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14日目 彩加

今日の私はいつも以上に気合が入っています。

『モロコ』の討伐に来たのです。

因みに目の前で『モロコの粒』を威嚇の為飛ばしてきているこいつが『モロコ』です。

私と同じ位の大きさで、円錐形の体に無数の丸い粒粒をつけ、天辺から、ちょこっと長めの髪をはやしています。

そう、人間大のとうもろこしさんです。

『モロコの粒』を乾燥させて粉状にすれば、パンやトルティーヤが出来るってお父さんが言ってました。

そう、やわらかいパンですよ。

トルティーヤはクレープ状に焼かれた生地の上に具を乗せて食べるものだそうです。

美味しい食事です!


先日、『モロコ』に遭遇したときは、『モロコの粒』攻撃にあっさり退散してしまいましたが、今日こそ狩ってみせます!


その為に、1度封印した牛柄の紫のレザーマントなのですから!


『モロコ』は近づこうとすれば、『モロコの粒』を飛ばしてくるのです。

『モロコの粒』は、数が多いですが1粒1粒は当たっても大したダメージになりません。

そう、数です。

前回は数の暴力の上に、防御するものがなにも無かったので、お父さんの『水球』を盾にして逃走しました。

お父さんは、最近取得できた『隠密』で潜んでいたのですが、『水球』を盾代わりに使って私を逃がしてくれました。


『水球』は『モロコ』本体には当ててないので、ターゲットは私から外れず、私が神速で逃げ切った後も潜んでいたそうです。


そして、そして、『モロコ』がいなくなった後に『モロコの粒』を取って帰って来てくれたのです。

その日、『モロコの粒』は少ないからと、コーンスープにしてくれましたが、美味しかったです。

甘くて、あのクリーミーなとろみ。冷えた心と体に沁みました。

もちろん、ちゃんとコーンスープでした。



この世界、たまに見た目と味が違うものがあるのです。

鶏もどきの『トット』はアジの味がしました。親父ギャグじゃなく。本当に。

『鰻』はなぜか茄子味でした。

意味不明です。


でも、お父さんがいつも美味しく料理してくれるから問題ありません。

まだまだ、調味料が少なくて、いつも食べてるよりは味も落ちますが、キャンプしてると思えば上等な食事です。

昔、一度だけお父さんの会社の社長さんの息子さんが参加するキャンプに一緒に連れてってもらいましたが・・・

私にはアウトドアは無理です。

ゲームの中で自然を感じて、家で美味しい食事を取る。

よっぽど建設的な考えだと思います。なぜ、快適な空間を飛び出して、お金を出してまであんなことをしたがるんでしょうか?

薫ちゃんによれば、あれは「ただの屋外での食事だ。」になるります。

テント張って、電磁調理器で自分で料理したんだけどな。

反論したかったけど、薫ちゃんが、ちょっと遠い目になりかけてたから止めました。

また地雷踏んだら可哀想だもんね。



それにしても、コーンスープを飲んでる時は至福の時でした。

あれでパンが硬くなければ・・・。

いや、あの硬いパンの破壊力があったとしても幸せだったのですが。

しかし、あの硬いパンは何なんでしょう?

あのパンを食べ続けた結果、『顎強』や『かみつき』なんてスキルが取得できたとしても私は不思議に思いませんよ。



いえ、ないものねだりはしてはいけません。

今日こそ、やわらかいパンが手に入るのです。


そのために、泣く泣くお父さんにお願いして『ウッシー』のレザーマントを加工してもらったのですから。


いつもかっこいいお父さんが、牛柄の紫のレザーマントを身につけたときは、一瞬気を失いそうになりました。


その牛柄のレザーマントを自分が羽織らなくてはならない日が来るとは・・・。


しかし、やわらかいパンの前には、私のプライドなど塵に等しいのです。

昨日お父さんにレザーマントの裾に指が通せる穴を作ってもらいました。

指を通して、レザーマントを腕の動きについてこさせるのです。

これで両手のレイピアは使えるし、顔の前に腕をかざすとレザーマントで『モロコの粒』を受けれるので、防御も完璧です。


ええ、完璧ですとも。紫の牛柄 orz




お父さんが『水球』を発動します。

呼吸をする生き物では無いので、窒息死を狙う『水球』では効果はあまりありませんが、一応ダメージはあるはずです。

でも、『水球』って窒息を狙うような魔法だったかな?

