2日目
「大丈夫か?」
「がんばる。」
血抜き終わった鳥型の生物『トリー』を前にして覚悟を決める彩加。
解体を前に彩加は緊張気味である。
因みに、この血抜きで得られた血のおかげで薫の種族スキル『吸血』の件は解決した。
お陰で彩加は、自分の血がすわれずにすむと解ってひそかに胸をなでおろしていた。
薫は沸かした湯に『トリー』をつける。
調理済みのものしか見たことない彩加にとって動物の解体など未知の領域である。
因みにこの『トリー』は『水球』でしとめたものなので原型を留めたきれいなものであった。
彩加の『火炎』でしとめた『鳥』は、丸焦げで炭と化しているのであまり調理には向かない。
「なにしてるの」
「こうやってお湯で毛穴を開かせて、羽を取りやすくするんだ。」
薫はお湯から上げて羽をむしりだした。
「この羽は使えるのか?」
薫は手を手を休めることなく、羽をむしり終え、残った毛や産毛を焚き火にかざして焼いて、捌きにかかる。
「上手だね。」
「彩加が小さい頃はクリスマスの度にかや乃が畜産エリアから鳥を直接買ってきて丸焼きさせられてたからな。」
薫は懐かしそうに答えるが、彩加はあきれ顔になるだけだ。
「相変わらずというか、昔からかわってないというか・・・パパに被害がいってなくて良かったと言うべき?」
まさにその通りだ。
薫にしても、昔から料理が得意というわけでもなかった。
政府から配給される栄養バランスの取れた弁当で育った。
反対にかや乃は、父親が食道楽であったことに起因して、家で料理人が作った食事をして育った。
そして、結婚を期に自分で料理を始めたのだが、結果、かや乃には決して料理をさせてはいけないという使命感(?)を薫に与えることとなった。
結局薫弁が、弁当ではなく手料派のかや乃の為にこまめに作るようになったのだ。
いわゆる防衛本能がそうさせたまでだ。
まして彩加が生まれてからは、乳飲み子(本当に乳児と呼べる、まだ、離乳食も始まってない子供)に自分の料理(凶器)を食べさせてようとしているかや乃を見て以来、料理本片手に頑張った。
本来の器用さに加え、自分はともかくこのままでは子供が危ないと、彩加の命の危機感もあいまってプロ顔負けの技術を身につけてしまうあたりが”澤木香”言う男を端的にあらわしているかもしれない。
彩加は人の事を心配する前に自分が無事に大きくなれたことを喜ぶべきだ。
そこらへんの危機感は彩加にもましてかや乃にもないところが残念なところである。
ただ、澤木と裕也は立派な(かや乃の料理の)被害者なので、男二人、十分注意して日々過ごしている。
手際よく『トリー』の解体を進める薫。
『トリー』の卵巣のなかから卵がでてきたところが妙にリアル感をともなっている。
もも肉、むね肉・・・肺、腸、砂肝、胆のう、心臓、次々に鑑定をかけ薫は食べれる部位と食べられない部位に分けていく。
鑑定で「効果 毒」や「効果 マヒ」となるので、この場合は楽である。
以外に重宝することとなった鑑定スキルである。
「いただきます。」
「いただきます。」
今日の昼食は『トリー』が手に入ったので、初期の持ち物の中にあったパンと『トリー』のもも焼きと『トリー』のガラでとった『トリー』と『薬草Lv1』のスープである。
昨日、あまりのパンの固さに非常に悲しくなった2人が、朝から異常なまでの情熱で手に入れた食料である。
彩加が初体験となる解体のあまりのリアルなグロテスクさを乗り越えられたのは、ひとえにこの情熱があってこそだといえる。
『トリー』を仕留めるのは簡単だったのだが、外に出て回収するのは無謀を極めたので(Lv的な意味で)、ツルにナイフをくくりつけ、それを投げて突き刺し手繰り寄せたものである。
手繰り寄せるのに、20回に1回程しか的に当たらず、その間に仕留めた獲物を他の動物達に掻っ攫われるなどの苦難はあったが、そのかいがあったというものである。
温かい食べ物を前にしばし2人は幸せな時間を過ごした。
余談だが、後日、2人とも苦労のかいあって『投擲』スキルが取得可能となった。




