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13話 いつもの道

 夕日が沈みかけた工事現場。

 巨大な穴の前で、4人はしばらく立ち尽くしていた。

 さっきまで吹き荒れていた風はもうない。

 怪物の姿も消えていた。

 蒼太が大きく息を吐く。


「終わったな……」


 咲は大穴を見下ろした。


「すごい穴ですね……」


 碧羽も静かに穴を見つめる。


「今回はかなり大きいね」


 遠くからサイレンの音が聞こえてきた。

 橙真が顔を上げる。


「もう来るな」


 蒼太も耳を澄ませる。


「防災対策課か」


 碧羽が頷いた。


「たぶん陥没事故として処理されるよね」


 蒼太が笑う。


「だろうなー。でもとりあえず、防災対策課が来る前に行きますか」

「そうですね」


 咲も頷いた。

 4人は工事現場を後にした。


 住宅街へ戻る頃には空は赤く染まっていた。

 さっきまでの緊張が少しずつ解けていく。

 蒼太が両手を頭の後ろで組む。


「腹減ったー……」


 咲が思わず笑う。


「さっきまで戦ってたのにですか?」

「むしろ戦ったから腹減るんだよ」


 碧羽も少し笑う。


「それは分かるかも」


 蒼太が橙真を見る。


「橙真も腹減っただろ?」

「まあな」

「今日はかなり動いたしなー」


 少し沈黙が流れる。

 咲がゆっくり口を開いた。


「でも……正直、すごく怖かったです」


 蒼太が振り向く。


「そりゃそうだろよ」

「私、途中で足が動かなくなっちゃって……」


 咲は少し俯く。


「ごめんなさい」


 橙真が前を向いたまま言う。


「あれを見て、怖いと思わないほうが怖いと思うぞ」


 咲が顔を上げる。

 碧羽も頷いた。


「私も最初は怖かったよ」


 蒼太が笑う。


「俺たちなんて最初の頃はかなりボロボロだったし」


 咲が驚く。


「橙真先輩たちがですか?」

「そりゃ最初からうまくいくわけないだろ」


 蒼太が笑う。

 橙真も少しだけ口元を緩めた。


「まあ、いろいろあったな」


 4人の間に自然と笑みが広がった。


 最初の分かれ道。

 碧羽が立ち止まる。


「じゃあ、また明日」

「お疲れさま」

「お疲れ!」


 碧羽は小さく手を振り、帰っていった。

 さらに少し歩く。

 今度は蒼太が立ち止まる。


「俺もここだな」

「今日もお疲れ」

「お疲れさまでした」

「また明日!」


 蒼太は笑いながら手を振った。

 その背中が少しずつ遠ざかっていく。

 静かな住宅街。

 残ったのは橙真と咲だった。

 しばらく並んで歩く。

 咲の家が見えてきた。

 咲は立ち止まる。


「今日はありがとうございました」


 橙真が少し笑う。


「無事でよかったよ」

「はい」

「また明日な」

「はい。また明日です」


 咲は家へ入っていった。

 橙真はその背中を見送り、静かな夜道を歩き出した。


 夜。

 自分の部屋。

 着替えを済ませた咲は、そのままベッドへ倒れ込んだ。

 今日の出来事が頭に浮かぶ。

 怪物。

 工事現場。

 蒼太の氷。

 碧羽の風。

 橙真の炎。

 そして。

 落ちてくる怪物。

 腕を引っ張ってくれた橙真先輩。

 咲は天井を見つめる。


「橙真先輩たち、最初からあんなに強かったのかな……」


 少し考える。


「きっと3人にも初めての戦いがあったはずだよね」


 怖かったこと。

 失敗したこと。

 うまくいかなかったこと。

 そんなこともあったのかもしれない。

 咲は小さく笑った。


「今度聞いてみようかな」


 窓の外では静かな夜風が吹いていた。

今回で第2章が完結します。

物語はまたまだ続けるつもりですのでこれからもよろしくお願いします

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