43話 中古車 一
文化祭が終わり、学校生活は平常に戻った。
放課後、遅くまで教室に残っていた私たち四人も、いつも通りの時間に帰るようになったのだが、裕太が、「話しがあるから、放課後にお茶でも行かないか?」と誘ってきた。
春子も卓弥も、放課後に残って準備をしながらいろいろ話していたことが楽しかったようで、喜んでOKした。
もちろん私も……。
駅チカのファミレスに入って、私たちはドリンクを注文した。
「話って言うのは……」
裕太がもったいぶって話し始めた。
「俺の大学一年生の従兄の話なんだけどな。免許取得して、車を買ったんだけど……」
裕太の従兄は大学一年生で、免許を取得した後、すぐに車を買うことにしたのだが、車に慣れるまでは中古車にしようと考えた。
できるだけ安く買いたくて中古車センターで物色していたら、若者に人気の高級車を見つけた。
ピカピカに磨かれたその車が、破格の安値で売られていたのである。
理由を聞くと、事故車だと言う。
死亡事故を起こした車だから、非常に安く売られていたわけだが、従兄は高級車にこの値段で乗れるのならと、気にせずに購入した。
その車に裕太も乗せてもらって出かけたのだが、そのとき、恐ろしい体験をしたのである。
その日は従兄の用事に付き合ったのだが、思いの外時間がかかり、帰る頃には夜中になっていた。
深夜の道路をドライブ中、裕太は従兄の隣に座っていたのだが、走行中であるにも関わらず、ドアをコンコンとたたく音が聞こえた。
「なあ、兄貴、なんか、変な音がしない? ドアがたたかれたような……」
「ああ、お前も聞こえたか。実はな、この車を運転していたら、時々コンコンとドアを叩く音がするんだよ」
「ちょっと兄貴、それって怖くない? この車、事故車だろ?」
「まあ、そうなんだが……。音だけだしな。気にしないことにしている……」
「ちょっ、それってどうなの……」
裕太は怖くなって、車を降りたくなってきた。
しかし今は深夜だから降りることもできず、我慢してこのまま家まで送ってもらうことにした。
コンコンとたたく音はそれからも何度か続き、裕太は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
家に着くまでは、まだまだ時間がかかる。
早く着かないかなと思っていたら、後ろの車にブッブッーとクラクションを鳴らされた。
深夜の走行だったので、道路を走る車の数は少ない。
従兄の車には初心者マークがついているのだから、邪魔なら追い越せば良いのに、後続車はピタッと後ろについたまま、追い越そうとはしなかった。
従兄は怖くなってスピードを上げたが、後続車もスピードを上げて、何度もクラクションを鳴らしてピタッとくっついてくる。
「いったい何なんだ? いちゃもんでもつける気か?」
裕太が不安を口にすると、
「いや、前にもこんなことがあったんだ。しばらくしたら、いなくなったけど……。だけど、今日は長いな……」
従兄は不安気に呟いた。




