32話 洋館 一
俺の名前は、浄念寺拓弥。
現在高校一年生で、浄念寺の跡取りだ。
浄念寺は平安時代の頃から、悪霊祓いで有名な寺だったけど、最近では、知る人ぞ知る程度の知名度になっている。
じいちゃんは、その道では、結構名の知れた除霊師だったんだけど、身体を悪くしてからは除霊師を引退し、今は俺の除霊師の師匠になっている。
親父はこの寺の跡取りとして生まれたが、残念なことに霊力がなかった。
だから除霊の仕事を依頼されたら、若い頃は、じいちゃんと一緒に仕事をし、じいちゃんが引退してからは、俺と一緒に仕事をしている。
ただし、息子の俺が言いうのもなんだが、親父の演技力はすごい。
顔も男前だから、法衣と袈裟を着れば、まるで映画俳優が演じる除霊師みたいになる。
とまあ、俺の親父の話は置いといて……
夏休みになると、毎年俺はじいちゃんと一緒に霊山に修行に行く。
厳しい修行なのだが、俺の霊力を高めるためには、欠かせないものなのだ。
修行の日はもうすぐだ。
夜、じいちゃんとプロ野球中継を見ていたら、裕太から電話がかかって来た。
「裕太、何の用?」
「海の別荘では迷惑かけちゃったからさ。お詫びに、今度は山の別荘でもどうかな?と思ってね。一週間後なんだけど……」
「えっ? 一週間後に、今度は山の別荘? わりい、俺、じいちゃんと修行に行くんだわ。だから無理だな」
「えー、残念だな。春子も麗奈も誘ってるのに……」
「でもな。じいちゃんとの約束の方が先だから……」
「卓弥、その話お受けしなさい!」
突然じいちゃんが割って入った。
「えっ、でも、修行の日と重なってるよ」
「一ツ橋家の山の別荘だろう? あそこは霊山に近い。風呂もきれいだし、料理も
美味い。わしも行く」
「えー? 裕太、なんかじいちゃんも行くって言ってるぞ」
「ああ、お前のじいちゃんなら歓迎するよ。俺の祖父もずいぶん世話になったからな」
と言うわけで、俺はじいちゃんと一緒に裕太の別荘に行くことになった。
駅で裕太と麗奈と春子と待ち合わせて、前回同様、最寄りの駅までは電車で行き、その後は、迎えの車に乗って別荘まで行った。
今度の別荘はログハウス調の外観だが、中は最新式の設備が整っていて高級ホテル並みの造りになっている。
大物俳優や政治家も利用するらしいから、当然と言えば当然なのだが……。
到着した夜は、皆で美味しい料理に舌鼓を打った。
じいちゃんも上機嫌で、料理と一緒にご当地の美味い酒を飲んでいる。
「あー、うまいうまい。久しぶりにこの酒を飲んだわ。わっはっは……」
高校生に混じって年寄りが一人浮くと思っていたのだが、意外と受け入れられている。
「おじいさんはここに来たことがあるんですね。お仕事で来たんですか?」
麗奈が尋ねたので、じいちゃんは昔話を始めた。




