34話 洋館 三
翌朝、俺たちは、じいちゃんと一緒に洋館を目指して散歩に出かけた。
山の中の別荘であるが、別荘に泊まる客用に道は整備されていて、森林の中を気軽に散策できるようになっている。
朝の爽やかな気分を味わいながら散歩をするのが、この別荘に泊まる客の定番コースなのだそうだ。
森の中の歩道を、裕太と春子は周りをキョロキョロ見ながら歩いているが、麗奈は何か考え事でもしているようだった。
「わあ、この洋館、素敵!」
散歩をしていたら、突如目の前に現れた洋館を見て、春子が感動の声を上げた。
「俺も久しぶりに来たけど、ますます古くなって、凄味が増してるって感じ」
裕太も洋館を見上げて感嘆の声を上げた。
レンガ造りの二階建ての洋館は、苔がはびこり、年代を感じさせる建物だった。
「この洋館は、祖父が別荘を建てる前からここに建てられていて、別荘を建てる前に買い取ろうとしたんだけど、洋館の所有者が外国にいて、連絡を取ろうとしても繋がらなくて、結局は買えなかったんだ」
裕太が話しながら残念そうな顔をする。
「ふーんそうなんだ。せっかく来たんだから、中に入れたらいいのにね」
春子も一緒に残念そうな顔をした。
「じゃあ、入ってみるか……」
「えっ?入れるの?」
じいちゃんの言葉に、皆が驚いた。
「昔、別荘の除霊をしたときなんだが、わしもこの洋館に興味が湧いてな。ここの裏口を開けることができたんじゃ。今も変わってなかったらできるじゃろう」
じいちゃんは俺たちを裏口まで案内して、持ってきた針金を使ってガチャリとドアを開けた。
「じいちゃん、それって不法侵入じゃね?」
「まあまあ、そう固いことは言わずに……」
じいちゃんは俺の顔を見て、笑いながらそう言った。
さすが肝が据わっていると言うか、年の分だけ厚かましいというか……。
俺は呆れてじいちゃんの顔を見ていたが、春子も裕太も好奇心を抑えられないようで、ワクワクした顔をしている。
だが、麗奈の顔は二人と違って不安気だ。
「麗奈? もしかして怖いのか?」
「うーん、そういうわけじゃないけど……ちょっと春子が心配で……」
春子は霊に憑かれやすいと言うか、霊を引き寄せてしまう体質だ。
海の別荘に行った際も、女の霊に憑かれて、危うく海に引きずり込まれるところだった。
こんな古い洋館には何がいるかわからないから、不安になるのも無理はないのかもしれない。
俺たち五人が裏口から中に入ると、そこはリビングだった。
埃を被ってはいるものの、ソファやテーブルなどの家具も調度品も整然と置かれている。
「前に来たときと、少しも変っておらんな。だが……」
じいちゃんが訝し気な顔をした。
「前回は感じなかった邪気を感じる」
実は俺も微かに邪気を感じた。
ここには何かがいる……。
じいちゃんと俺が顔を見合わせている間に、裕太と春子は好奇心を抑えられずに、動き回って探検を始めていた。
麗奈が心配そうに、二人の後を追っている。
「キャー!」
隣の部屋から春子の悲鳴が聞こえた。




