21話 ラーメン屋 四
当日、私も除霊式を見せてもらうことにした。
元店主と対面したのは私だから、私だって責任を感じている。
住職と卓弥は、法衣の上に袈裟を羽織った正装で、菩提樹の数珠と錫杖を持って店内に現れた。
住職は紫色の法衣、卓弥は茶色の法衣で、ともに山吹色の袈裟を羽織っている。
「霊視をします」
住職が目を凝らして店内を見た。
住職には霊視能力はないが、演技力はすごい。
しばらくカウンター内をじっと見た後、私が卓弥を通じて頼んでいた言葉を店主に告げた。
「元店主の意思が伝わってきました。もっと研究して美味いラーメンを作って欲しい。まだこの店に、元店主の味を求めてやって来る客がいる。それに見合った味を出してくれないと、苦労が浮かばれないと申しています」
「ああ、だから、客に味を聞いていたんですね」
「元店主は、客を通じて、自分の意思をあなたに伝えようとしていたのです」
「私はまだまだ修行が足りなかったというわけだ……。わかりました。これからは、もっと修業して、美味いラーメンを作ってみせます」
元店主はずっとカウンターの中にいて、二人の会話を聞いていた。
なんだか、満足げな顔をしている。
「では、今から除霊式を始めます。この除霊は成仏を目的とした光明真言、仏の光で成仏を促します」
「よろしくお願いします」
店主は深々と頭を下げた。
カウンターの中にいる元店主も、同じように頭を下げている。
成仏できることを喜んでいるみたい……。
住職と卓弥の除霊式が始まった。
二人の声がぴったりとそろって、店内に響き渡る。
「オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラマニ ハンドマジンバラ ハラバリタヤ ウン オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラマニ ハンドマジンバラ ハラバリタヤ ウン……」
前も思ったけど、卓弥の集中力はすごい。
卓弥が放つ力強い波動が、そばにいる私にも伝わってくる。
呪文が繰り返されるうちに、元店主の姿が薄くなり、そしてふわっと天に昇るようにして……、消えた。
「終わりました。元店主は無事に成仏いたしました。」
住職の重々しい言葉を聞いて、店主はほっとしたようである。
「ありがとうございました。次は私の番ですね。行列ができるような美味いラーメンを作ってみせます」
この後、「カッコいい僧侶が二人も来て、除霊式をしたラーメン店」と言う情報がネットで流れて評判になり、客が増えたそうだ。
だが、その人気がいつまで続くかわからない。
店主は、客がたくさん来ている間に、客の好みの味を研究しようと頑張っているらしい。
現在、「お味はどうですか?」と聞いているのは、今の店主である。




