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タイトルを三回変えた

 投稿した異世界もののタイトルを、三回変えた。


 一回目。


『無能と笑われた俺ですが実は世界で唯一《神装錬成》ができるので――』


 長すぎたのかと思って、少し短くした。


 二回目。


 逆に「もう遅い」を前へ出した。


 三回目。


 美少女を二人から三人に増やした。


 あらすじも変えた。


 更新時間も試した。


 朝七時。


 昼十二時。


 夜十時。


 PVは、ちょっとだけ動いた。


 本当にちょっとだけ。


「研究熱心ですね」


 九条に結果を見せたら、感心された。


「褒めてる?」


「半分」


「半分は?」


「本文、直しました?」


「……」


「三枝さん」


「タイトルの検証中だったので」


「本文は?」


「今から」


「タイトル三回変える間に?」


「やめろ」


 その後も九条から原稿を見せられるようになった。


「この展開、どう思います?」


「編集者に聞け」


「聞きました」


「じゃあ俺いらないだろ」


「三枝さんの感想が欲しいんです」


 売れっ子に頼られるのは、悪い気はしない。


 ただ、三回目くらいで気づいた。


 九条は俺に技術を教わりたいわけじゃない。


「ヒロインがここで帰るの早くない? まだ主人公との関係浅いから、喧嘩しても惜しく見えない」


「なるほど」


 九条はノートPCへ向かった。


 三分。


「直しました」


「早くない?」


「こんな感じです」


 見せられた。


 俺が考えていた修正より良かった。


「……俺いらなくない?」


「問題を見つけてもらったので」


「解決は君がしてるよね」


「はい」


「才能差で人を殴るのやめてくれる?」


 九条は本気で分からない顔をした。


「三枝さんも書けばいいじゃないですか」


「書いてるよ」


「例の神装錬成のやつ?」


「……今は休んでる」


「なんで?」


「伸びないから」


「伸びなかったら書かないんですか」


「君には分かんないよ」


 口に出した瞬間、空気が変わった。


 九条は何も言わなかった。


 俺も謝らなかった。


 帰宅して、長すぎるタイトルの第一話を開いた。


 途中で俺自身が退屈した。


 タイトルを四回目に変える前に、本文を閉じた。


 新規ファイルを開く。


 白紙のまま、二時間が過ぎた。

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