20話 ラーメン屋 三
魂を飛ばした私は、ふわふわと店内を飛んで、元店主に体面する。
「あの……、あなたは交通事故で死んでしまったんですよね。どうして、ずっとここにいるのですか?」
「あんた俺が見えるのかい? だったら教えてやろう。俺はたった一人で頑張って、念願叶ってこの店を持てたんだ。研究に研究を重ねて、俺だけの味を作り出せて、売上も上々。やっと行列ができる店にまでなったんだ。だけど、店はこれからだってときに、交通事故で死んじまってよぉ。カッコ悪いが未練たらたらで、この店から離れることができなかった」
「あの、成仏したいとは思わなかったんですか?」
「成仏? そんなもん、考えている余裕なんてなかったさ。ともかく、俺の頭は店のことでいっぱいでよぉ。それに、成仏のしかたなんて俺にはわからん。嬢ちゃん、あんた、知ってるのか?」
「はい。もし、成仏できるのだったら、成仏を望みますか?」
「そうだな。もう、この店は俺のもんじゃなくなっちまったからな。いつまでも未練を引きずっているわけにもいかんしな」
「わかりました。それでは、最後に、何か伝えておきたいことはありますか? 未練を断ち切るためにも……」
「それじゃあ、ここの店主に言っといてくれ。もっと研究して美味いラーメンを作ってくれって。あんたらみたいに、俺の味を食べたくて来る客もまだいるんだ。それなのに、不味いラーメンを出されたら、俺の苦労が浮かばれん」
「わかりました。そのこともお伝えします」
聞いてくれるかどうかわからないけど……。
私は魂を身体に戻してカウンター席に戻り、卓弥の隣に座った。
「元店主が、成仏したいけど方法がわからないらしいわ。」
こっそりと卓弥に耳打ちした。
「なるほど、そうか……」
卓弥は、何かひらめいたようで、店主に視線を移した。
「店主、本当に困っているなら、除霊という方法もありますよ。俺は浄念寺の住職の息子です。除霊専門の寺なんで、正式に依頼してくれれば除霊しますよ」
「そうなのかい? それなら、ぜひやってもらいたいね」
この後、店主は浄念寺を訪れて、卓弥の父親である住職に、正式に依頼した。
拓弥が言うには、父親には霊能力がなくて霊視も除霊もできないのだが、卓弥一人だと、子どもだと思われて信用されない。
だから、除霊式をする際は、父親と卓弥が一緒に赴いて、一見、二人がかりで除霊をしているように見せかけているらしい。




