馳走を振るまい、激励をくれた。(サクラ)たちにとって貴重で、大切な時間であった。その時間をまた、今度は平和な時に過ごせるようにしたいと強く思う。


 キャンプ地を背にして、彼女たちは再び占拠されている里へと〔アル・スカイ〕を駆って急行。凹凸の激しい緑の大地を見下ろしながら、白銀の機体は大きく跳躍を続ける。


 勇子(ユウコ)はバイザーを上げてむず痒い鼻頭を軽く指先で揺れて、湿布を張った頬の痛みに顔を顰める。ヘルメットをしているとその圧迫で頬と鼻は落ち着かない。湿布の臭いが鼻血と混じって鼻腔を突いて、頭痛までしてくる。


 ミュウの手当ての仕方も粗雑だったのもあるかもしれない。だが、彼女は彼女なりに勇子(ユウコ)の事を気遣っていたし、そういう励まし方なのだろうと半ば強引に理解した。


(サクラ)、姫様、もうすぐ予定地点です。準備はよろしいですか?」


 勇子(ユウコ)はバイザーを下ろして、いつもの調子で映像内線の二人の顔を見ながら問いかける。


「はい。いつでも」

「さっさと片付けるぞ」


 (サクラ)とミュウも彼女の凛とした声に気持ちが引き締まる。いつも通りの、緊張感と安心感を持たせる声音。耳に染みついた彼女のインフォメーションは明澄で気分を良くしてくれる。


 そして、勇子(ユウコ)がいち早く敵拠点を索敵し、状況を分析する。


 メイン・モニタにも開けた土地が見え、なだらかな丘の濃淡な緑色が見える。


「先の戦いで、母艦二隻、〔アルファ・タイプ〕六機撃墜したけど、敵の立て直しが早いわ。現在確認できる機影は、母艦二隻、〔アルファ・タイプ〕十六機」

「どこからか応援を呼びつけおったか」

「先の戦闘から四時間。おそらくは近くの拠点から移ってきたのでしょうね」


 バブル・スクリーンや立体スクリーンに投影される各ステータス。


 広範囲レーダーでの走査では、現在地より半径一〇キロ内には拠点を守る機影はない。といっても、三次元での範囲設定なのだが、バブル・スクリーンの底の方では白く濁った表示がされている。電波障害でみられる現象だ。


