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69話 雷鳴の剣

 ――ゴゴゴゴゴ……!!


 大地を切り裂くような激しい揺れが、街全体を絶え間なく襲っていた。


 崩れるアスファルトを蹴り、俺――風宮は疾風のような速度で一気に間合いを詰めていく。


 ――バチッ……!!


 抜き放った刀身に、青白い鮮烈な雷光が走った。


 やがて雷光は刀身全体をまばゆく包み込み、周囲へ鋭い火花を散らしながら激しく唸りを上げる。


 俺は邪神体を、鋭い眼光で真っ直ぐに見据えた。


「行くぞ」


 邪神体が地響きのような低いうなり声を上げた。


 その身の丈ほどもある巨大な金棒を頭上へゆっくりと持ち上げ、全身に力を込めて振り下ろしてくる!


――ガァァン……!!


 俺は雷を深く纏った刀身で、巨体から放たれた金棒を真正面から受け止めた。


 空気を爆砕するほどの激しい衝撃波が、周囲へ一気に広がっていく。


 邪神体はなおも力任せに押し込もうと、さらに両腕へ力を込めてくる。


 だが、俺は一歩たりとも退かなかった。


「これ以上、お前の好き勝手に被害を出させると思うな」


 刀身へ、さらに濃密で高圧な雷が集束していく。


――バチバチバチッ!!


 激しい電流が金棒の金属を伝い、邪神体の両腕へ一気に駆け抜けた。


 邪神体が凄まじい痺れに悶え、苦々しい咆哮を上げる。


 そのわずかな隙を見逃さない。


 俺は瞬時に身体の力を抜き、横へ流れるように回避した。


 直後、邪神体は荒々しく金棒を横薙ぎに振り回す。


――ブォンッ……!!


 豪快な音とともに、恐ろしい風圧が目の前を吹き抜けた。


 俺は極限まで身を低くしてそれをかわし、すれ違いざまに刀を一閃する。


――ザシュッ……!!


 邪神体の強靭な右脚に、浅い傷を刻み込んだ。


 しかし、邪神体は怯むことなく再び金棒を構え直し、力強く右脚を踏み込んできた。


――ドゴォォン……!!


 凄まじい大振動が、再び街を襲う。


 アスファルトの道路がまるで波のようにうねり、周囲の建物が悲鳴を上げて大きく軋んだ。


 俺は崩れ落ちる道路の瓦礫へ軽やかに飛び移りながら、邪神体の挙動を冷徹に観察し続ける。


「……なるほど、そういうことか」


 何度も攻撃を繰り返す邪神体。


 その動きを見ているうちに、俺は一つの法則を見抜いた。


 地震を引き起こす直前――邪神体は必ず右脚を強く踏み込んでいる。


 俺は静かに目を細めた。


「地震の起点は……あの右脚か」


 邪神体は勝利を確信したように、再び巨大な金棒を高く頭上へ掲げた。


 街全体が不気味に震え始める。


 だが、それよりも早く――俺は刀を深く低い位置へ構え直した。


「なら、右脚を断ち切るだけのこと」


 邪神体は咆哮を上げながら、巨大な金棒を容赦なく振り下ろしてくる。


 再び街を跡形もなく崩壊させようと、地面へ叩きつけようとする。


 俺は静かに息を吐き出した。


「その攻撃は、もう見切っている」


 邪神体が勢いよく金棒を叩き落としてくる、その一瞬――。


――ガァァン!!


 雷光を纏った一刃が、再び金棒を正面から受け止めた。


 激しい衝撃音が、街中へ高らかに轟き渡る。


「簡単な話だ。地震を起こす前に、止めてしまえばいい」


 俺は持てる力のすべてを雷へ変えるように、刀身へ限界まで雷を集束させた。


――バチバチバチッ!!


 高圧の雷撃が金棒を一気に駆け抜け、邪神体の両腕を黒く焼き焦がしていく。


 邪神体が苦痛に満ちた絶叫を上げた。


 その一瞬――俺は刃を滑らせるように金棒の軌道を弾き、邪神体の胸元へ深く踏み込んだ。


 邪神体は強引に体勢を立て直そうと、右脚を踏み込もうとする。


――ドゴォン……!!


 踏み込みの衝撃で足元の地面が揺れる。


 俺はその揺れを利用するように、高く宙へ跳び上がった。


「これで終わりだ」


 雷を纏った一閃が、美しく円を描いて閃く。


――ザンッ……!!


 鋭い刃が邪神体の右脚を深く斬り裂いた。


 次の瞬間――邪神体の全身へ無数の光の亀裂が走る。


――ガァァァァァァァッ……!!


 凄まじい断末魔が響き渡る。


 そして、その身体は漆黒の粒子へと変わり、静かに崩れ去った。


***


 俺は静かに刀を鞘へ納めた。


 その直後、余震による揺れが襲ってくる。


 だが、それもやがて収まり、現場には静寂が戻ってきた。


 そこへ、慌ただしく隊員たちが駆け寄ってくる。


「風宮隊長! 一般市民の避難誘導、すべて完了いたしました!」

「ご苦労だった」


 その時、胸元の通信機から光莉の緊迫した声が響いた。


『風宮さん! 街中の邪神体反応の消失を確認しました!』

「了解した……ところで光莉、あれから一時間経ったか?」

『はい。一時間が過ぎましたが、未だに橙真くんからの連絡はありません』


 俺は山間部の方角へ静かに視線を向ける。


 漆黒の煙が今もなお、遠くの空へ高く立ち昇っていた。


「そうか。俺は、このまま山間部の現場へ直接向かう。光莉は引き続き日向からの連絡を待っていてくれ」

『了解しました!』


 通信を終え、俺は周囲の隊員へ言葉を残す。


「お前たち、この場の後始末は任せたぞ」

「えっ、隊長!? それって――」


 隊員たちの声を背に、俺は山間部へ向かって疾風のように駆け出した。


(……待っていろよ、日向)

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