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68話 3箇所到着

「はあ……はあ……っ」


 荒い呼吸を何度も繰り返しながら、俺――橙真は必死に山道を駆け続けていた。


 そのとき、足元に張り出した太い木の根に気づかず、足を取られる。


「おわ……っ!?」


 俺は咄嗟に受け身を取りながら、傾斜の急な山道を勢いよく転がっていった。


 そして――。


 ドガッ!!


「ぐっ……!」


 巨大な岩へ身体を打ちつけ、ようやく回転が止まる。


 手をついて痛む身体を起こし、立ち上がった瞬間――目の前に広がる凄惨な光景に、俺は言葉を失った。


 辺り一面に転がっているのは、異常な熱で真っ赤に焼けた無数の巨岩。


 大地の亀裂からは、溶岩がどろどろと湧き出している。


 肌を焼くような熱気が、重く周囲を包み込んでいた。


 次々と炎に包まれ、倒れていく木々。


 空へ向かって黒煙が勢いよく立ち昇る様子は、まるで噴火が起きたかのようだった。


 俺は傷だらけの拳を、強く握り締める。


「はあ……はあ……ここだな……っ」


 ――ゴゴゴゴゴ!!


 大地を揺るがすような不気味な振動が、足元から伝わってくる。


 灼けた岩石の影から、巨大な禍々しい影がゆっくりと姿を現した。


 全身から猛烈な熱気を放つ、赤黒い肌。


 その手には、巨大な金棒が握られている。


 炎の邪神体。


 その姿を認識した瞬間、邪神体の不気味な視線と真っ直ぐ目が合った。


 次の瞬間――邪神体は足元に転がる赤く焼けた大岩を片手で豪快に持ち上げ、空中へ放り投げた。


 そして、金棒を力任せに振り抜く!


 ――ガァンッ!!


 甲高い打撃音とともに、砕け散った大岩が勢いよく宙へ舞い上がった。


 直後、燃えさかる岩石の雨が、流星群のように容赦なく降り注いでくる。


 俺はすかさず、周囲に炎のドームを展開した。


 ズドン! ズドン!


 激しい衝撃がドームと地面を揺らし、弾け散った岩石が飛び散って溶岩を撒き散らす。


 やがて、岩石の雨が止む。


 俺は炎のドームを解除した。


 凄まじい溶岩の熱風が、俺の頬を熱くかすめていく。


 ゆっくり息を吸い込み、乱れる呼吸と感情を一度落ち着かせる。


 そして――目の前の邪神体へ、毅然と向き直った。


***


 総合公園へ駆けつけた俺――蒼太と碧羽は、指定された現場へ到着した。


「……花江さんに指定された場所って、ここで間違いないよな?」

「うん、ここで合っていると思うけれど……」


 二人は思わず足を止め、愕然としていた。


 まだ八月だというのに、公園全体には厚い雪が深く積もり、一面真っ白に染まっていたのだ。


 吹き荒れる猛吹雪が視界を奪い、遊具も木々もすべて氷と雪の下に埋もれている。


 碧羽は警戒しながら、周囲を見渡した。


「雪を自由に操るか、発生させる邪神体がいるってことかな……」

「ああ、そうだろうな……気を引き締めていこうぜ」


 そのとき――激しい吹雪の奥で、巨大な影がゆっくりとうごめいた。


 やがて雪煙の向こうから姿を現したのは、凍てつく青い肌を持った氷の邪神体。


 その肩には、凶悪な巨大金棒が担がれている。


 邪神体が片手を天へかざした。


 次の瞬間、その一帯だけに集中して凄まじい大雪が降り注ぎ始める。


「なっ……!」


 構える暇もない。


 一瞬にして、二人の目の前に数メートルにも及ぶ雪壁がそびえ立った。


 邪神体は、その雪壁へ向かって金棒を大きく振りかぶる。


 ――ドォォンッ!!


 豪快に叩き割られた雪壁が崩壊した。


 大量の雪が一気に雪崩となって、二人へ向かって一直線に押し寄せてくる。


「碧羽っ!!」

「うんっ!!」


 二人は即座に動いた。


 俺は迫る雪の塊を一瞬で凍らせ、足場へと変える。


 その上を蹴って高く跳び上がる。


 一方、碧羽は風を纏い、雪崩の上空へと躍り出た。


 猛吹雪の中――二人は、それぞれの力を構えた。


***


 一方、俺――風宮が街中へ到着した直後のことだった。


 ――ゴゴゴゴゴ……!!


 足元が激しく鳴動し、激しい揺れが街を襲った。


 道路には深々とした地割れが走り、周囲の建物の壁面には無数の亀裂が入っていく。


 なぎ倒された電柱。


 崩れ落ちた瓦礫の山。


 そして、悲鳴を上げながら避難してくる一般市民たち。


 俺は鋭く周囲の被害状況を見渡した。


「……これ以上、被害を拡大させるわけにはいかないな」


 通信機を手に取る。


「今回は地震を引き起こす邪神体か。避難班は、直ちに一般人の避難誘導ラインを展開しろ! 俺があいつを食い止め、撃破に集中する!」

『風宮隊長、了解しました! 直ちに避難誘導を開始します!』


 無線の応答を確認し、俺は前方を見据える。


 地割れの中心に立つ地の邪神体。


 不気味な黒い肌。


 その手には、巨大な金棒が握られている。


 次の瞬間――邪神体は金棒を天高く振り上げ、全身の力を込めて地面へ叩きつけた。


 ――ドォォォン!!!


 先ほど以上の凄まじい衝撃波が、街を駆け抜ける。


 地面の亀裂が一気に広がり、道路が爆発するように激しく隆起した。


 建物が大きな音を立てて揺れ、瓦礫が容赦なく崩れ落ちていく。


 俺は腰の刀へ手を伸ばした。


「この場にいる一般人の避難誘導、後は任せた」

「了解いたしました」


 俺は雷を纏い、走り出した。


 そして――瓦礫を蹴って空中へ高く跳躍する。


 腰の刀を、一気に抜き放った。


「……お前の相手は、俺がしよう」


***


 山間部、総合公園、街中。


 三つの戦場。


 三体の邪神体。


 それぞれの場所で、平和を守るための戦いが幕を開けた――。

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