69話 雷鳴の剣
――ゴゴゴゴゴ……!!
大地を激しく切り裂く絶え間のない揺れが、街全体を休むことなく襲い続けていた。
崩れるアスファルトを蹴り、俺は疾風の如き速度で間合いを詰めて邪神体との距離を一気に短縮していく。
――バチッ……!!
抜き放った刀の刃の上に、青白い鮮烈な閃光が激しく走った。
やがてその雷光は刀身全体を眩く包み込み、周囲へ鋭い火花を散らしながら激しく鳴動する。
俺は邪神体を、鋭い眼光で真っ直ぐに見据えた。
「行くぞ」
邪神体は地響きのような低いうなり声を上げた。
その身の丈ほどもある巨大な金棒を頭上へゆっくりと持ち上げ、全身の筋肉を膨張させて力任せに叩き落としてくる!
――ガァァン……!!
俺は雷を深く纏った刀身で、巨体から放たれた金棒を真正面から受け止めた。
空気を爆砕するほどの激しい衝撃波が周囲へ一気に広がっていく。
邪神体はなおも力任せに押し込もうと両腕にさらに力を込めてくるが、俺の足元は一歩たりとも退かない。
「これ以上、お前の好き勝手に被害を出させると思うか」
刀身へさらに濃密で高圧な雷が集束していく。
――バチバチバチッ!!
激しい電流は金棒の金属を伝い、邪神体の太い両腕へと一気に駆け抜けた。
邪神体が凄まじい痺れに悶え、苦々しい咆哮を上げる。
そのわずかな隙を見逃さず、俺は瞬時に身体の力を抜いて横へ流れるように鋭く回避した。
直後、邪神体は狂暴な横薙ぎに金棒を振り回す。
――ブォンッ……!!
豪快な音とともに恐ろしい風圧が目の前を激しく吹き抜けていった。
俺は極限まで身を低くしてそれを軽やかにかわし、すれ違いざまに一閃の刀を振るう。
――ザシュッ……!!
邪神体の強靭な右脚へ、鋭く浅い傷を刻み込んだ。
***
しかし邪神体は怯むことなく、再び金棒を重く構え直し、力強く右足を踏み込んできた。
――ドゴォォン……!!
凄まじい大振動が再び街を激しく襲う。
アスファルトの道路がまるで波のようにうねり、周囲の建物が悲鳴を上げて大きく軋む。
俺は崩れ落ちる道路の瓦礫へ軽やかに飛び移りながら、邪神体の挙動を冷徹に観察し続けていた。
「……なるほど」
邪神体は地震を引き起こす際、必ず右足を深く強く踏み込んでいた。
俺は静かに目を細め、敵の弱点を見極める。
「能力の起点は……あの右足か」
邪神体は勝利を確信したように、再び巨大な金棒を高く頭上へ掲げた。
街全体が不気味に震え始める――それよりも早く、風宮は刀を深く低い位置に構え直す。
「なら、脚を断ち切るだけだ」
邪神体は咆哮を上げながら、巨大な金棒を容赦なく振り下ろしてくる。
再び街を跡形もなく崩壊させようと、地面へ叩きつけようとする。
俺は静かに息を吐き出した。
「もう見切った」
***
邪神体が勢いよく金棒を叩き落としてくる、その一瞬。
――ガァァン!!
雷光を纏った一刃が、再び金棒を正面から完璧に受け止めた。
激しい衝撃音が街中へと高らかに轟き渡る。
「簡単な話だ。地震を起こさせる前に、止めてしまえばいい」
刀身に限界以上の雷が集束し、爆発的な電流を解き放つ!
――バチバチバチッ!!
高圧の雷撃が金棒を一気に駆け抜け、邪神体の両腕を黒く焼き焦がしていく。
邪神体が苦痛に満ちた絶叫を上げたその一瞬、風宮は刃を滑らせるように金棒の軌道を弾き、邪神体の胸元へ深く踏み込んだ。
邪神体は強引に体勢を立て直そうと、力任せに右足を深く踏み込もうとする。
――ドゴォン……!!
踏み込みの衝撃で足元の地面が揺れる。
俺はその揺れによる浮力を巧みに利用するように、高く宙へ跳び上がった。
「これで終わりだ」
雷を纏った一閃が、美しく円を描いて閃く。
――ザンッ……!!
鋭い刃が邪神体の右足を深く切り裂いた。
次の瞬間、邪神体の全身へ無数の光の亀裂が走る。
――ガァァァァァァァッ……!!
凄まじい断末魔の叫びが響き渡り、身体は漆黒の粒子へと変わって静かに崩れ去っていった。
***
俺は静かに刀を鞘へと納めた。
その直後、余震の激しい揺れが襲うが数秒後にはそれも収まり、現場に静寂が戻ってきた。
そこへ慌ただしく隊員たちが駆け寄ってくる。
「風宮隊長! 一般市民の避難誘導、すべて完了いたしました!」
「ご苦労だった」
その時、胸元の通信機から光莉の緊迫した声が響いた。
『風宮さん! 街中の邪神体反応の消失を確認しました!』
「了解した……ところで光莉、あれから一時間ほど経過したか?」
『はい、一時間が過ぎましたが未だに橙真くんからの連絡はありません』
風宮は山間部の方角へ静かに視線を向けた。
漆黒の煙が今もなお、遠くの空へ高く立ち昇っている。
「そうか。俺がそのまま山間部の現場へ直接向かう。光莉は引き続き日向からの連絡を待っていてくれ」
『了解しました!』
通信を終え、風宮は周囲の隊員へ言葉を残す。
「お前たち、後始末は任せたぞ」
「えっ、隊長!? それって一体――」
俺は言葉を終えるより早く、山間部へ向かって疾風のように駆け出していた。
(……待っていろよ、日向)




