22話 夢 一
話しは少し遡る。
ラーメン屋の店主が浄念寺に正式に除霊の依頼に来たと、卓弥から連絡があったので、私は卓弥に会いに浄念寺に行った。
駅で二駅ほどの場所であるが、浄念寺に行くのは、これで二回目である。
一回目は、春に春子と一緒に来たのだが、あのときは、すでに桜が散っていて、もっと早く来たら良かったと思ったことを覚えている。
浄念寺をネットで調べたら、歴史は古く、平安時代から続いているお寺だと書かれている。
と言っても、実際この目で見たら、古くなったり壊れたところは、修理されたり建て替えられていて、意外と新しくきれいだったりする。
平安時代は除霊で名を馳せた寺だったけど、現代になって霊を信じない人も増えて、除霊の仕事は減っているそうだ。
ここから先は卓弥に聞いた話だけど、卓弥の祖父は除霊の能力が高くて、その道の人々には有名らしい。
だけど、身体を悪くしてからは、除霊のお仕事は引退していて、今は卓弥の修行を受けもっているんだとか。
父親には霊能力がなくて、卓弥のように霊気を感じることもできず、除霊なんてまったくできない。
だから、依頼があれば、卓弥を連れて行き、一緒に除霊をしている。
子どもが除霊をすると言えば、客の信用を失い不安がるから、父親は、さも自分が除霊をしているように演技をしているそうだ。
その演技力は、実際にラーメン屋で見たけど、まるで映画俳優バリの演技力だったと思う。
この日の浄念寺訪問の目的は、ラーメン屋の元店主の願いを卓弥に伝えることだったので、目的を終えた私は帰ることにした。
「駅まで送るよ」
卓弥がそう言うので、断るのもなんだから、一緒に並んで歩いた。
しばらく歩いていると、少し離れたところを歩いている白髪混じりの男に遭遇し、私の目は、その男にくぎ付けになった。
私の視線をくぎ付けにしたのは、彼の背中にへばりついている髪の長い若い女の霊だった。
女は憎しみのこもった目で男を見ていたが、憎しみだけでなく、何故か憐みの情も混じっているように見えた。
この男と女がどういう関係なのかはわからない。
歩いていた男は急に立ち止まり、焦点の合わない目をして、ぼーっと目の前の建物を見ていた。
近づいたときに、よくよく男の顔を見たら、すごく疲れきっているように見えた。
女の霊に憑かれているからと言うよりも、本当に心身ともに憔悴しきっているという感じである。
顔色も悪いし、女の霊のこともあるしで、私は声を掛けた。
「あの……、顔色が悪いですが、大丈夫ですか?」
「えっ?」
私が話しかけたことで、男はやっと正気に戻ったようで、目の前の建物を見て、ギャッと小さな叫び声をあげた。




