6日目
「紙が高くて買えなかったのが痛いな。」
薫の独り言ともいえないようなつぶやきに彩加は、一瞬固まった。
その顔には、忘れてなかったんだ、この人。という思いがありありと浮かんでいた。
『冀望~創生への序章~』に来て6日目のことである。
深夜に、吸血鬼の特性であるステータス120%を存分に発揮して、岩塊を補助魔法・強化をかけた石で削ってなにやら作成していたのは、彩加もうっすらと把握していた。
しかし、彩加はそれが”紙”に繋がるとは思いもしていなかったのだ。
木と『雑草』から採取した繊維で紙すき用の型枠作りを始めた頃からタンポポコーヒーによって上がった薫の株は暴落をはじめることとなった。
これまた無駄に生えてくる『雑草』を細かくしてものを、すり鉢に変身した元岩塊に水と共に入れて、さらに細かくしていく。それを水を替えながら2度ほど繰り返し、作っておいた紙すきに流し込み均一の厚さにしていく。
水が切れたら魔法書に挟みこむ。あとは自分を重石代わりにしながら『生活魔法・乾』で乾かして出来上がりである。
魔法書の魔方陣は、発動と同時に消えてなくなるので、魔方陣が消えたページを活用したのだ。
付録として、乾燥させた『薬草Lv1』をすり鉢ですり潰して抽出したものが『生命回復薬Lv0』となったのだが、薫がすり鉢を作成したのはあくまで紙作成の為であり、薬の作成はおまけであったのは言うまでもない。
また、このとき『薬草』を乾燥させたのはもちろん『生活魔法・乾』で、抽出するのに用いたのが『雑草』よりつくられた布である。
地味にいい仕事してます、『生活魔法・乾』。
余談であるが、乾燥させた『薬草Lv1』を手もみして煮出せば薬草茶に、すり潰して抽出すれば
『生命回復薬Lv0』となった。
もちろん『毒消し草』も同様である。
なぜか着々と身の回り品は作成されていくのだが、冒険はいつになることやら。
その後も、焚火の灰に熱湯をかけた上澄み液(灰汁)を混ぜたり竹の皮や『雑草』を生のままや乾燥させたりと数種類の紙を作成し、より良い紙の素材や配合を探求する薫の姿が見られた。
その事実が、薫はさらに一層株を下げることとなったのは言うまでもない。
ただ、この段階でインクの作成の目途が立っていなかったことで彩加は胸をなでおろすことになった。




