51話 スキー 二
古風な着物姿の女の子が、春子にぴょんと飛びつき抱きついたのだが、私以外の誰も、そのことをわかっていない。
皆には見えていないのだ。
これが座敷童……?
ネットで読んだり、見たりしたことはあったけど、本物を見たのは初めてだった。
座敷童は、にこにこしながら春子に抱きついたり、背中にしがみついたり、手を握ったりしている。
春子が来ることを、首を長くして待っていたのかと思うほど、ちょこまかと春子にまとわりついているのだが、春子はまったくわかっていない。
二人を見ていて、そのギャップに笑ってしまいそうになるのを、必死でこらえた。
着いて早々、私はすぐ近くにあるスキーグッズレンタルショップに春子と出かけ、一式をそろえてから、スキー板を抱えて雪原へと足を踏み入れた。
春子の両親は、とっくに二人で上級者コースに行ってしまったから、宿に戻るまでに会うことはめったにないらしい。
私と春子は初心者用の平地の広場まで行き、春子が初めての私でもわかるように一から教えてくれたのだが、転んでばかりで、もうたいへん。
あまりのたいへんさに、スキー板を恨めしく見ていたけれど、何度も転びながらも、練習を続けていたら、やっと慣れてきて、ボーゲンでちょっとは滑れるようになった。
「滑れるようになったから、次はリフトに乗ろうか?」
「ええっ? もう?」
「うん。スキーって経験を積めば積むほどうまく滑れるようになるからね。習うより慣れろって言うでしょ? 初心者コースなら、大丈夫よ」
私は、いきなりリフトなんかに乗って大丈夫なのか?と不安になったが、春子の言うことももっともだと思ったので、リフトに乗ることにした。
それに、もう一つ、気になることがあったから。
春子と私が民宿を出たときから、ずっとおかっぱ頭の女の子が、春子に憑いてきていたのだ。
普通、座敷童って家に憑く霊であって、外には出ないのだと思っていたのだが、春子の居心地の良さから離れたくなかったのだろう。
ショップにいるときも、私に教えてくれているときも、片時も春子から離れることはなかった。
春子と一緒に遊びたかっただろうに、春子がつきっきりで私の世話をしているから、女の子は、さっきからずっと不満顔なのだ。
春子と女の子が一緒に滑れば、機嫌が直るかもしれない。
案の定、二人乗りリフトに乗った春子の膝の上に、ちょこんと座っている女の子は、すごく嬉しそうにしていた。
リフトから降りて滑り降りるときは、春子のスキー板に足を乗せて春子の前に立ち、にこにこしながら風を受ける爽快感を楽しんいるようだった。
だけど、私が転んで春子が止まると、ふてくされたような顔をする。
どうやら、私は女の子にとって、邪魔ものでしかないみたい。




