19話 ラーメン屋 二
「お味はどうですかって……、味、なんか変わった? 俺、久しぶりに来たんだけど、前と違う気がする」
裕太が顔を上げて店主に答えた。
すると店主は、急に泣きそうな顔になった。
「お、お客さんにも……、聞こえたんですか?」
「えっ? 店主が聞いたんじゃないの?」
「私はそんなこと聞いてませんよ。はあ、またか……」
店主はがっくりと肩を落とした。
「よかったら、何があったのか教えてくれませんか?」
卓弥が心配そうに声をかけた。
職業柄、放っておけないみたい。
「実は……」
他に客がいなかったこともあって、店主はこれまでの経緯を話してくれた。
この店主は、ここのラーメン屋の店主になる前は、他店のチェーン店で雇われて、ラーメン店の調理人をしていた。
だけど、いつかは独り立ちしたいと思って、コツコツ貯金をしていた。
どこかに良い物件はないかと探していたところ、このラーメン店を見つけた。
前の店主は交通事故死で、残された遺族は食堂とは畑違いの仕事をしていたため、ラーメン店を続けることができず、売りに出していたのだそうだ。
ちょうど独立して自分のラーメン店を開きたいと思っていたから、これは渡りに舟だった。
暖簾と看板だけを変えれば良かったから、工事費用も安くあがった。
やっと独り立ちできたと喜んで開業したのだが、客がたくさん来てくれたのは初めの方だけで、そのうちに閑古鳥が鳴くようになった。
ついでに、幽霊が出ると噂が流れた。
店主は一人しかいないのに、二人の店主の声がする。
ラーメンを食べたら幽霊に味を聞かれる……など。
店主は困ってしまったが、どうしてよいのかわからないまま、営業を続けているのだそうだ。
「本当に、どうしたもんですかねぇ」
そう話す店主の横には、店主と似た白い調理着に白い前掛けをつけた男が立っている。
店主に何か言いたげな表情をしているのだが、意思の疎通はできないみたい。
ここで魂を飛ばしたら、私の身体が椅子から転げ落ちてしまうかもしれない。
拓弥に支えてもらおうにも、私と卓弥は両端に座っていて頼めない。
もう、皆ラーメンを食べ終わったから、許してもらおう。
「あの、ちょっと席外します」
苦肉の策で、トイレを借りることにした。
私はお手洗いと書かれたドアを開け、中に入って魂を飛ばした。




