44話 中古車 二
従兄の車の後続車は、何度もクラクションを鳴らし続けていたのだが、次はクラクションだけでなく、ヘッドライトを点滅させてパッシングまでやり始めた。
「な、何なんだよ……?」
従兄もだんだんと不安になって来たところで信号が赤になり、車を止めることになってしまった。
後続車も、すぐ後ろに止まった。
だが、止まっただけではなく、後続車から身体の大きな男がドアを開けて出てきて、こちらに向かって来た。
すごく怒った顔をして、こちらを睨んでいる。
裕太は、やばい男に、いちゃもんをつけられるのかとドキドキしていたら、男は運転席まで来て大声で怒鳴った。
「お前、何やってんだ。女をずっと引きずっているぞ。俺が必死になって教えようとしているのに、無視しやがって!」
「え、ええー? 人を引きずっているって?」
これには従兄も裕太も驚いた。
運転していて、人と接触したことも、何かにぶつかった覚えもない。
「早く出て来て、お前も見ろ!」
慌てて従兄も裕太も外に出て、車の後ろを見たのだが……
そこには何もなかった。
「えっ? 俺は確かに引きずられている女の姿を見たんだが……」
これには男も驚いたようで、目を何度もこすって何もない道路を見ていた。
「まっ、何もなくて良かったな。じゃっ、俺はもう行くわ」
男は逃げるように車を走らせ、あっという間に見えなくなった。
後に残された従兄と裕太はぞっとしたものを感じていたが、このまま車を放置しておくわけにもいかず、再び車に乗りこんで運転を再開した。
「兄貴、やっぱり、この車、やばいんじゃないの?」
「……ああ……、そ、そうみたいだな……」
事故車なんて気にしないと豪語していた従兄だったけど、さすがに青くなっていた。
結局、従兄はその車を買った店に、買い取ってもらうことにした。
買った金額よりも、かなり安い金額になったが、それは仕方がないと諦めた。
「それにしても、幽霊が出るとは思っていませんでしたよ」
「お買い上げになる前に、事故車であることと、問題があるかもしれないことはお伝えしたはずなんですが……。はあ、今回は女の幽霊が出たのですね」
「ええ、まあ……」
「この車をお買い上げになっても、皆さんすぐに返しに来るんです。お客様で、もう五人目なんです」
裕太の話が終わった。
「俺、すっげー怖かったから、みんなに聞いて欲しかったんだよ」
「私も聞いてて怖かったぁ……」
春子も少し青くなっている。
一瞬、霊でもついているのかと思って見てみたが、幸いなことに、今日の春子の肩には霊は乗っていなかった。
私たちは、この後、少し雑談をしてから別れた。
皆は駅から電車に乗るが、私は一人で歩いて帰る。
ふと、嫌な気を感じて道路を見たら、ピカピカに磨かれた高級車が通り過ぎた。
その車を目で追うと、後ろの窓ガラスに血まみれの女の霊がしがみついている……。
ああ、あの車を買った人は、もうすぐ六人目になるのね。
私は車が見えなくなった道路を、ぼーっと眺めていた。
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巷によくある中古車の都市伝説をアレンジしたものです。それにしても、運転中に幽霊が窓から中を覗いていたら、怖いですよね。




