10話 揺れる街
夕日が街を赤く染めていた。
4人は校門を出て、いつもの帰り道を歩いていた。
蒼太が大きく伸びをする。
「腹減ったー」
碧羽が少し呆れたように言う。
「部活終わりだからでしょ」
「いや、部活なくても腹減る」
橙真が笑う。
「いつもじゃん」
咲も小さく笑った。
「元気ですね」
「これが蒼太だからな」
「どういう意味だよ」
4人の間に笑い声が広がる。
住宅街へ向かう道には、買い物帰りの人たちの姿があった。
犬の散歩をしている人。
自転車に乗る学生。
遊び終わった子どもたち。
穏やかな夕方だった。
蒼太が空を見上げる。
「こういう日がずっと続けばいいんだけどな」
「珍しくまともなこと言ったね」
碧羽が笑う。
「失礼だな」
橙真も笑った。
「でも分かる」
咲も小さく頷く。
4人はそのまま住宅街へ入っていく。
その時。
蒼太が足を止めた。
「ん?」
道路の中央。
アスファルトに細い亀裂が入っていた。
碧羽が覗き込む。
「割れてる?」
橙真も眉をひそめる。
「こんなのあったか?」
近くを歩いていた人も立ち止まる。
「地震かな?」
そんな声が聞こえた。
ゴゴ……
小さな揺れが足元を伝う。
咲が驚く。
「揺れました……?」
蒼太も周囲を見る。
「地震か?」
揺れはすぐに収まった。
しかし。
ピシッ。
亀裂が少しだけ広がる。
「おい……」
蒼太の声が低くなる。
ピシッ。
ピシッ。
道路を走る亀裂はゆっくりと伸びていく。
周囲の人々もざわつき始めた。
「危なくない?」
「離れた方が……」
「また地震?」
ゴゴゴゴゴ……
今度は大きく地面が揺れた。
電柱が揺れる。
自転車が倒れる。
子どもが泣き出す。
亀裂は一気に広がっていった。
橙真が叫ぶ。
「下がって!」
ドォォォン!!
大きな音とともに道路が崩れ落ちた。
巨大な穴。
舞い上がる土煙。
人々の悲鳴が響く。
「逃げて!」
「危ない!」
「地面が!」
その時。
ゴォッ――
強い風が吹き上がった。
木々が揺れる。
砂埃が舞う。
4人の制服が激しくはためいた。
蒼太が目を細める。
「なんだ、この風……」
土煙の向こう。
何かが動いた。
黒い腕。
重い音。
ゆっくりと巨大な影が姿を現す。
赤い目が夕暮れの中で光る。
咲が息を呑んだ。
蒼太の顔が強張る。
「……またかよ」
碧羽も言葉を失う。
橙真は一歩前へ出た。
怪物は4人を見下ろしている。
その体の周囲を風が渦巻いていた。
次の瞬間。
怪物がゆっくりと身を低くする。
蒼太が眉をひそめる。
「おい……?」
ドンッ!!
地面が砕けた。
爆発したように風が吹き荒れる。
巨大な体が信じられないほどの勢いで宙へ跳び上がった。
咲が目を見開く。
「え……!」
黒い影が夕暮れの空を横切る。
4人はただ、その姿を見上げることしかできなかった。




