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スカイ・レコード  作者: 平田公義
第四章
31/118

~跳舞~ 惑星降下作戦〈前編〉

 収束したビームが太陽を背にして、未確認勢力母艦へと迫る。


 しかし、母艦は艦体を傾けて『ファルファーラ』側へとよって回避行動に出た。細いビームが側面を過ぎて、その光が鏡面に反射した。


〔アル・スカイ〕は機体のバランスを保ちつつ、反射光をを確認。次の狙撃に備える。


「敵位置を修正。出力を二〇パーセント上げてください」

「承知した」


 ミュウは操縦桿を撫でるようにして、出力を上げる。側面のモニタにサークル状のエネルギーゲージが表示されて、慎重に伸びあがっていく。


「敵可変機、仮称〔アルファ・タイプ〕の出撃を確認」


 勇子(ユウコ)が敵母艦から放出される敵機を察知して告げる。果実の中からこぼれだす種子のようにばら撒かる敵機は岩石のように丸まった形態だった。


 敵機〔アルファ・タイプ〕の動きは見るからにまばらで、襲撃を受けて慌てて飛び出してきた感じがあった。


 ミュウは目つきを鋭くして、開け放たれた母艦のハッチを狙った。出力は十分。それを維持して、諸元を再入力して、あとは呼吸を合わせる。


「————っ」


〔アル・スカイ〕がバリアス・ショットガンを放つ。


 マズルフラッシュが瞬き、出力を高めた収束ビームが飛び出す。その時には(サクラ)の操縦で、機体は降下軌道を添うようにして、敵布陣へと飛び立っていた。


 ビームが散らばった〔アルファ・タイプ〕の合間を塗って、母艦を捉えた。花弁のように開放していたハッチの一部に接触したが致命傷には至らない。外装の鏡面がその質量、電荷を跳弾させている。


 その様子は(サクラ)たちにも視認できた。


「相手の母艦にもアンチ・ビーム兵装があるのか?」


 勇子(ユウコ)は〔アル・スカイ〕に敵の性能を学習させながら、軌道計算と敵の動向を窺った。


〔アルファ・タイプ〕が接近する〔アル・スカイ〕の影を捕捉して、一斉に行動を開始する。岩石形態の機体が真っ向から挑み、人型へと変形した数機は母艦を護衛、後方支援に入った。


「来ますよ!」


 (サクラ)は拡大モニタに映る敵影を見て、敵意を感じた。人型は銃を構えて、岩石型も下部に携行する銃の砲身を動かしていた。


 後方支援の一斉射。


 前線に出る機体を壁にしつつ、見事な連携でビームを〔アル・スカイ〕へと届ける。


 (サクラ)たちは息を飲んで、〔アル・スカイ〕に回避行動をとらせた。扇状に広がったビームの戦列を飛び越して、『ファルファーラ』を背にしてバリアス・ショットガンを構えた。


 狙撃モードから機銃モードへ移行する。


 銃床(ストック)を収納、銃身を短くして小脇に抱えるようにして構える。両腕支え、高速で流れる前面の敵へ斉射する。


 圧縮されたビームの光弾が宇宙を駆ける。


 前面に展開していた〔アルファ・タイプ〕三機が三方に散らばってやり過ごす。続いて、包囲網を狭めるようにして射撃武装の十字砲火が〔アル・スカイ〕に襲い掛かる。


「————っく」


 (サクラ)は操縦桿を握り締めて、フットペダルを機敏に操作する。


〔アル・スカイ〕は『ファルファーラ』の自転から生じる力場に合わせて横間へ移動。一瞬にして速度が跳ね上がった。その衝撃を(サクラ)たちは感知して、高機動戦闘をしていると緊張が走った。


