11日目
「トレインで誘導して、ダンジョンに入った時に入り口閉める。
後は餓死するの待つか、弱肉強食?」
かわいい顔して無邪気に言っているがその内容はかなり惨い。
昨晩、深夜に結界がなくなった途端、突如としてコウモリもどきが突入してきて、2人をあわてさせた。
幸い、Lvは5と低レベルな魔物『クック』だったため、多少のダメージで撃退できた。
しかし、いつなんどき高レベルな魔物が進入してくるかがわからないので、急遽もう一部屋作成することになったのだ。
ダンジョン作成ルールは、『水晶の間には必ず進入出来なければならない。』と言ったものだ。
これを守れば、ダンジョンポイントの使用範囲であればなんでも出来るようだ。
要は、水晶の間に必ず出入り口を設ければいいのだ。
そして、いかにして水晶の間への進入を防ぐかが問題になってくる。
一般的な場合、多くはダンジョンモンスターを配置し侵入者を撃退するのだが、ダンジョンモンスターを召還するのにもダンジョンポイントを消費することと、1度死んだダンジョンモンスターは復活できないことがネックになってくる。
今の段階でそこまでダンジョンポイントは溜まってないのだ。
昨日進入してきた『クック』の撃退で得たポイントと、自分達のスキルポイントしかない。
『クック』がダンジョンモンスターになっては居るが、数だけいてもここまでの低レベルのダンジョンモンスターなど、周辺の魔物レベルを考えると一撃であろう。役立たずなことは火を見るよりあきらかである。
「トレインの意味はなんとなく解るが・・・
どっちがトレインして、どっちが外で閉じ込めるんだ。」
念のために解説しておくと、トレインとは魔物がリンクして大量に連なっていく行為のことである。
故意ではなく逃げる途中でたまたまそうなってしまうこともあるが、この場合は故意にその状況を作り出そうというのだ。
「トレイン担当は私で、閉めるのが薫ちゃんでしょ。」
かわいい顔をきょとんとさせて、彩加は薫を見つめる。
なにをいまさら解りきったことをという顔である。
彩加の俊敏性は薫の1.5倍近くある事実を鑑みるも至極当然の提案に思える。
「餓死する間に1ヶ月とかかかったらどうするんだ。私は、(良くはないが)野宿でもなんとでもなるが、彩加はその間、水と食料どうする気だ。もって1週間程しか保存上無理だぞ。お前のほうが餓死することになるぞ。」
食べること大好き、苦しいこと大嫌いな今時女子高生の彩加は、首を激しく振って拒否の構えである。
自分が餓死で死に戻りするのを想像して若干顔を青くしている。
「弱肉強食の場合、食べられた方がダンジョンモンスターとして復活するから強者がそれ食って、負のスパイラルが起こる上に、最後には1匹しかダンジョンモンスターにならんだろ。割に合わないな。」
まさにその通りである。
「いい考えだと思ったんだけどな~」
ダンジョンモンスターを置くことは諦めた2人は、結局無難に知力勝負にでた。
ちょうどあった彩加の受験対策用の数学の問題を利用した鍵を水晶の間の入り口に設置。
ダイヤル錠の解錠番号を問題の答えにしたのだ。
この場合、解答のない問題を用意してはいけないが、逆に言えば解答さえあれば、一般的に解ける程度の問題の上限で難問を用意すればよい。
一般に解ける程度というのは不明であったが、最高学府の入試問題では錠がかからなかったが、高校の最難関数学問題と銘打たれたテキストの中の1問では閉まった。
この違いは運営の気まぐれに任されているようだ。
ダンジョン拡張にあたって、
「絶対、お風呂が要る!」
と言う、身だしなみに気を使う彩加の今どきの女子高生らしい要望を受けて、親ばかな薫は自分のスキルポイントを全て消費して風呂を造ったのは別の話。
さらに、耐久値の設定はあっても、汚れの設定はないこの『冀望』において、気分的に欲しいと言う彩加の要望を受けて、石鹸・歯ブラシ・歯磨き粉まで作ってしまったのは「親ばか」で終わらせていいレベルなのかは謎である。