「ここの岩はどうも電波干渉するわ。火器管制に気を付けて。逆に、敵も低空からの侵入を察知する速度は遅い」

「前の戦いで承知しておる。しかし、今回は――」

「敵を引きつけます。被害を最小限にいたしたいので」


 ミュウの声に重ねて、(サクラ)が緊張の面持ちで言った。


 里での戦いを避けるために、敵にはいち早く〔アル・スカイ〕の位置を特定してもらわなければ困る。そのために高度を取って、見下ろしているのだから。


 ピピッ。軽快な電子音が鳴った。


「敵のアクティブ・センサを傍受。気づかれたわ」


 静かな勇子(ユウコ)の声に、緊張感が一気に高まる。


 メイン・モニタには上昇してきた〔アルファ・タイプ〕六機が米粒大で確認でき、それぞれに緑色のカーソルが当てがれてる。


 敵機から小さな所作が窺え、カーソルの色が黄色に変わる。


 警戒指示。敵機が火器を向けたか、交戦意思と取れる予備動作をしたのだ。


〔アル・スカイ〕はゆったりとした動きで、間合いをつめていく。バリアス・ショットガンを右マニピュレータに握らせながらも、銃口は空に向ける。


 (サクラ)たちは、自分たちから仕掛けるようなことは避けたいと思ったからだ。


 前史的な戦争条約による思考であるが、気持ちを整理するのにはよかった。敵を討つ大義名分は飾りでしかないが、ネガティブな考えを防止するには都合がいいのだ。


 まっすぐに進む〔アル・スカイ〕に対して、上昇してきた〔アルファ・タイプ〕は広範囲に展開して方位陣形を取る。


 米粒大のものが、黒色の小石ほどの大きさに見えた。カーソルが黄色から赤へ。警報音がなった。


「右斜め、五〇度っ。熱量、増大」


 勇子(ユウコ)のてきぱきした声が(サクラ)たちの耳を打った。


〔アル・スカイ〕は戦闘速度に移行して、スラスターを噴射して前のめりなって跳ぶ。すぐ後ろをまばゆい光が通過して、機体の装甲を軽くあぶった。


 次の瞬間には、ほかの〔アルファ・タイプ〕の十字砲火が襲い掛かってくる。上下左右、前後斜めとあや取りのように重なる光の線。幾重にも束になって、模様のようになって〔アル・スカイ〕の進路と退路を阻む。


「こやつら、連携がうまくなっておる」


 ミュウはメイン・モニタを埋め尽くす閃光に目を細めながら言った。


 拠点強襲時よりも、明らかに戦い方に実直な意思があり、互いの射線を避けて攻撃をしている。強襲時では互いの呼吸を理解できず、ちぐはぐしていた動きに思えたのだが。


〔アル・スカイ〕がバリアス・ショットガンを機銃モードで乱射しつつ、マントをたぐり寄せてビームの網を突破する。しかし、その横間から数条の光が襲い掛かった。


 ギャァアアン!


 ビームの干渉音が(サクラ)たちの脳髄に響いた。次の瞬間には、体を強く打つ衝撃が襲い掛かり落ちている感覚が全身を支配した。


「――――ん」


 (サクラ)はトラックボール型の操縦桿をわずかに引いて、フットペダルを足先で小突くように踏んだ。


〔アル・スカイ〕は敵のビームの雨をマントで防ぎつつ、姿勢制御スラスターで体勢を立て直す。すでに足元にはカルスト地形の岩肌が近くにあった。


〔アルファ・タイプ〕は躊躇なくビーム・ライフルを連射して、空中を人型形態で旋回する。


「岩陰に隠れて。敵は拠点が近くないから、容赦ないわよ」


 勇子(ユウコ)の推測であるが、ミュウもそれで敵の連携のよさに納得した。


 増援の部隊が強力なのだ、と思うより彼らの本気がこういうものなのだと思うほうが気持ちは楽だ。今までも〔アルファ・タイプ〕の連携陣形を前に孤軍奮闘してきた。その経験が彼らの本気と拮抗するものであると自信があった。


 (サクラ)も敵の動きにはそういう解釈がしっくり来ると思いつつ、〔アル・スカイ〕をほとんど自由落下させるようにして岩の森林へと滑り込ませる。


 大腿部と背部のスラスターで減速と方向調整をしつつ、応戦する。周囲の岩がビームで砕かれて、粉塵と礫が次々と降り注ぐ。操縦席にそれらが当たる音が聞こえる。


〔アルファ・タイプ〕は一度射撃の手を緩めて、粉塵の中からくるビームの連弾を回避しつつ慎重に奮迅が晴れるのを待った。


「やっぱり、向こうも慎重になってる。こちらのセンサにも干渉がある」


 勇子(ユウコ)は敵の攻撃が止んだのを察知して、眉間にしわを寄せる。


〔アル・スカイ〕は岩陰に背中を預けて、バリアス・ショットガンを機銃モードから散弾モードへと移行する。銃身の下部にある先台(フォアエンド)を往復させる。これによって、薬室内に拡散媒体が装填され、ビーム・散弾を放つことができる。またこの操作をしなければ、そのままスラグ弾状に撃つことができる。


 ミュウが敵を広範囲で捕らえようとしての判断である。


「どういうことだ?」

「センサの低下が向こうにもあるかもしれない。だから、じりじりと範囲を狭めてくる」

「わたしたちの位置を正確には把握できていないのですね」

「それで見つけ次第には一斉射撃で仕留める」


 勇子(ユウコ)の分析に(サクラ)とミュウは息を呑む。


 人型形態の〔アルファ・タイプ〕は次々と降下を開始して、森林に身を沈めるようにしながら迷路のような渓間を練り歩く。逆間接の脚部は粘り強く、振動を最小限にまで軽減して足音をかき消す。


