039 ドワーフの素朴な疑問あれこれ
ファンタジー小説で、エルフや獣人と並んで登場頻度の高い亜人がドワーフだ。一般的には「白雪姫」に登場する七人の小人が有名だろう。身長低めでがっしり体型、ヒゲ面で怪力、そして鍛冶の技術に長けている。また女性でもヒゲが生え、美的感覚の違いから伸ばしているという。
これが従来のドワーフ像だったのだが、近年は別の種族を同名で呼んでいるのかと思えるほど多様なドワーフがいて、頭が混乱してしまう。ちなみに逆のパターンで、ドワーフのことをセルディと呼んでいた作品もあった。
話を戻そう。特に多いのは女性にヒゲがないタイプで、巨大な斧やハンマーを持ったロリ美少女が定番だ。ごつい武器を振り回すギャップ萌え要員として華奢なことも多く、むしろ人間に近い容姿をしている。動物図鑑を見てもオスとメスで外見がまったく違う生物は珍しくないが、そういう種族なのだろう。
逆に人間とは似ても似つかないのが、8話で紹介した「ウィザードリィエクス」シリーズ。このゲームのドワーフは犬の獣人だ。ネコミミ以外は人間とあまり変わらない猫人族と違い、全身毛むくじゃら。もふもふ要員である。
考察というより妄想だが、シリーズ初期の舞台となるリルガミンでドワーフと呼ばれている種族は、もしかしたらエクスでは存在しないのではなく、いるけど人間族に含まれているのではなかろうか? ツバサとともに初期登録されていたヒゲ面坊主イッサは、シナリオ1だとドワーフの可能性があると思う。僧侶は彼らの定番職業だし。
本作ではエルフこそリルガミンと大差ないものの、ホビットには尻尾があるしノームは人形に憑依している精霊である。初期の作品におけるホビットとノームも、エクスではヒゲドワーフ同様ヒューマン扱いなのかもしれない。確かにリルガミンのノームは、肉体を持たない精神生命体に比べればヒューマンの人種のひとつと言われたほうが納得がいく。
そういえばシナリオ1ではヒューマンの信仰心は基本値で5、エクスでは8。ドワーフやノームと一纏めにされていることで、信仰心の平均が上がっている(リルガミンのドワーフとノームは信仰心10)のだろうか。
このように、多様性の時代はファンタジー世界にも影響を及ぼしているわけで、その時々の描写を見ていると、世相がうかがえて面白い。そういえば複数の古い作品でも森に住んでいたドワーフがいたが、これも白雪姫の影響と思われる。
ところでヒゲといえば、よく三国志の関羽みたいに長いのを見るが、あれは格闘戦には邪魔なので、非戦闘員はともかく冒険者には似つかわしくない気がする。柔道選手の頭髪と同じで、少なくとも戦士系のキャラは短いほうが自然だ。
となると、あの長いのは付けヒゲ? 流行りの色や形があって、冒険者ギルドの酒場で戦士たちがファッション雑誌を見ながら盛り上がっているとか……そんな光景を想像すると、ちょっと微笑ましい。
女性もヒゲを生やしてる種族でも、大都市では人間に影響されて処理するようになってるかもしれない。時には「ドワーフならきちんとヒゲを伸ばしなさい!」という母親と「今時そんなの流行らない! 永久脱毛したい!」という娘の確執があったりして。
あれもドワーフ、これもドワーフ。でも見た目は様々なれど、金属加工に長けているという特徴は共通しているようだ。今日も今日とて、ファンタジー世界には彼らの槌の音が響く。そして生み出された武具が、新しい伝説を紡いでゆくのである。




