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053 騎士道大原則ひとぉーつ!

 51話でも書いたが、私は最近、ネタ探しに「サンライズチャンネル」でアニメをよく観る。


 配信されているのは古き良き名作が多く、それらは当然ながら隔世かくせいの感を覚えることが少なくない。絵柄の流行や声優の顔ぶれもそうだが、作中の演出もだ。

 たとえば「太陽の牙ダグラム」では、やたらと喫煙シーンが出てくる。今では考えられない。戦闘用の巨大ロボットがある超科学文明なのに、新聞記者が持っているのがレコーダーでなく手帳と万年筆というのも、当時ならではの描写といえよう。


 そんな「時代を感じた」作品のひとつが、三十年前のロボットアニメ「覇王大系はおうたいけいリューナイト」だった。


 主人公は、最強の騎士を目指して修行中の少年アデュー。彼は旅の途中、大切なお金を無くしたと泣きじゃくる幼い兄弟を見かけ、「騎士は困っている者を助けねばならない」と、なけなしの路銀を与える。

 ところが、この兄弟は詐欺師であった。まんまと金をせしめた二人は、アデューを嘲笑あざわらって去ってゆく。


 その後なんやかんやあって兄弟はならず者の人質にされてしまい、アデューは抵抗できずフルボッコ。しかし、あわやというところで愛機リューナイト・ゼファーが彼の呼びかけに応えて起動、逆転勝利する。勧善懲悪のお手本、ヒーローものの王道といってよい。


 私は思った。

「今のネット小説の主人公に、アデューと同じことをする者がどれほどいるだろう?」と。人質のためにどこまで身体を張れるかという意味でも、そもそも自分からお金を騙し取った者を助けようとするかという意味でもだ。


 批判覚悟で書かせていただくなら、今のネット小説の読者にウケるのは、人質を見殺しにする主人公だと思う。


「人質がいるからと無抵抗で俺がやられたら、その後でならず者は人質を殺して町を襲うだけだ。なら人質ごとる。それが被害を最小限に抑えるベストの選択だ。悪く思うな」


 このパターンは嫌いじゃない。必要とあらば冷徹になれる主人公、それはそれで魅力的。サンライズ作品だと無敵鋼人むてきこうじんダイターン3の破嵐万丈はらんばんじょうがこのタイプだ。まあ味方も全員覚悟決まってたからねあの人たちは。


 ただ、多くの読者が求めているのは、そもそも最初から助けようとしない展開ではなかろうか。


 アデューのように、自分を騙した詐欺師であろうと助けを求める弱者であれば、命をかけて救おうとする。そんな主人公は、それこそならず者の台詞のように「今時そんなの流行らねえんだよ」で一蹴されてしまう。


「はぁ? 助けて? なに寝言ほざいてんだ。お前ら俺からカネ騙し取ったよな? 人に危害を加えといて助けて? 虫がよすぎるだろ。頭大丈夫? ざまぁwww」


 別にこの展開も否定はしない。悪いことをしたらいざって時に助けてもらえない、って話は寓話にもよくあるものね。要は主人公のキャラクターが作品の雰囲気に合っていれば、情に篤くても非情でもよい。そしてどちらを求める読者が多数派かという話である。


 物語は時代を映す鏡だ。


 現在の日本は、三十年前に比べ閉塞感へいそくかん諦念ていねんに満ちている。ネットの発達も良いことだけではない。早い話、精神的な余裕が、よし建前だけにせよ利他的な献身や自己犠牲を美徳とする考えが希薄きはくになった。偏見かなあ。

 それが主人公の行動に反映されて、と思うのは、むろん短絡的かつ穿うがちすぎだ。が、そんな思いがふと脳裏をよぎったのは否定できない。


 ちなみに本作のロボットは今も人気があり、新作のプラモデルなども発売されている。それを手に取った人たちは、何に魅力を感じたのだろう。


 ゼファーのデザインだろうか。

 それとも、アデューの生きざまだろうか。

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