表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/72

35話 初任務

 風宮さんは重々しい足取りで、地下駐車場へ向かって歩き出した。


「ついて来い」

「「「はい」」」


 俺、蒼太、碧羽の3人は、風宮さんの背中を追う。

 薄暗い地下駐車場には、黒塗りの頑丈な政府車両が静かに停まっていた。

 風宮さんが運転席へと乗り込む。

 俺たち3人も素早く後部座席へと乗り込み、政府車両は滑らかに防災対策課を出発した。

 しばらく走ると、車内に取り付けられた無線スピーカーから花江さんの澄んだ声が流れてきた。


『現場は市外にある廃ビルです。周辺住民の避難はすでに完了しています。邪神体の反応は建物の最上階にあります。風宮さん、現場での指揮をお願いします』

「了解した」

『周辺に新たな邪神体の反応は確認されていない。目の前の任務だけに集中しろ』


 カチリと通信が切れる。

 走行音だけが響く車内は、ピンと張り詰めた静寂に包まれた。

 風宮さんは前を見据えたまま、重厚な声で口を開く。


「……今回の戦いの主力はお前たち3人だ。俺はお前たちだけで危険だと判断した時だけ動く。それ以外は自分たちで考え、判断し、戦え」


 俺たち3人は顔を見合わせ、力強く頷いた。


「「「はい!」」」


***


 約10分後。

 政府車両は不気味に静まり返る廃ビルの前に到着した。

 俺たち4人は車を降り、建物の中へと足を踏み入れる。

 内部は薄暗く、壁や天井の至る所に巨大なクモの巣がべったりと張り巡らされていた。

 埃っぽい階段を慎重に上り、最上階へとたどり着く。

 そこは床一面が分厚いクモの巣で覆われた、異様な空間だった。

 風宮さんが後ろから静かに告げる。


「足元に気を付けて動け」


 その直後のことだった。


 バチバチッ――!


 青白い雷光がクモの巣の糸を激しく駆け巡る。

 天井の暗がりから、巨大な漆黒の影がゆっくりと降りてきた。

 雷を纏ったクモ型の邪神体だ。

 8本の太い脚には、バチバチと鋭い雷がまとわりついている。

 碧羽が思わず息をのんだ。


「……すごく大きい」


 俺は邪神体の動きから一瞬たりとも目を離さない。

 蒼太はグッと両拳を握りしめた。

 風宮さんが静かに一歩下がる。


「……戦闘を始めろ!」


***


 その一言を合図に、激しい戦いの火蓋が切られた。

 まず、蒼太が真っ先に前線へ飛び出した。

 邪神体は巨大な前脚を勢いよく振り下ろす!


「!」


 蒼太は地面を転がるように横へ回転して回避した。

 続けて2本目の脚が猛烈な速度で振り下ろされるが、蒼太は粘りつくクモの巣を蹴って駆け回りながら間一髪で避ける。


「蒼太!」


 俺は即座に大声で指示を出した。


「このまま回避続けてくれ!」

「了解!」


 碧羽は弓を構え、風の矢を素早くつがえて放った。

 1射目は邪神体の太い脚へ命中。

 2射目は硬い腹部へ見事に突き刺さる。

 邪神体も負けじと、口から粘着性のある糸を大量に吐き出してきた。

 白い糸の束が一直線に飛んでくる。


「碧羽、避けろ!」


 碧羽は軽やかに空中へ飛び跳ね、糸をかわした。

 邪神体は雷を纏った脚を振り回し、怒涛の攻撃を仕掛けてくる。

 蒼太は必死に回避を続けた。

 無駄な攻撃は一切しない。

 風宮さんから教わったころを思い出していたのだ。


(すべて受け止めない、回避できる攻撃は回避する)


 蒼太は眼前の邪神体の動きを冷徹に見つめ続ける。

 俺もまた、離れた位置から戦況を冷静に観察していた。


「あいつ、糸を吐き出した直後、ほんの一瞬だけ停止する隙があるな。そこを利用すれば確実に仕留められる……! 碧羽、あいつの体勢を崩してくれ!」

「了解」


***


 構えた弓の周りに、激しい風が渦を巻き始めた。

 解き放たれた風の矢は、美しい軌道を描きながら邪神体の脚の関節へと正確に命中した。

 邪神体の巨体が大きく揺らぎ、体勢が崩れる。

 蒼太がすかさず何本もの鋭い氷柱を生成して解き放った。

 しかし、邪神体は驚異的な反応速度で氷柱をすれすれで回避する。

 俺はすかさず大声で声を張った。


「まだ焦らなくていい! あいつは大きな攻撃の直後に必ず隙ができる!」


 邪神体が狂ったように再び周囲へ雷を撒き散らした。

 蒼太は泥臭く床を転がりながら回避する。

 床一面のクモの巣に青白い雷が走り抜ける。

 碧羽は弓を引き絞り、真っ直ぐに邪神体を見据えた。


「ここで決めるよ!」


 矢に鋭い風が集まる。

 さらにそこへ、眩い雷の力を融合させていく。

 雷を纏った強力な風の矢が放たれた。


「いっけぇぇぇーー!」


 唸りを上げて飛んで行った矢は、邪神体の脚の付け根へ深く突き刺さった。

 暴れ狂う雷と風の衝撃が、邪神体の大きな体を完全に無防備にさせる。


「蒼太、今だ! 決めろ!」


 俺の叫びが響く。

 蒼太が正面から一直線に駆け出した。

 両手を力強く前に突き出す。

 空間から巨大な氷柱が瞬時に生成された。


「これで、終わりだぁぁぁっ!」


 極大の氷柱が、雷型邪神体の胴体を真正面から豪快に貫いた。

 邪神体は激しい断末魔の叫びを上げる。

 巨大な身体が力を失い、クモの巣の上へと激しく崩れ落ちた。

 蒼太は肩で大きく息を吐き出す。


「ふぅ……倒せたぜ!」


 碧羽も静かに弓を下ろした。


「……無事に倒せてよかった」


***


 だが――まさにその瞬間だった。


 バチバチバチバチッ!!


 倒れたはずの邪神体の体内から、これまで以上の大量の雷が溢れ出し始めた。

 俺は驚愕して目を見開く。


「しまった……まだ終わってない!」


 暴走した雷は、足下に広がる巨大なクモの巣全体へと一瞬で伝播していく。

 後方にいた風宮さんが鋭く叫んだ。


「3人とも、今すぐにそこから離れろ!」


 直後、激しい轟音とともに、最上階の全域を凶悪な雷光が駆け巡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