15話 あの日の帰り道
土曜日。
午後1時過ぎ。
休日の学校は平日とは違い静かだった。
校庭では陸上部の練習が終わったばかりなのか、数人の生徒が帰り支度をしている。
正門の前には蒼太と碧羽の姿があった。
2人とも学校指定のジャージ姿だ。
蒼太はスポーツバッグを肩に掛けながら大きく息を吐く。
「腹減った……」
碧羽が少し呆れたように笑う。
「部活終わってからずっとそれしか言ってないよね」
「だって本当に腹減ったんだよ」
その時。
「こんにちは!」
咲が駆け寄ってきた。
私服姿の咲を見て、碧羽が少し目を丸くする。
「咲、私服新鮮だね」
「そうですか?」
「似合ってるよ」
咲は少し照れたように笑った。
その直後。
「待たせた?」
橙真が左耳のイヤホンを外しながら正門へやってくる。
私服姿の橙真を見て、咲は軽く頭を下げる。
「こんにちは」
橙真は咲を見て少しだけ目を細めた。
「確かに、いいんじゃないか」
「あ……ありがとうございます」
少しだけ照れる咲。
蒼太はそんな様子を見ながら言った。
「じゃあ行くか」
4人は学校を後にした。
土曜日の街は穏やかだった。
部活帰りの蒼太と碧羽。
私服姿の橙真と咲。
4人はゆっくり歩いている。
しばらくして咲が口を開いた。
「それで……どこに向かって歩いてるんですか」
質問に答えるように橙真が話し始めた。
「俺達が初めて戦った場所
少し遠いけどな」
蒼太が笑う。
「まあ確かに少し遠いな
歩きながら俺達の初めての戦いの話について話すわ
碧羽も少し懐かしそうに笑う。
「もう3年前くらいかな」
橙真が頷く。
「中学2年の時だな」
咲は少し驚く。
「そんな前なんですね」
「俺と蒼太は同じクラスだったかな
碧羽は別のクラスだったな」
橙真言った。
碧羽も頷いた。
「同じ学年だったけど、ほとんど話したことなかったかな」
蒼太が笑う。
「今じゃ信じられないけどな」
咲は静かに3人の話を聞いていた。
「その日も普通の日だったんですか?」
橙真は少し空を見上げる。
「普通だったかな」
「本当に、いつもの帰り道だった」
蒼太も頷く。
「俺なんて帰りにコンビニ寄ることしか考えてなかったし」
「お前は今も変わんないだろ」
「否定はーーーできないな」
4人が少し笑う。
風が吹いた。
橙真が前を見る。
「あの日も、こんな感じだった」
その言葉とともに、景色がゆっくりと変わっていく。
3年前。
春。
放課後。
中学校のチャイムが校内に響いていた。
夕日が教室を赤く染める。
中学2年の橙真は鞄を持って立ち上がる。
後ろから声がした。
「帰るぞ、橙真」
蒼太だった。
今より少し幼い顔。
まだ何も知らない頃の2人。
橙真が振り返る。
「今日は部活ないのか?」
「休み」
「珍しいな」
「たまにはそういう日もあるだろ」
「それもそうか」
2人は笑いながら教室を出た。
廊下。
階段。
そして下駄箱。
靴を履きながら蒼太が言う。
「コンビニ寄ってくか?」
「またかよ」
「新しい新作アイス出たらしいぞ」
「それが目的か」
「そうそう」
蒼太が笑う。
「当たり前だろ」
校門を出る。
夕方の風。
怪物も。
能力も。
これから起こることも。
まだ何も知らない。
2人はいつもの帰り道を歩き始めた。




