066 チェインメイルとプレートメイル
今回は鎧について語ってみたい。
近年の主人公は魔法使いや非戦闘員も多く、そうでなくともスタイリッシュな衣装が主流になっているが、それでも鎧を着ているキャラは少なくない。
この鎧は鉄板を組み合わせたプレートメイル、つまり洋館に飾ってあるような、一般にイメージされる「中世ヨーロッパの鎧」を、漫画的にアレンジしたものが大半を占める。
源流は漫画「聖闘士星矢」か、ゲームの「ファイアーエムブレム」あたりか。初期のドラクエとは違う気がする。兜かぶってないやつが多いし。
話を戻そう。さてご存じの方も多かろうが、中世で使われていた鎧の多くはプレートメイルではなく、鉄の輪を繋げて編んだチェインメイル、鎖かたびらなのだ。
(筆者注・以下『メイル』は省略)
本の挿絵を見ても、中世騎士物語の勇士たちはチェインを着ている。アーサー王やロランといった伝説の英雄、歴史小説ならサトクリフの「運命の騎士」の主人公ランダルもだ。鉄砲の登場により、プレートの全盛期はそこまで長くないのである。
では、ファンタジーでプレートが主流の理由とは? 思いつくまま書いてみよう。
①金属加工技術に長けるドワーフ族の存在により、地球より早い段階でプレートが出現した
②モンスターにはプレートのほうが有効と思われるから。チェインは輪という構造上、斬りつける攻撃に比べると突き刺しにはやや脆い。魔物の多くは角や牙といった刺突系の攻撃をしてくるし、炎や毒液は輪っかの穴を通ってくるので、隙間が大きいチェインは早々にプレートに取って代わられた
③識別しやすいから。チェインの場合は兜の飾りと陣羽織の色、盾の模様くらいでしか見分けがつかない。ファンタジー世界ではなぜか兜の普及率が低いし、火の魔法や息で陣羽織を焼かれたり、盾を捨てることもあるだろうから尚更だ。が、プレートならデザインの変化を出し易い。地球と違って魔法が乱れ飛ぶ戦場では、より見分けのつきやすい格好でないと誰が誰だか分からないので、同士討ちの防止や戦功の明確化のため、見た目が画一的なチェインは不都合だった
④プレートの難点のひとつである重量をクリアできる要素が地球より多い。軽量な魔法金属や身体強化の魔法がある、治癒魔法が存在するため頭や胴体に比べ即死の可能性が低い手足は軽装にでき、全体の重量が軽減できる、などだ
とりあえず作中の理由をテキトーに書いてみた。
メタ的な理由は③に近く、キャラの個性を明確化するためだろう。事実、私も別作品では主人公とその母が日本の当世具足(戦国時代の和風プレート)を愛用しているため、他のキャラにはチェインじゃなくプレートを着せている。
このように、ファンタジー世界では主流の地位から陥落しているチェインだが、演出として意図的に登場させる手はあるので、そう捨てたものでもない。例えば……
①製造に必要な技術レベルが低いため、田舎町など鎧職人がいない地域の描写に使える
②製造過程は単純作業なのでコストもプレートに比べたら安い。一般兵ならチェインで十分だろう
③つまり、キャラの「格」を絵的に分かりやすく見せるのに適している。ザコのモブキャラなら、弱そうで画一的な見た目の方がむしろ好都合なのだ
④砂漠地帯など暑い地域ではプレートは使えない。鉄板そのものが熱を帯びるし、通気性もなく放熱能力が低いからだ。事実、ある騎士の自伝によると、戦う前に熱中症で死んだ騎士は少なくないらしい
てな感じ。
非主流派のチェインだが、書き方によっては出番を作ることだってできるはずだ。たまには意図的に登場させてみるのも一興だろう。まあ、近年はリアル路線の作品も増えているけどね。




