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088 最悪の武器とは

 ファンタジーに限らないが、戦闘の要素があるゲームには大抵複数の武器が登場する。


 より強力な武器を手に入れたときのワクワク感、敵に応じて武器を使い分ける戦略性、かっこいい武器を装備したキャラクターを眺める楽しみ。いずれも作品の大きな魅力だ。


 さて、そんな武器のなかで、「最強」ではなく「最良」のものはなんだろう?


 おそらく意見が割れると思う。ある人は攻撃力が高いものを、またある人はどんな敵にも有効で持ち替える必要がないものを、はたまた別の人は長距離攻撃や状態異常で一方的に攻撃できるものを選ぶのではないか。


 では、逆に「最悪の武器」とは?


 こちらも意見は割れるはず。おおむね先に述べた理由の逆となろう。弱くてダメージ通らない、特定の敵にしか効かない、近づく前にやられてしまう、など。


 いずれももっともだ。しかし、私の印象に深く残っている意見がある。昔読んだテーブルトークRPG関連の本に書いてあった、とあるゲームマスターの言葉で、その人は先の質問をされたとき、まったく迷うことなく答えたという。


『強すぎる武器』と。


 なぜ? 武器が強くてなぜいけない? 理由はこう。


 まず、強すぎる武器はプレイヤーから創意工夫の機会を奪い、成長の妨げとなる。

 新米戦士でもなんちゃらソードを一振りするだけでドラゴンを狩れるなら、相手の行動パターンを観察したり弱点を探したりする必要がない。頭空っぽで勝てるうちはいいが、それが通用しなくなったとき詰むというのだ。


 また、パーティの不和を招く危険性も指摘していた。


 鉄の剣でチャンバラやってる中、一人だけライト○ーバー持ってたら無敵だろう。ぶっちゃけ「もう全部あいつ一人でいいんじゃね?」状態となる。で、あなたが他のメンバーだったらどう思うだろうか。


 元の能力に大差はない。同じ武器なら自分の方が強いかもしれない。なのにそいつだけが無双して英雄扱い、自分はモブ。

 なんであいつだけ。俺だってあの剣さえあれば。


(そうだ、今あいつは背を向けていて、無防備じゃないか……)


 これは極端にしても、一人が突出して活躍したら仲間は面白いわけがない。マスターの立場なら、他のプレイヤーがゲームを楽しめないという懸念もあったろう。

 この「強すぎる武器不要論」は、今も私の作風に影響を与えている。文字数の都合で詳述するゆとりはないが、他作品も読んでいただけると嬉しい。


 ちなみに、そのマスターはあまりに強力すぎる剣を笠に着て好き放題のプレイヤーに、こんな措置を取ったという。


 ダンジョンの中枢にある謎の祭壇。それに安物の短剣を乗せると、不思議な光とともにショートソード+2に変化した。

 手斧も乗せてみた。ハンドアックス+2になった。


(なら、俺の剣を乗せたら!)


 そう考えたのだろう。くだんのプレイヤーは、強すぎる剣を祭壇に乗せた……


 察しはついてますよね。そう、剣は+2になった。この祭壇は強さを上げるものではなく、+2という特定の値にするものだったのだ。

 そのプレイヤーがどうしたかは知らない。ふて腐れてゲームを止めてしまったか、仲間と協力して戦うことを覚えたのか。願わくば後者であってほしい。


 ただこの措置は、図らずも武器の本質を付いていたように思えた。武器は、大量生産される消耗品でもあるのだから。


 この祭壇があれば、安価な量産品を好きなだけ+2にできる。軍隊を率いる王にとっては、戦力、コストともまさにチート! 迷宮に封印されたのも無理はない。


 42話と43話でも書いたが、武器はしょせん道具でしかない。それに振り回されるのではなく使いこなすことが、優れた戦士の条件なのだ。

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