 勇子(ユウコ)はセンサの出力を全開にしても、その足音を拾うことはできなかった。


 このままじりじりと間合いをつめられて、行動範囲を狭められてはおしまいだ。


 上空に飛ぶか。いや、敵は高空戦を望んでいる。むしろ、地面すれすれで撹乱して戦うほうが〔アル・スカイ〕には有利である。


 とはいえ、〔アル・スカイ〕が森林に身を隠すとなれば、腹ばいにならなければならない。屈んだところで状態は梢からはみ出してしまうのだから。それでも岩を隠れ蓑にすれば、十分な勝算がある。


 索敵範囲が十分の一ほどに低下していても、索敵範囲に一歩でも踏み込めば感知もできる。


 勇子(ユウコ)が注意深くアクティブ・センサで敵の位置を割り出す。


「二人とも、背後に二機。勝負は一瞬」

「こうなると勇子(ユウコ)の広い感覚を頼らざるを得ないな」


 ミュウは深く息を吐き出して、シートに体を押し付ける。


 彼女の目は動くものを捉えることに長けているが、後ろに目があるわけではない。いくら動体視力がよくても限られた視野からでは敵すべての動きを把握することはできない。


 勇子(ユウコ)の持つ素早い判断、索敵能力、そして状況に応じた声のテンション。彼女は自覚していないだろうが、声の持つ力とは時に人の心を制御する。


 彼女の一声が時にミュウや(サクラ)のモチベーションを上げたり、維持したり、熱くなった頭を冷やす。緊張状態が続く中では一服の清涼剤にも、活力剤にもなる。


 今、四方八方から敵がにじり寄る中で声を張り上げればミュウも(サクラ)も驚いて飛び出していただろう。焦燥感を駆り立てて、攻撃にムラを生んでいただろう。


「姫様と(サクラ)なら十二分に対処できる。落ち着いて。タイミングは(サクラ)に任せる」

「はい。かしこまりました」


 (サクラ)は肩肘から余計な力を抜いて、立体スクリーンに出力さえる敵との距離を測る。八〇〇メートル地点を蛇行して、ゆっくり近づいてくる。すでに間合いはつめられていたが、確実に仕留めるために堪える。


 七〇〇――、六四〇――、五八〇――と距離が詰まっていくと(サクラ)の体は熱くてむずがゆくなって、落ち着かない。


「五五〇を切ったわ。ほかに敵影なし」


 勇子(ユウコ)の澄んだ声が(サクラ)の熱くなる体を冷ます。


 気を持ち直して、(サクラ)はミュウの息遣いを聞いて、タイミングを計る。


 そして、ミュウが息を止めた。射撃する姿勢に入った。


 (サクラ)持ち前の瞬発力で、操縦桿とフットペダルを動かす。


〔アル・スカイ〕もまた彼女の反応を忠実に追跡して、岩陰から機体を反転するようにして飛び出した。すると、メイン・モニタに〔アルファ・タイプ〕二機が並んで飛んでいた。一機がこちらに気づいて、驚いているようだった。


「――――んっ」


 ミュウはそのタイミングを逃さず、トリガーを引いた。


 バリアス・ショットガンから花火のように広がるビームの光弾が吐き出される。ビームの散弾が敵の装甲を穿ったが、致命傷にはならない。有効射程距離から少し遠かった。


 しかし、〔アルファ・タイプ〕はその衝撃によろめいて体勢を崩す。


「しぶといっ」


 ミュウに距離を詰めるという考えはなく、操縦桿を動かす。


〔アル・スカイ〕はすかさず先台(フォアエンド)を往復させると、二射、三射立て続けに発砲する。きらびやかに広がったビームは容赦なく〔アルファ・タイプ〕に襲い掛かって、地面に落下した。


