26話 こっくりさん 三
卓弥と相談して、妹の狐憑き現象を解くには、何が一番良い方法なのか考えた。
一つは母の愛。
狐になった娘をかまってあげること。
母親は、食事を持って行くときも、それ以外の時間でも、何度も妹の部屋に行き、抱きしめたり、涙を流したりと、私たちが言わなくても、いろいろ愛情表現をしていると聞いた。
だから後は、きっかけだけだと思う。
思い込みが激しいのなら、それを利用しよう。
あの年頃の子どもは、マンガやアニメで、モノノケが憑いた際の除霊がどういうものかを知っている。
たいていは修行僧だとか偉い坊さんが呪文を唱えて最後は「はあっ!」とか言って手をかざせば完了する。
だから、卓弥が大げさに除霊しているぞアピールをすればいいんじゃない? という結論に至った。
翌日、あらかじめ、兄には「除霊師が除霊してくれるから、もう大丈夫だよ」とか言って、妹に軽く暗示をかけておいてもらった。
母、兄、弟が見守る中、卓弥は父に借りた紫の法衣に、山吹色の袈裟を羽織った姿で妹の前に立った。
手には、黒水晶の数珠と錫杖を持っている。
「今から呪文を唱え、狐の霊に里に帰ってもらいます」
重々しく宣言した後、呪文を唱えた。
「オン アミリタ トウゼン ゴウラン ウン ハッタ オン アミリタ トウゼン ゴウラン ウン ハッタ……はあっ!」
卓弥は妹に手をかざした。
「コンッ!」
妹は一声鳴くと、バタリとベッドに背中から倒れた。
皆、息を飲み、妹を見守る。
しばし沈黙が流れた。
「あれ? お母さんどうしたの?」
妹がむくりと起き上がって、母を見た。
「みっちゃん……、良かった、元に戻ったのね」
母親は涙を流して妹を抱きしめた。
兄も泣き、五歳の弟はまだよくわかっていないようだったが、家族につられて泣いている。
私も、この愛情あふれた家族を見て泣けてきた。
「浄念寺、ありがとうな」
「娘のために、どうもありがとうございました」
「いえいえ……」
感謝の言葉に卓弥は照れている。
「このお礼は、後ほどきちんと……」
「いえ、今回は、お礼は要りません。私が独断でやったことなので……。それよりも、それを使って、妹さんを遊びにでも連れて行ってあげてください」
無事に妹が元に戻ったのを確認してから、私たちは帰路についた。
除霊の仕事は、法衣を着た正式な仕事の場合、必ず報酬をもらうことにしているそうだ。
だけど、今回は除霊する霊がいなかったので、除霊とは言わない。
まあ、そんなわけで、ただ働きになったのだけれど、卓弥はとても満足そうな顔をしていた。




