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054 アンデッドモンスターとお葬式の関係

 形あるものいつか壊れ、命あるものいつか死す。


 当たり前なので普段は忘れがちな、この世の摂理である。さて今回はファンタジー世界の死、とくに弔いの方法を考えてみたい。


 ご存じのように、世界にはさまざまな葬儀の方法がある。

 わが国では火葬がほぼ100%を占めるが、いま問題視されているムスリムの土葬や、鳥に遺体を食べさせることで天にかえすとする鳥葬などだ。文字数の都合で詳しく書けないが、そこはお許し願いたい。


 ファンタジー世界のお葬式は、地球と同じところもあれば異なる点もあろう。故人の眠りが安らかであれ、という想いは変わるまいが、遺体の処理は独特である可能性が考えられるのだ。死者が動き出す不死アンデッドモンスターが存在するためである。


 死者がゾンビなどのアンデッドにならないようにすること、および食屍鬼グールなどの餌食にならないこと。これは故人のためにも、のこされた者のためにも大切なことだ。

 なので、小説などの舞台となることの多い中世ヨーロッパ風の世界における、地球との違いを思いつくまま挙げてみたい。


 ①土葬でなく火葬が主流の可能性がある。アンデッド化しても疫病の原因となる腐乱死体ゾンビよりは骸骨スケルトンの方がマシ(加えて、高温で焼かれることで骨が脆くなれば制圧も容易い)だし、肉や内臓が失われていればグールに喰われることもない。


 そういやエジプトで遺体がミイラにされたのは、復活できるようにとの願いがあったためだ。とするとファンタジー世界の宗教は、肉体が焼失しても復活できるとする教義なのだろうか。功徳を積めば記憶を保持したまま転生できるとか……どっちかというと仏教だなコレ。


 時には、英雄や王の生まれ変わりを自称する者も出てきそう。特に反乱や簒奪さんだつの首謀者が、自分を正当化するための詭弁きべんとしてだ。国王などはそれを防止するため、存命のうちに本人にしか分からない暗号のようなものを遺しておく可能性もある。


 ②遺骨はスケルトンとならぬよう、分散されて葬られたのではなかろうか。中には聖遺物(50話参照)として、アンデッド対策関係なくバラバラにされた人もいただろうけど。また、その埋葬地を巡るのが弔いの儀式になっていてもおかしくない。


 ③遺体が火葬されて小さな骨壺に納められるとしたら、大がかりな墓地は最初から存在しないか、墓標だけで中に遺骨はない(替わりに遺品がある?)かもしれない。ゾンビを使役する魔法使いや屍肉を喰らう魔物にとって、獲物をまとめて確保できる状況を作らないためにもだ。各家庭でお骨を保管してるとかね。


 ④そもそもアンデッドとならぬよう聖職者が入念に遺体を清め、魔法による何らかの処置をしているだろう。確かにこれでは冒険者になる僧侶が少ない(14話参照)のも頷けるというものだ。


 ⑤土葬するならグール等の対策として、棺は地球のそれより頑丈でないとまずかろう。庶民には費用的に難しかったかもしれない。国や地域によっては、土葬は王侯貴族や富裕層のみで、庶民は火葬や鳥葬だった可能性も。


 テキトーに書いてはみたが、仮に火葬が主流の世界とするなら、ダンジョンで遭遇するゾンビは正式な葬儀の手順を経ていない死者ということになる。

 実際、「ドラゴンクエスト2」のロンダルキアの洞窟最下層では腐った死体しか出現しない。犠牲者たちの変わり果てた姿なのだろう。


 なろう小説でも救出依頼を受けるエピソードが時折あるが、帰還しない者の「なれの果て」を思うと、生存が絶望的であっても探索に向かうのは自然な感情だ。殺伐とした世界で過酷な生涯を終えた彼らが、せめて死後くらいは安寧を享受できることを祈るのみである。

【新作のお知らせ】

ハイファンタジー「桜花の剣士と桜樹の剣士」の連載を始めました。現時点では第1章が終わったとこ。私が書いたにしては珍しく鬱展開がない主人公最強系なので、その手のお話が好きな方は気が向いたらどうぞ。

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