37話 仏像 一
この話は、高校に入学してしばらくたった頃、うららかな春の日差しが温かくなってきた日のお話。
春子と私は仲良くなって、春の校外学習のお菓子まで一緒に買いに行くほどの気心の知れた仲になった。
昼休みの時間、お弁当を一緒に食べていると、春子がふと思い出したように話し始めた。
「ねえ、麗奈、うちのクラスに浄念寺君っているじゃない? あの子、浄念寺って言うお寺の息子らしいんだけど……」
おや、春子は浄念寺卓弥のことが気になっているのかと思って、話の続きを聞いていたら……
「その浄念寺でね。今、御開帳やってるんだって」
どうやら春子には、卓弥よりも御開帳の方が重要らしい。
「御開帳って?」
「浄念寺には秘仏って言われる仏像があってね。普段はずっと厨子の中にしまってるんだけど、三十三年に一度、春の三十三日間だけ、厨子の扉を開いて参拝客に見せてくれるんだって。すっごく古い仏像らしいわよ」
「へえ、春子、よく知ってるね」
「うん。うちの両親がね。今年も見に行くって言ってたから。前回見に行ったときは子どもだったのよ、なんて言ってたわ。でね、私も見に行きたいなって思って……。麗奈、一緒に見に行こうよ」
春子は好奇心が旺盛な女の子のようで、何かと私を誘ってくれる。
ずっとボッチだった私には、一つ一つが新鮮で、人混みが嫌だと思うよりも、春子と一緒に行きたいという思いの方が強くなっていた。
私と春子は日曜日の午前中、一緒に浄念寺の秘仏を見に行くことにした。
駅で待ち合わせ、スマホのマップを見ながら浄念寺にたどり着いた。
五段ほどの階段を上がり、山門を抜けると、広い境内には、桜とモミジとイチョウなどが植えられていて、桜の花は散った後だった。
もっと早くに来たら、きれいな桜を見れただろうなぁなんて、春子と話しながら本堂の中に入った。
階段を上がった先には畳敷きの広間があり、その奥に、一段高くなった煌びやかな仏様の世界を表す内陣がある。
そこには立派な仏像が三体安置されていて、真ん中は大日如来様 向かって右は弘法大師様、向かって左は不動明王様と書かれている。
今まで真剣にお寺の仏像の名前なんて考えたことがなかったので、新鮮なんだけど、なんだか歴史の勉強をしているような気分にもなる。
三十三年ぶりに公開された秘仏は大日如来様。
立派な大日如来様の仏像が少し左にずらされていて、真ん中に安置されている金色の厨子の観音開きの扉が開かれて、中の大日如来様の仏像を拝むことができるようになっていた。




