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ダイナ達の逮捕から数日後。ウタハは寮へと帰ってきた。


「おかえり〜。キリとのラブラブ生活が終わって残念だね」

「………」


帰るなりらしさ全開で迎えられてゲンナリするウタハ。しかしそれを気にするシュカではない。


「その様子だとせっかくの同棲生活もろくに手を出せないまま終わったっぽいね。安定のヘタレで安心するよ」

「………」


悔しいがシュカの言う通りであった。

人数過多の家では何かしようにもなかなかできず、仕事過多も加わって結局初日にキスをしただけで終わっていた。


「ちょっとはフチ君を見習ったら。あの子達もう新居探しに行ってるよ。ルナさんどんどん綺麗になってくしね。やっぱり付き合いたてはいいねぇ。初々しくて可愛くて」

「………」


遠回しにお前らはそんな初々しさなかったなと言われているようで、ウタハはだんだんと腹が立ってきた。


「……お前が自分が出てくまではルームメイトでいろって言ったんだろが」

「え〜?人のせいにしないでよ。それに僕に完敗なんでしょ。心配しなくてもルームメイトでいる間は君のサポートをしてあげるから。まずは次のキリとのデートプランを考えるよ」


ウキウキとリビングへと戻っていくシュカ。ウタハは早くも寮に戻ってきたことを後悔していた。




とはいえ、ウタハにはシュカ以外にも寮に戻らないといけない理由があった。


「ゼロをこの家に住まわせる?」

「そう。みんなが元の生活に戻ってウタハの部屋が空いたら、そこを使ってもらうつもりだよ」


そうカグラに言われたのがゼロ達の逮捕の2日後だった。

意外にもダイナは糸を出せなくなる薬などの犯罪にはリファしか関わらせていなかった。建物の破壊や交通の混乱は起こしたが人的な被害を出していないゼロとジルバは、19歳と16歳ということもあり保護観察となった。その体質の特異性を考えて、ゼロをカグラの家、ジルバをキトラの家でそれぞれ引き取ることとなったのである。

ちなみに2人の家族は犯罪に関わっていることも何も知らなかったので、まずは時々面会して話をしようという結論になった。


「ウタハはいつ寮に戻る?それに合わせてゼロ君を呼ぶ予定を立てたいんだけど」


カグラに他意はないのだろうが、ウタハには早く出て行けと言われているように感じる。その話をスイレンにすると「ついにカグラさんもそれを言い出したか〜」となぜか嬉しそうにしていた。


『そりゃさ。寮には戻るつもりだったからいいけどさ。もうちょっと寂しがるとかさ。キリまで弟ができるって喜んでたし』


家族に用無し扱いされたことを思い出しズーンと落ち込むウタハ。「ちょっと。負のオーラ放つのやめてよね」とシュカからは苦情が飛んできた。




それぞれの処遇も決まりみんな日常に戻って行く中で、ホムラの家ではモガを引き取って暮らしていた。

突然人が意識を失うという被害を出してはいたが能力のことはやはり裁判では扱いきれず、後遺症などもないということで不起訴になったのだ。カグラの診察室で働くことと、スイレンが一緒に暮らして行動を把握することが条件だ。

ちなみにモガの起こした事件の被害者達は事件が無ければあるセミナーに参加する予定だった。そのセミナーは詐欺グループが主催するもので、被害者達は事件のおかげで騙されずに済んだことが後に判明した。

ジルバの壊した建物は取り壊しの決まっていたものだったし、ゼロが交通機関を麻痺させたのは人通りのほとんどない深夜だった。ダイナの意図はいまだにわからないが、この3人に関しては被害を大きく出さずに自分達の能力を世間に知らしめるという結果になったのだった。

