55話 桜 一
春休みになった。
白百合学園に入学して、早いものでもう一年だ。
私にとって、この一年はとても濃かったと思う。
それまでは、ずっとボッチだった私だったけど、春子と出会ってから、それまでになかった彩が加えられたって感じがする。
卓弥と裕太に出会えたのも、幸運だった。
少なくとも、彼らのお陰で退屈はしなかったし、楽しい時間も持てたから……。
今日も、裕太がお花見という新しいイベントを立ち上げた。
「今、桜が満開だから、公園でお花見をしようよ」
このメールで、四人で集まってお花見をすることになった。
「俺の従兄の親父がレストランのオーナーなんだけど、お花見弁当を今だけ売ってるんだ。売上に貢献してこいって親父に言われてさ。弁当代、俺がおごるから、レストランの近くの公園にしてくんない?」
そう言いうわけで、豪華なお弁当を食べながら、お花見をすることになった。
裕太に案内されて、レストランでお花見弁当を受け取り、近くの公園へ。
この公園は規模が大きく、お花見用に桜の木がたくさん植えられていて、その横には自由に遊べるように大きな広場も作られている。
すでに何組もの花見客が、桜の下にシートを敷いて、重箱や私たちと同じお花見弁当を広げて楽しんでいた。
私たちは空いている場所を見つけ、シートを敷き、春らしい彩の豪華なお弁当を広げた。
桜の木の下から見上げれば、澄んだ青空に薄ピンクの桜の花が映えて、とても美しい。
「日本の春は、世界に誇れるよね」
春子が眩しそうに、大きな目を細めて言う。
その春子の頭の上にはおばあさん、肩にはおじいさん、ひざの上には子どもが乗っている。
みんな春子と一緒に、空と桜を見上げている。
この公園はお花見客で賑っていて、家族連れやカップルが、シートを敷いたり、ベンチに座ったり、散歩をしたりと、思い思いに楽しんでいた。
「飯も食ったし、春子、バドミントンしようぜ」
「オッケー!」
裕太が元気よく誘うと、春子もそれに答えた。
裕太が持ってきたバドミントンを手に、広場へと移動する。
去り際に、春子が私にウインクしたのは見なかったことにしよう。
「アイツら、気を利かせたつもりなんだろうな」
卓弥がボソッと呟いた。
あれ? 春子のウインク、見てたの?
うっかり言葉が出そうになったけど、慌てて引っ込めた。
だって、あれは春子の勝手な思い込みだから……。
これまで、私と卓弥が一緒に行動することが多くて、時には二人だけにしかわからない会話をしているから、春子が勝手に誤解してしまった。
はっきりと聞かれたわけではないから、否定はしていないけど、春子の態度から、何を考えているのか、だいたい想像はついていた。
卓弥が何か言いた気に、私の顔をじっと見つめた。