 三人にかかる負荷は予想以上で、頭に一気に血が押し上げられる。鉛が落っこちてきたような衝撃が脳みそに走って、集中力が途切れてしまいそうだった。


 その間に、上下に広がる敵機へ応戦。


〔アルファ・タイプ〕三機は〔アル・スカイ〕の攻撃など気にせず、間合いを詰める。速度の上がった機影に対して、伸びのいい加速を見せてその差を縮めようとする。


 彼らからすれば、〔アル・スカイ〕の動きは鈍感なものに見えた。練度の足りていないおろそかな態勢とテールノズルの光を断続的に出しては居場所を知らせている。


 後方で待機していた母艦と直掩もそれを追撃。遠距離射撃が殺到する。


「敵がこっちに引き寄せられてる」

「作戦は成功、というわけでよさそうだな」

「はい。それでは、参ります」


 (サクラ)たちは頭に上った血に顔を真っ赤にしながらも、敵を引き付けられたことに安堵する。


 愚直な運動をして見せて、敵の注意を引く作戦は成功した。しかし、重力に引っ張られつつある機体は速度を増している。


〔アル・スカイ〕の動きにつられてくれたのはいいが、むちゃくちゃな機動は彼女たちの負担を大きくした。もちろん、普通の戦闘機動だけでも体がバラバラになりそうな痛みを伴うが。


〔アル・スカイ〕は正面、側面、後方から距離を詰める〔アルファ・タイプ〕を見やって、まず正面に発砲。


 三点バーストの光弾が正面の敵をかき乱す。


 しかし、三方の射撃、後方からの遠距離射撃に(サクラ)たちも四苦八苦で、加速に任せた突破は無理だと察知していた。


 上下左右からくる数条のビームに機体を揺すって回避、避けきれないものはマントで防御。被弾の衝撃に体が吹き飛ばされそうになる。


 がくんと〔アル・スカイ〕がつんのめり、一瞬『ファルファーラ』の広大な地表が目に飛び込んできた。太陽の光が届かない夜の部分。奈落の底を思わせるその暗闇に、(サクラ)たちは落ちる感覚を覚えた。


「敵母艦、急速接近。(サクラ)、後方が迫ってくる」

「はいっ。ミュウ様!」


 (サクラ)は目いっぱいに声を張った。腹の底が沈む感覚を紛らわせるためだ。


 ミュウは(サクラ)の声に任務を了解した。


 後方から迫る〔アルファ・タイプ〕は岩石型のまま牽制射撃をしており、さらに加速をかけていた。それが特性なのか、ぐんぐん肉薄してくる。いや、〔アル・スカイ〕が射撃の回避と防御で速度が緩んでいるのだ。


〔アル・スカイ〕は機体を立て直すと、前面への射撃を切りあげる。星の輪郭と宇宙の境を見据えつつ、左脚部に懸架しているもう一丁のバリアス・ショットガンを手にした。二丁の銃を握り、照準を調整。


「準備はよいぞ!」


 それを合図に、〔アル・スカイ〕はマントを翻して後方へ機体を捻った。その先に左腕部が握るバリアス・ショットガンの銃口が急接近する敵影を追った。


 呼吸を合わせて発射。


 スラグ弾のようなビームが力強く伸びあがった。初速は機関銃モードよりも早い。


 狙われた〔アルファ・タイプ〕はランダムな軌道をとって回避して見せたが、ぐっと速度を押さえて距離を取る動きがあった。急制動をかけたようだ。


〔アル・スカイ〕は小惑星帯(アステロイドベルト)側を意識して飛行しつつ、側面で射撃をする一機にもう一丁のビーム連弾を叩き込んだ。


 (サクラ)たちは下っ腹に力を込めて、意識を集中させる。


 足首を掴まれたような重力の誘いを振り切ろうと無意識に小惑星帯(アステロイドベルト)側に飛ばしていたが、すでに〔アル・スカイ〕はマッハ10を超えて、急速に『ファルファーラ』へと接近していた。抜け出すことはかなわない。


 側面の敵機には数発命中したが、致命傷にはならない。むしろ、人型へと変形して白兵戦へ持ち込もうとしていた。潔さを感じさせた。


「白兵戦に——」


 勇子(ユウコ)が苦しそうに言葉を紡いだ。激震する操縦席の中で、敵の動きが鈍く感じられた。


 白兵戦の速度は射撃戦の反応とは違う、鋭敏で刹那の判断力が要求される。鉄塊が超高速で迫ってくる威圧感は一瞬で足元をすくわれかねない。


 (サクラ)は咄嗟に操縦桿を回し、フットペダルを踏み込んだ。


 接近する〔アルファ・タイプ〕はビーム・サーベルを握り締めて、すり抜けざまに一閃。


 しかし、〔アル・スカイ〕は体を捻って、闘牛士のようにマントを振った。飛び散った粒子がちりちりと機体の装甲を焼いた。


 二機が互いの距離を一瞬のうちに開くと、他の〔アルファ・タイプ〕が集中砲火。


〔アル・スカイ〕は大きく弧を描くようにして飛行しつつ、牽制射撃。どちらもライフルモードに移行し、断続的に撃ちだす。機銃モードの有効射程ではなかったし、撃ってもさしたる破壊力を持たない、とミュウが判断したのだ。