とはいえ犯罪に加担していた人間と敬愛するホムラが一緒に暮らしているということで、シュカは少し心配していた。

そうなれば素直に口に出すのが良くも悪くもシュカなので、仕事の合間にモガとの暮らしについてホムラに聞いていた。


「年の離れた弟ができたみたいで意外と楽しいぞ。彼はもともと素直な性格だし、自分の力がわかったことで仕事にも前向きに取り組んでるしな。俺も応援してる」


嬉しそうに話すホムラにシュカはホッとする。そして話題をフチとルナのことに移した。


「フチ君は?新居決まった?」

「はい!来月には引っ越す予定です」

「良かったね〜。結局うちに残る事が決まったし。こっちのほうがルナさんの職場に近いもんね」

「シエンさんには寂しがられましたが。ホムラさんにしっかり体術を学んで己を磨きなさいと言われました」


フチは能力的に14班に残ったほうがいいと判断され、正式な異動が決まった。そうやってワイワイとそれぞれの近況を楽しんで話していると、コハクが部屋に戻ってきた。


「ただいま。ウタハくん、ダイナとの面会許可おりたよ」

「ほんとですか⁉︎ありがとうございます」


ダイナとリファは聴取にも素直に応じ起訴へと持っていける所までいっているのだが、やはり能力に対する裁判のありようが決めきれずに宙ぶらりんな状態になっていた。

他の容疑者と同じようには拘束できないのでひとまず刑務所の特別室に入れられている。昔、カグラとウタハが過ごした部屋だ。


「条件はカグラが同伴すること。能力を使われた時のためにね。まあダイナ達も大人しく過ごしてるらしいし大丈夫だとは思うけど」

「そもそもなんで会いに行きたいの?ダイナもリファも納得して捕まってたし、今さら話す事もないと思うけど」


シュカの疑問ももっともだが、ウタハはどうしてもダイナに会わないといけない気がしていた。


「自分でもわかんねぇけど、話さないといけない気がすんだよ。俺自身のためにも」

「ふ〜ん。まあいつもの思いつめて暴走してる感じでもないし、カグラさんも一緒だし、行ってきたらいいんじゃない?許可する〜」

「なんでお前の許可がいんだよ」


ウタハのツッコミにみんなの笑い声があがる。この間までの緊張感が無くなり、久しぶりに14班に穏やかな時間が流れていた。




面会の同行をお願いするのは自分からしたいと、ウタハは寮に戻ってから初めて実家に帰ってきた。


「おかえり〜!ずっと一緒に暮らしてたから離れて寂しかったよ!」


玄関から出てくるなりカグラが抱きついてくる。いつもならいい加減やめてくれと思うのだが、厄介払いされた気持ちになっていた今はかなり嬉しく感じるウタハだった。


「……公安はやっぱり暇なのか?」


非番を使って朝からやってきたウタハだったが、トカゲもキリもいるのを見て呆れた声が出てしまった。


「心外だなぁ。私もウタハが寮に戻って寂しいから非番を勝ち取ったのに。まあダイナ達の件が落ち着いて、ずっと取れてなかった休みを今日に合わせられたからラッキーだったね」

「ダダが気ぃつかってくれたんだよ。アイツにもちゃんと休みやれよ」

「わかってるさ。ハリアと休みを合わせて家族旅行にでも行ってもらおう」


ダダとハリアは公安を出てから同棲し2年後に結婚した。今や2児の親だ。


「僕も旅行行きたいなぁ」

「おや。なら今度私と行くかい?」

「トカゲとは何度も行ってるもん。たまにはウタハやキリと行きたい。ゼロも一緒に行こうね」


そう言ってゼロに抱きつくカグラの隣でトカゲがショックを受けて膝から崩れ落ちている。

その大袈裟なリアクションはいつものことなので放置し、猫可愛がりされて困っているゼロを助けようとウタハがカグラの首根っこを掴んで引き剥がした。


「こら。ゼロにまで甘えを発動すんな。困ってるだろ」

「え〜。可愛がる子が増えて喜んでるのに」


ブーと頬を膨らませるカグラを無視してウタハはゼロに話しかける。


「なんか悪ぃな。こんな家で。困ってることはねぇか?」


ブンブンと思いっきり首を左右に振って否定するゼロ。そして言いにくそうに小さな声で話しだした。


「あの……」

「なんだ?」

「……部屋、使っちゃってごめんなさい」


ウタハの部屋を使っていることを気にしていたのだろう。申し訳なさそうに謝ってくる姿はウタハの何かを刺激した。


「……うん。可愛いな」

「へ?」


ガバッと抱きしめてウタハは満足そうにゼロの頭を撫でだした。


「そうか〜。弟みたいで可愛いってこんな感覚だったのか〜。今ならスイレンやウツギの気持ちがわかる」

「え?え?」

「あ!ずるいぞ、ウタハ!俺だって撫でたいの我慢してるのに!」

「早い者勝ちだ!っていうか、お前は一緒に住んでんだから今日くらいいいだろ」


文句を言うキリも意に介さず、ウタハはゼロを可愛がるのを堪能する。そうして家族に新しい仲間が増えたのだった。

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