それはおいとくとして、『モロコ』です。

ダメージが通るより、なんだか回復してませんか?

粒がさっきよりツヤツヤしだしてませんか?


お父さんも気づいたようで、魔法攻撃から短剣に変えたようです。

短剣スキルもないのに私と同じように突っ込んで、切りつけて、距離を取る。

ヒット&ウェイです。


くやしいです。

種族特性と神速スキルで速さを上げてる私とお父さんの攻撃速度が変わらないように見えます。

さすがに、私のほうがダメージをあたえてるでしょうが・・・


お父さんに理由を聞くと、動体視力と判断力だって簡単そうに答えられた。


「狩る相手をよく見ていれば、攻撃パターンや攻撃の前行動なんかわかるだろ。

それに対応するだけなんだから、たいした技術は必要ない。」


ってなに?


『モロコ』が『モロコの粒』を飛ばす前は少し大きくなるからその粒の前方を避ければ、モロコの粒に当たらないって。だからそれはなに。


いつ大きくなってるの?そんな数ミリとかの話されてもわかんないよ。

そもそも飛んでくる数が多すぎてたとえ大きくなるのが分かっていても全部把握してよけるなんてありえないよ。

時間差になってるって、全部同時に飛んで来てるじゃない。

どれとどれが時差にだって言うのよ。


私は、昨日お父さんに加工してもらった『ウッシー』のレザーマントで飛んでくる『モロコの粒』を受けた。




だいたい、お父さんも、お母さんも、出来る人間だから簡単そうに答えるのよ。


「お母さんなんて、そんなこと無いわよ。

あなたが赤ちゃんの頃は司法試験の勉強があったから育てられなくて。

だから、かおるがあなたを育ててくれたんじゃない。」


なんて言ってたけど、私知ってるんだから。

おばあちゃんに聞いたんだから。

司法試験日なんて、私が生まれた3日後じゃない。

私が生まれてから試験日までに勉強する時ないじゃない。

そもそも、余裕でトップ通過ってうわさまであったって言うじゃない。

ただ単に、育てられなかったのは、1年間、寮生活して研修受けなければ絶対に裁判官になれなかったからじゃない。


おばあちゃん、言ってたんだから。

お父さんが、私をおぶって大学通ったって。

それ見て面白がった今のお父さんの会社の社長さんがお父さんをスカウトしたんだって。

お父さんも、お母さんも、出来ることが当たり前すぎて、人への要望値が高すぎるんだよ。


ゲームぐらいは勝てると思ったのに・・・。

なんで、なんで、スキルにリアル能力が勝てるのよ。

腹立つ~。

絶対、スキルレベル上げてお父さんの判断能力とやらに勝ってやるんだから!



私の剣を受けて『モロコ』が突然倒れた。

植物系は痛覚がないのか、苦しげな様子を見せないから分かりづらいよ。


お父さんは、さっそく『モロコの粒』を拾い集めてるし。

それこそ、今、日中なんだけど大丈夫なんだろうか?

夜は、大量の魔物『クック』が出るから、まだまだ夜の狩りはお預けなんだよね。

『クック』も弱いくせして次から次へと大量にわくんだよね。

だから昼の行動なんだけど、お父さんには辛いよね。なんで『吸血鬼』なんて選ぶかな?


日よけのマントをすっぽりかぶるようになってから、歩いただけで生命力削られるよなことはなくなったけど・・・それでも夜より体力は使ってるんだよね。

お父さんも植物系の魔物と一緒で、限界がきても一切それを見せないんだよね。

休憩したって事は、生命力まで削られてるとこまでいってるってとこなんだろーなーって私が勝手に考えるしかない。

普通なら意識朦朧とするレベルなんだけど、お父さんの場合そんな感じ全然しないよね。

私も1度魔力を全部使い切ったときはぶっ倒れたのに。

体力は空になってもなんとか頑張れるんだけどなー。




お父さんは、さすがに『モロコ』本体を背負って帰るのは諦めて、『モロコ』の頭の先だけ切り取って持って帰ることにしたようだ。


『モロコ』の芯を出汁にしたスープは、ほのかな甘みがあってやさしい味で美味しかった。

『モロコの粒』を『生活魔法・乾』で乾燥させて、すり鉢ですりつぶして粉状にしたものを、水とコムギ粉で溶いて、クレープのように焼いた生地の上に、『ウッシー』の燻製肉と香草を乗せてくれた。