「この調子で引き付けるのはいいのだけど、厳しいわね」

「前よりも動きがよくなっている」


 勇子(ユウコ)とミュウは眉根を寄せながらつぶやいた。


 敵勢力の注目を集めることには成功した。だが、乱れ飛ぶビームの閃光は激しい。〔アル・スカイ〕はうまく回避してくれるが、その都度体を砕こうとする衝撃にどこまで耐えられるかわからない。


 バッと〔アル・スカイ〕はメイン・スラスターを大げさに噴射する。大きくはためくマント、力強い残光がその宙域に焼き付く。


 その瞬間、(サクラ)は急制動をかけて、〔アル・スカイ〕の上を通過する数機の〔アルファ・タイプ〕を見送った。内蔵が口から裏返って出てきそうになった。


 機体は『ファルファーラ』の南極側へとよって、母艦を中心に展開する〔アルファ・タイプ〕の下を取った。


「…………」


 (サクラ)は敵の動きを観察しながら、降下軌道に機体を運ぶ。


〔アルファ・タイプ〕部隊は発生した残光に一瞬気を取られて、〔アル・スカイ〕を見失ったようだった。彼らが有視界で対処しているのか、はたまた光に反応しているのか定かではないが。


「これなら——」


 ミュウはうろたえる〔アルファ・タイプ〕の一機に狙いを定めると、トリガーを引いた。耳鳴りが頭の奥底まで響く。


〔アル・スカイ〕のバリアス・ショットガンから一条の光が迸る。


 狙った敵機に命中。不意を突かれて被弾したことも気づいていない様子だ。


 撃墜した光芒が膨れ上がると、それを背にして他の敵機が〔アル・スカイ〕へと接近する。その機敏で直角の動きは、ミュウの狙いを混乱させる。


「障害物がなければ、ああも動けるものか」


 ミュウは舌打ちして、射撃のタイミングを見送った。〔アル・スカイ〕のセンサは十分に敵の影を捉えている。しかし、そのカーソルの動きはミュウの動体視力を上回る動きだった。〔アル・スカイ〕の射撃管制でも命中する確率は低い。


 (サクラ)は足元のモニタに広がる暗闇を見て、ぐっと喉を鳴らす。落下の恐怖は拭いきれない。宙に浮いていた感覚から一転して、足元の支えを失った感覚へと変わる。


(サクラ)、予定よりも早く引き寄せられてる。できる限り修正するけど、気を付けて」


 勇子(ユウコ)が機体のステータスと『ファルファーラ』の暗部を見比べながら、肝が冷える。彼女もまた経験したことのない落下の恐怖に焦りがこみ上げていた。


『ノア』で育った二人にはバスケットボールほどの大きさにしか見えなかった『ファルファーラ』の表面。それが今、自分たち、〔アル・スカイ〕よりも巨大で壮大な物体として立ちはだかる。しかもそれが自分たちにぶつかってくるような錯覚、重力に捕食された恐怖は宇宙育ちには厳しいものがあった。


〔アル・スカイ〕が高度を下げていくのを見てか、追撃に出ている〔アルファ・タイプ〕部隊は頭上を抑えるようにして接近を図る。母艦も追随して、離脱の準備をしているようにも見える。


「敵機、直上! 来る!」


 勇子(ユウコ)の警告とともに、三機の〔アルファ・タイプ〕が岩石型で飛来してくる。『ファルファーラ』の引力を利用して高速で迫ってくる。


 (サクラ)とミュウの呼吸が重なり、〔アル・スカイ〕は『ファルファーラ』を背にして加速をかける。暗闇を別つようにテールノズルの残光が流れ、飛来する敵機にバリアス・ショットガン二丁を連射。