「退避して!」


 勇子(ユウコ)の声に(サクラ)は素早くフットペダルを切り返して、〔アル・スカイ〕を横っ飛びさせる。


 近くの岩に飛び込んだと同時に敵機が爆発。爆炎が赤い絨毯のように広がり、すさまじい風圧が渓間を吹き抜け爆心地へと戻る。


〔アル・スカイ〕は爆心地近くにいたが、岩が盾になってしのぐことができた。マントが大きく揺らめいて、爆風が操縦席に鈍い衝撃を運んだ。


「二機、撃破。三時方向から二機接近!」

「見えている!」


〔アル・スカイ〕は立ち上がりつつ、指示された方向に発砲。スラグ弾のビームが放出されるが、岩の間を飛行する〔アルファ・タイプ〕はそれらを目隠しにして、接近を図っている。


 |桜《サクラ〕も〔アル・スカイ〕に岩を目隠しにさせて、向かってくる敵機へと接近させる。燃え盛る森林を踏み越えて、岩の合間を過ぎる敵を右手に捕捉する。まるでスリットを覗き込んでみた連続絵のようで、ひどく捉えずらい。


「ガゥッ。照準が合わん」


 ミュウが苛立ち交じりに吠えた。


「一機、回り込んでくる!」

「もうっ」


 ミュウは悪態をついて、もう一方のバリアス・ショットガンを〔アル・スカイ〕に持たせる。


〔アル・スカイ〕は上空を旋回してくる〔アルファ・タイプ〕を捉えつつ、左脚部が前に踏み出す瞬間、懸架しているバリアス・ショットガンを押し出すようにして解除する。


 そして、空いている左腕部が流れる動作でそれを手にすると、くるりとマニピュレータの中で銃を一回転させて敵に狙いを定める。


 二機の発砲はほぼ同時であった。互いのビームは標的を撃破しそこなうも、〔アルファ・タイプ〕のビームは地面を穿ち、森林を爆発させて赤い炎を巻き上げた。


「うっ」


 (サクラ)は眩い閃光に思わず、機体に制動をかける。


〔アル・スカイ〕は森林をなぎ倒す様にして着地、しばらく滑走する。身体が前に吹き飛ばされそうな衝撃が襲い、それをシートが固定して無理に引き止めた。


 三人の身体はくの字に折れて、シートに押し戻される。


「正面っ!?」


 勇子(ユウコ)が警報が鳴り続ける操縦席で声を張り上げた。視界がくらくらするも、頬を殴られた時の痛みがいい活力を与えてくれる。


 (サクラ)はうっと息を詰まらせながらも、〔アル・スカイ〕を上空へと退避させる。


「何? 巨大な……。敵母艦!?」


 勇子(ユウコ)はセンサが新たに捉えた影に狼狽する。


 渓間を走っていたために、巨大な母艦の影を察知できなかった。


「方位は、どちらです――、きゃぅ」


〔アル・スカイ〕の足元から伸びあがったビームが機体をかすめて、大きく揺さぶった。


 (サクラ)は機体を波打つように回避運動を取らせ、ミュウはマズル・フラッシュがあった個所に攻撃した。だが、撃墜した手ごたえはない。無益に木々が蒸発して、梢がパラパラと火の粉となって舞い散る。


