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霊能少女 麗奈 ―霊と対面する少女―  作者: 矢間カオル


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38話 仏像 二

一メートルほどの高さの金色の厨子の扉は左右に開かれていて、参拝者は正面から中の仏像を拝むことができるようになっている。


厨子の中で、蓮の花をかたどった蓮華座の上に安置された大日如来様は、宝冠を被り、背後には円形の光背が施されている。


木像だけど、金色なのは、金箔を箔押しして作られているからで、ところどころの金色が剝がれている姿は、長い年月の重みを感じさせる。


姿形を見ただけで、その重厚さに思わずほうっとため息が出たけれど、真剣にお顔も拝み見た。


大日如来様の顔はふっくらとした柔らかな輪郭だけど、静かな表情の中に慈悲深さと絶対的な威厳をたたえている。


宇宙そのものを象徴する存在だと聞いたことがあるけど、この姿がそうなのだと、妙に納得できた。


「麗奈、私、初めて見たけど、なんか、すごいね。三十三年ぶりだと思うから、よけいにすごいと感じるのかな。麗奈、次も絶対に見に来ようね」

春子は吸い込まれるような目で仏像を見ている。


「うん。その時は四十八歳になってるけど、一緒に来れたらいいね」


「うわあ、その時、私たち、おばさんになってるんだね」

春子はちょっと切なそうに笑った。




三十三年ぶりの御開帳を参拝しに来たのは、私と春子だけでなく、日曜日だと言うこともあって、いろんな人たちがいた。


参拝者の人たちが、仏像を見ながら小さな声で話しているのが聞こえてくる。


「私は初めて来たけど、次の御開帳の年は、もう七十七歳になってるのよね。私は来れると思うけど、そのとき、あなたは八十四歳。一緒に来れるかしら?」


「おいおい、俺は八十四歳になっても、お前と一緒に来るつもりだぞ」


「そう思ってるのなら、健康に気をつけて長生きしてくださいよ」


この二人は年の離れた夫婦のようだ。




「私は三回目なんだけど、次はもう見れないでしょうね。今回が見納めだわ」


「おばあちゃん、百歳過ぎても元気で来たらいいじゃん」


こちらは祖母と孫。




入り口を見たら、杖を突いた白髪のおばあさんと、娘夫婦らしき家族が入って来た。


娘夫婦は、おばあさんを見守るように、歩調を合わせてゆっくりと歩いて、仏像の前まで来た。


「お父さんがもう少し長生きしてくれたら、一緒に見に来れたのにね。前回来た時に、一緒に見ようって約束してたのよ」


「お母さん、お父さんもきっと一緒に見てるんじゃないかな。約束を守る人だったから、そんな気がする」


「きっとそうですよ」


「そうだといいねえ」




おばあさん、あなたのご主人は一緒に見てますよと、伝えたくなるのをぐっと我慢した。


おばあさんの隣に寄り添うようにして、温和な笑みを浮かべているおじいさんが立っている。


二人は、ゆったりとした視線を大日如来様に向けて、その場の空気を愛おしむように、じっとたたずんでいた。




本堂に入って来た時は見えなかったおじいさんの姿が、今だけ見えた。


慈悲深い大日如来様が、おばあさんの願いを叶えてくれたのかも……なんて思った。



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