33話 洋館 二
「わしが若い頃の話だが、一ツ橋に、この別荘の悪霊祓いを頼まれたのじゃよ」
裕太の祖父とじいちゃんは、除霊の仕事で知り合ったのだが、とてもウマが合い、仕事抜きでも仲の良い友人になった。
裕太の祖父は、ホテルや旅館を建てる前に神主に地鎮祭を依頼していたのだが、やばい霊が取りついている場合は、事前にじいちゃんに除霊をしてもらっていた。
この別荘を建てる際は、建築中に不審な事故が何度も起きたので、じいちゃんに依頼をしたらしい
じいちゃんが霊視をした結果、低級霊が数体うろうろとはびこって、悪さをしていたことがわかった。
そこでじいちゃんは除霊を成功させ、それからは順調に工事が進んだ。
この別荘が完成したのも、じいちゃんのお陰だと、裕太の祖父は喜んで、じいちゃんを完成したばかりの別荘に招待した。
じいちゃんは美味い酒と美味しい料理で、一晩中、裕太の祖父と一緒に飲み明かしたのである。
じいちゃんの話が終わった後、それまで機嫌良く話していたじいちゃんの顔つきが変わった。
「ところで管理人殿、最近、何か異変は起きておらんかの?」
管理人がビクッとして視線を落とした。
「あの……、やはりわかりますか……」
「ほんに微かだが、邪悪な気を感じての」
その言葉に俺は驚いた。だって、俺には気を感じることができなかったから……。
麗奈を見ると、麗奈もハッと目を見開き、じいちゃんを見ている。
きっと麗奈も気付かなかったのだろう。
管理人さんがオズオズと話し出した。
「実は……、ここ数カ月のことなのですが……、宿泊されたお客様が、頭が痛いと仰ったり、体調不良になることがよくあって……。皆様、たいへんお忙しい方たちばかりなので、体調管理ができていないからだと自嘲されていらっしゃいましたが……」
「ええ? 俺そんなの聞いてないぞ」
裕太が声を荒げた。
「申し訳ございません。社長には報告いたしましたが、原因がわからなかったもので、公にはしていなかったのです」
「ちぇっ、親父も知っていたのかよ。ったく……」
「あの……、この 別荘に何か出るってことですか?」
春子が不安げにじいちゃんに聞いた。
「いや、邪悪な気と言っても微かなもんだ。それに今は、この別荘に霊は現れておらん」
じいちゃんの答えに、春子は少し安心したようだ。
「まあ、何も心配することはない。さあ、美味しい料理をしっかり食べようではないか、わっはっは」
じいちゃんは、それからも上機嫌で酒を飲んでいた。
「ところで管理人殿、あの洋館はまだあるのかい?」
「はい。まだずっとあのままですが……」
「そうか、それなら、明日の朝、散歩がてら皆で見に行くのも良いかもしれんの」