これまた美味しい。これが、トルティーヤなのね。

焚き木の灰が入った水の上澄液で『モロコの粒』を煮ているのを見たときは一瞬、食べることをためらったけど、より良い’とうもろこし粉’を作る為だったら仕方ないよね。

美味しいって正義だよね。なんでも許せてしまう。

始めは『ウッシー』の肉も上手く加工できなくてゴムみたいだったり木片みたいだったりしたんだよね。

本当に美味しく食べれるようになって良かった。




でも、何気に『生活魔法・乾』がいい仕事しているのはなんとなく納得がいかなかったりする。

役立たず代表のような魔法だよ?

そしてなにより納得いかないのは、すり鉢の存在だよね。

すり鉢なんて”絶対”紙作る為だけに作ったんだよ。

お父さんって、そういう人だもの。

他でちょこちょこ活用されてるけど、絶対そう。

そう考えると、すり鉢使用も複雑な心境になるよね。

どんだけ毎晩、二次関数や三角関数、微分積分を複写させられてるか・・・


「英語は日常会話で勉強していけばいいから、データはいいよ。」


とか、小さな親切大きなお世話。


私は、お父さんやお母さんみたいに最高学府に行こうとは思ってないの。

そりゃ、行けるか行けないかでいえば、はじめから行けない成績かもしれないけど、そういうことじゃないの。

そこそこの大学行って、適当に勉強して楽しく遊びたいの。

自分の生活を大切にしたいの・・・。

好きにすればいいよって3人とも言うくせに、何でゲーム世界まで来て勉強させるかな?

いい大学出たほうが選択肢が広がるからって。

今はもう学歴至上主義の時代じゃないんだよ。

学歴による階級社会なんて数百年前の話だよ。

教科書で習うことだよ。この前、授業で習ったもの。


横のコネは多くなるって・・・それは認められるかもだけど、でも、そんなコネ使うこと無いもん。

お父さんが海に浮かぶ無人島に連れてかれた時なんか、出発の直前に外海許可が降りたって言ってたじゃない。普通、数ヶ月かかるものものなんでしょ。

それ、確かに強力なコネだけど・・・。

それで死ぬ思いしたって言ってたじゃん。

私なら、そんなコネ持ってる人とお友達になりたくないよ。


またまた、思考がそれちゃった・・・。


今日の食事も美味しかったからいいけどね。

今日の苦労と恥は報われたよ、よかった。




『モロコ』の芯は、お父さんの腕を持ってしても、食べられずスープの出汁にするのがやっとだったけど、頭に付いてた髪(?)は、以外にいい材料になったみたい。

それで、おとうさんが『草鞋』ってものを作ってくれた。

始めに履いてた布の靴より性能がいいからって。

草鞋は、数千年前の日本で履かれていた履物だそうだけど、なんでこんなマイナーな物をお父さんは知ってるんだろう。

そして、かわいくない。

確かに、布の靴は初期装備らしく耐久性が無限だけど防御力とかはないからね。

でも、絶対布の靴の方が草鞋よりましな見た目なんだよ。

後日、『クツクツ草』っていうノンアクティブの魔物から『綿クツ』っていうアイテムが採取できた。

即効で履き替えたよ。


お父さんが一瞬ショック受けてたけど気づかないふり。

他人には絶対内心なんて伺わせるような隙を見せないのに、私やお母さんにだけ、たまに素をさらすことがあるよね、お父さん。

そんなところが、かわいくて大好き。


『綿クツ』は、ちょっと俊敏性にマイナス補正かかるけど、それはスキルでカバーよ。

だって、この『綿クツ』、白くてフワフワしてて無茶苦茶かわいいもん。

かわいいことは正義よ。


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