 ビームを回避して、高速で背中へとすり抜ける敵機。一瞬だった。ビームの閃光を受けた巨岩が目の前に迫ったかと思うと、気付かぬ合間に背中を取られた。


「なんて、操縦をするの」


 勇子(ユウコ)はスクリーンに呼び出したリア・カメラの映像に呻いた。〔アルファ・タイプ〕は腕だけを展開して、まるで鳥が上昇気流を掴むように一気に舞い上がる動きをしている。


 まだ『ファルファーラ』の大気層には入っていないにもかかわらず、その動きが有機的で機械らしくない。


〔アルファ・タイプ〕三機はくるりと機体を反転させると、今度は三方に散りながら射撃武器を構えた。それに合わせて頭上を抑える敵部隊も距離を詰めつつ、射撃体勢に入った。


 完全に囲まれた。


勇子(ユウコ)様、ボードを展開します!」

「そんな————っ!」


 (サクラ)勇子(ユウコ)の狼狽を無視して、〔アル・スカイ〕を一気に降下させる。


 それは彼女の恐怖が限界を超えた瞬間であった。命綱のない状況、自分を支えるものは何一つない。唯一〔アル・スカイ〕の背部にある大気圏突入ユニットだけが頼みだ。


 敵の一斉射撃が降り注いで〔アル・スカイ〕はジグザグに飛びながら回避する。


 頭が左右に揺さぶられ、内臓が上下に跳躍を繰り返す。


 ビームの雨をかいくぐりつつ、〔アル・スカイ〕はバリアス・ショットガンを脚部に懸架させる。それから背部の二つのボードを手にすると接続した。


「敵はまだ追ってくるぞ。あやつらも降下するのではないのか?」

「何の装備もなしに、単機でって—――—。ユニット接続完了。タイミングを修正」


 勇子(ユウコ)は疑念の声を区切って、表示されたステータスを読み上げた。滑空コースを算出しつつ、機体の速度がマッハ20に迫ろうとしていた。


 大気圏突入ユニットは順調に起動して、降下準備を進める。だが、後方から迫る敵の攻撃に対抗する手段はなく、南半球よりに機体が誘導される。


「————っ。翼、展開」


 (サクラ)は敵のビーム光が目の前に飛んでいくのを目にしながら、機体をとにかく元のコースへとなるべく寄せていく。


 その上で〔アル・スカイ〕がパドルをするサーファーのようにして、ボードにうつぶせになる。


 ボードの側面にある拡張ユニットが左右に展開し、ビームセイルを張った。大気を受ける翼の役割と盾としての役割を担う装置だ。大気の中では滑空するためのグライダー機能がついている。〔アル・スカイ〕を保護する目的と飛行能力を増幅させる。


  機体を隠すほどどの大気圏突入ユニットはそのまま底面で数秒間隔で逆噴射をかけつつ角度を調整していく。


 そのさなか、(サクラ)たちの耳に警報が飛び込んでくる。


 後方から迫る〔アルファ・タイプ〕が編隊を組んで、角度調整をする〔アル・スカイ〕を狙っている。『ファルファーラ』の空を足元にしながら、ビームの直線が〔アル・スカイ〕の背中に目がけて発砲。


 高度が下がる。落ちていく。


「こちらも応戦できぬのか?」

「こんな時に武器何て、使えません。機体表面温度、上昇を確認!」


 機体温度は一〇〇〇度を超えて、さらに上昇を続ける。


 ミュウの憤りに対して、勇子(ユウコ)は自分の足元に集中した。


 機体が激震する。大気の壁と接触しだしている証拠だ。


「角度、問題なしっ。堪えて——」


 勇子(ユウコ)は祈る様に、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。激しさを増す操縦席の揺れはそのまま自分を殺す力を宿していたから、少女の心ではすぐにも握りつぶされてしまいそうだった。


「母様……」


 ミュウもまたその衝撃の中で祈り、敵影を見据えて集中するしかなかった。


 敵の攻撃は(サクラ)が機体を左右に揺らして、回避している。だが、角度の調整もあっていつまでも木の葉のように揺れている場合ではない。


「敵の母艦がこんな位置にまで————。追撃するつもりですね」


 (サクラ)は二次スクリーンに映るリア・カメラの映像に眉をひそめる。


〔アルファ・タイプ〕編隊の少し上から追随している敵の母艦は味方との呼吸を計る様に降下している。推進装置や揚力を生み出す翼といった空力を無視した結晶のまま、しかもエアロシェルといった大気圏突入装置らしいものもなしに降り立とうとする。