 勇子(ユウコ)はその間にも敵母艦の位置を発見する。


「九時方向。距離一〇〇〇」


 立体スクリーンに映像を呼び出して、岩の間を狭そうに移動する鏡面装甲を映し出す。


 映像にノイズが混じって見えにくいが、間違いなくひし形の母艦である。


「母艦を一隻叩けば、それだけで戦況は好転するというものっ!」


 ミュウはそう息巻いて、左のバリアス・ショットガンを発砲させた。


 敵の装甲にビームが無力であることは承知だ。だが、周囲の岩はどうだろうか。連射して進行方向の尖った岩を削り、ちょうど崩れ落ちるところに敵の衝角部分がさしかかった。


 ガラガラと岩塊が崩れて母艦に衝突する。艦体が傾いたのが、目に入った。


「やったぞ!」


 ミュウは思わず歓喜の声を上げる。


〔アル・スカイ〕は母艦を正面にして、背後から追撃してくる敵の攻撃を避け続ける。目の前を敵のビーム光が横切り、三人は目を細める。


 だが、次の瞬間〔アル・スカイ〕の正面からビームの束が襲い掛かってきた


「――――っ」


 (サクラ)が気が付いた時には、メイン・モニタは真っ白で身体を砕かんとする激震が襲いかかっていた。


 悲鳴を上げる暇などなかった。死んだ、という意識がぽつりと浮かんで途切れた。


 刹那時間。彼女たちは三途の川につま先をつけて、すぐに引き返すビジョンを見る。


 ビームは〔アル・スカイ〕の肩口をかすめ、脇腹、腹部に着弾するもマントの効力で致命傷には至らなかった。とはいえ、操縦者たちの意志を失った〔アル・スカイ〕はそのまま後ろへと吹っ飛ばされて、岩に叩き付けられる。


「う、んっ」


 (サクラ)たちは背中に走った衝撃で目を覚ますも、手足は痺れて動かない。


〔アル・スカイ〕はそのまま重力に身を任せて、糸の切れた人形のように森林へと落下する。


 ドスンッと仰向けに落っこちて、空を見上げる。


「味方のビームを反射させたのか……?」


 勇子(ユウコ)は咽ながら、敵の攻撃の正体を推察する。


 母艦が岩塊で揺れて見せたのは〔アルファ・タイプ〕の攻撃を反射する角度を調整する動きだったのだろう。そして、〔アル・スカイ〕が避けても屈折させて打ち返す。


 警戒警報が響き渡り、立体スクリーンには〔アル・スカイ〕の損傷個所が列挙されている。ダメージコントロールが急務。機体の各所で異音が鳴っていた。


「敵が来るぞっ」


 ミュウは機体の状態よりも、空中を旋回する敵機の影を見つけて叫んだ。


 (サクラ)は無理やりにダメージコントロールを省略して、〔アル・スカイ〕のスラスターを全開にした。


 機体が浮かんで、そのまま森林の中へ頭を突っ込ませ幹や枝をへし折っていく。敵の攻撃はスラスターが放つ光を目印に攻撃を仕掛けてくる。


 周囲で爆音が鳴り響き、(サクラ)は思わず身を縮こまらせる。


「立ってくださいっ」


 (サクラ)は祈るように言って、音声入力を施す。命令反応オーダー・リアクションは機体の固い動きになってしまうものだが、〔アル・スカイ〕は背部スラスターを一気に噴射して上体をお越し、空気椅子をするような体勢になるとすぐに脚部を足に着けた。


 その間の動きは実になめらかで、(サクラ)本人が操縦したかのような感覚があった。


 しかし、驚いている暇はない。


 操縦権が(サクラ)に戻ると、すぐさま〔アル・スカイ〕はその場を疾駆して岩陰を行く。バリアス・ショットガンを二丁携えて、母艦の動き、〔アルファ・タイプ〕四機の挙動を逐一分析しながら、今は機体の調整に専念する。


 勇子(ユウコ)は左手に映る鏡面装甲の母艦がのそのそと飛行しているのが、不気味で仕方なかった。


「母艦を投入してきたということはどこかで、増援を下ろした可能性もある」


 その考えは至極当然であろう。


 電波障害が激しい場所で、増援部隊はおそらく地上から攻め入ってくるはずだ。すでに派手な爆音をいくつも起こしている。


 (サクラ)たちは自分たちが追い詰められていることを自覚しながらも、心が折れるようなことはなかった。胸の内に熱く燃える情熱は、キャンプ地で作戦成功を待つラトゥ達のためにある。


 例え、共にした時間は短くとも、彼らの誠実で仲間思いの気概は今目の前にしている敵に非身にじらせはしない。


「機体調整、完了。母艦を優先に再度攻撃を仕掛けるわよ」


 勇子(ユウコ)の指示が飛ぶと、(サクラ)とミュウは威勢よく返答した。


〔アル・スカイ〕もまた彼女たちの放つ『気』に当てられてか、徐々に人工筋肉のテンションを上げていく。


 そして、〔アル・スカイ〕は跳躍すると再度空を駆けて〔アルファ・タイプ〕部隊の目を掻い潜り、母艦へと突撃する。

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