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065 斧はドワーフの専用武器じゃない

 ファンタジーにおける亜人デミヒューマンの双璧はエルフとドワーフだろう。前者は森に住み弓を好み、後者は洞窟に住み斧やハンマーを好む。今回は斧について語ってみたい。


 漫画などでは人間はだいたい剣、主人公はこれに加えて日本刀や銃を持っており、斧使いはあまりいない。これは「斧=ドワーフ」という固定観念があり、キャラクター性を際立たせるためもある。


 こういうのを、演劇では付属物アトリビュートと呼ぶ。

 例えばギリシャ神話の劇なら、三股の矛を持っている俳優がポセイドン役、三国志なら白い羽根の団扇うちわを持っている俳優が諸葛亮役と分かる。そのキャラを象徴する目印だ。つまりドワーフにとっては斧が、エルフは弓、主人公は剣や刀がアトリビュートという訳ですな。


 確かにキャラの個性をはっきりさせることは大切だ。しかし、だからといって同じ武器だけを使わせていてはワンパターン化の恐れもある。たまには、一時的にでも主人公に斧を使わせてみるのも一興ではなかろうか?


 例えばドラクエ。初代の武器は、「たけざお→こんぼう→どうのつるぎ→てつのおの→はがねのつるぎ→ほのおのつるぎ→ロトのつるぎ」という順にパワーアップしてゆく。


 ここで13話で書いたメンテナンスについて考えてみよう。


 たけざおは適当に先端を削るだけ、短くなったらポイだろう。こんぼうはたぶん何もしない。ヘラクレスだって適当に樫の木切って使い捨てにしてたし。

 どうのつるぎは実質的には鈍器、研ぎとかはしてない可能性がある。潰れたら買い換え、溶かして再利用かな。


 つまり勇者が刃の手入れをするのは、てつのおのが最初である可能性が高いのだ。さて、てつのおのとはがねのつるぎ、研ぎの手間がかかるのはどっちだろう?


 はがねのつるぎに決まってる。刃の長さが違う。

 以上をまとめると……


 序盤の貧乏状態では研ぎに出すお金がないので、メンテ費用のかからない鈍器を使う。中盤ちょっと余裕が出てきたら、短い刃渡りだけ自分で研げばいい斧に持ちかえる。そして後半になってようやく、長い刀身を研がなきゃならない剣のメンテを研ぎ師に頼む余裕が出てくる、ということではあるまいか。


 偶然とは思えない。そこまで考えて武器の設定を決めていたはずだ。文字数的には「てつのつるぎ」でもよかったはずなのだから……

 神は細部に宿る。ドラクエが国民的人気作となったのも納得である。


 他にもドラクエ3では魔神の斧が最強武器の一角だったし、破邪の封印では主人公のそれは斧だった。決してドワーフだけのものではないのだ。


 ところで斧には、どうしてもパワーファイター、悪くすると猪武者のイメージがつきまとう。

 確かに筋力に依存するところの大きい武器ではあるし、ドワーフが豪腕の種族なのも事実だが、もちろん強くなるには技術が必要となるので注意したい。猪武者のイメージは、たぶん水滸伝の李逵りきのせいだろうなあ。


 中には冨士宏氏のコミック「ワルキューレの降誕」のドゥンケルのように、パワータイプに見えて実はテクニカルというキャラもいるのだ。彼女は斧槍を頻繁に左右に持ち替え……つまりオーソドックスとサウスポーの構えを使い分けていたし、ワルキューレとの初対決では、攻撃をさばくと同時に石突きで殴る技量を見せた。


 このエッセイを読んでいる中には自作品を執筆している方もおられようが、たまには変わった斧使いを登場させてみるのも一興だろう。あまり奇をてらうのも良くないが、書き方しだいでは作品のスパイスになる可能性もあるだろうから。


 そうそう、日本一有名な斧使い、まさかり担いだ金太郎に言いたいことがある。

 熊にまたがりお馬の稽古っていうけどさ……


 そのまま熊に乗って戦ったほうが強くない?

ワルキューレ「ところでドゥンケル、あなたはPCエンジンの時はずいぶんはっちゃけていたが……」

ドゥンケル「やめろ! 人の黒歴史をほじくり返すな! あとプラティーナとトシュカには言うなよ!?」

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