「いいえ……」


 否定の言葉を口にする(サクラ)


 敵の射撃を一つかわして、機体に逆噴射をかけて減速させつつ後ろの様子を気にした。その都度、勇子(ユウコ)とミュウの緊張する感触が頬を撫でた気がした。


「敵部隊、後退。母艦が収容を始めてるわ」

「離れるのかの?」


 ミュウと勇子(ユウコ)も敵の動きを察知して、疑義を抱く。


 執拗に追っていた〔アルファ・タイプ〕の編隊が大きく減速、ゆっくりと母艦の後方へ回る。そこでは花弁のように開いたハッチに次々と機体が収容されている。


 そうしている合間にも、〔アル・スカイ〕の周りではチリチリとボードの底面装甲がはがれていく。耐熱装甲の一部が上昇する機体温度を調整するために剥離しているのだ。側面に展開するビームセイルにもビームの薄い膜が張られて、蝶のような妖艶な輝きを放つ。


 赤く燃え上がる大気圏突入ユニットの上で、〔アル・スカイ〕は縮こまって角度の維持に努める。圧縮された空気がちりちりと燃え上がって、モニタの横を掠めていく。


 操縦席では激震が駆け回る。身体を押しつぶす重圧に三人は息も絶え絶えで、目の前の計器類が示す数字を霞んだ視界で確認するしかなかった。無理もない。すでにこの時、三人の体に五Gの負荷がかかっていた。


 三重のショックアブソーバーをもってしても、『ファルファーラ』の持つ強大な力の前では微々たる効力しか発揮できないのだ。


 瞬間、〔アル・スカイ〕にブラックアウトが起きた。全センサが衛星からの補助を受けられず、外部情報が入ってこない。


「————っ」


 勇子(ユウコ)はレッドアウト寸前の視界の中で、その事実を認めた。機体は自動でバランスを取ってくれているが、現在地が狂って降下軌道どおりなのかわからない。


 モニタのグラフィックも荒くなり、周囲の景色が黒色と赤色の入り混じった気色の悪い様相をしている。まるで地獄の業火を思わせる光景が三人の目に飛び込んできた。


〔アル・スカイ〕のブラックアウトは数秒ほどだった。システムが復旧してモニタの画像も鮮明になる。空力ブレーキで減速し、機体表面温度も下がっていく。


 機体は木の葉のように揺れて、蛇行気味に滑空する。


 高速で流れる景色は暗闇の色を濃くしていく。『ファルファーラ』の影の部分へと進行している証拠だ。自転を利用して、そこから大気圏突入ユニットの滑空でぐんぐん飛距離を伸ばして太陽のある部分へと抜けようとする。


 しかし、頭がくらくらする彼女たちを殴りつけるように警報が鳴った。


 いち早く、(サクラ)が反応して操縦桿を握る手に力を込める。そして、拡大表示されたスクリーンに心臓が跳ね上がった。


「敵母艦がもうこんなところに————っ」


〔アル・スカイ〕の真後ろ。


 巨大な敵戦艦の尖った衝角が高速で迫ってくる。赤く熱せられた切っ先は熱の壁を越えて、灼熱の刃となして襲い掛かる。


 咄嗟にフットペダルを踏み込んだ。


〔アル・スカイ〕が機体を傾けて、ユニットごと大気の中を転がる。しかし、回避には間に合わない。


 刹那、衝角を紙一重でかわすも、ユニットの底面と艦体が激突する。


「な、なぁあああああ!!!!」


 まるでトラックにはねられた紙飛行機のように、〔アル・スカイ〕が空へと放り出される。ユニットが微塵に砕かれて爆散。その爆風にあおられて、急速落下。


 無茶苦茶に視界が混ぜられて、(サクラ)たちの意識が一瞬にして吹っ飛んだ。


 その一方で未確認勢力は落下する〔アル・スカイ〕への追撃を開始する。〔アルファ・タイプ〕が順次排出されて、落下していく巨人を捕捉した。

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