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緊迫の逮捕劇のあとに現れたルームメイトに、ウタハは何となく諦めの気持ちが湧いてきた。


「シュカくん?このままじゃ終われないって?」


さすがのコハクも戸惑いを隠せない様子だ。


「犯罪は許さないと実感させて絶望させて、はい捕まえましたじゃ悲しいでしょ。だから、大切なメッセージを預かってきました」


シュカはスマホを取り出すとある音声を再生した。いったいいつの間に録音したのか。それは先ほどのリファとのやりとりだった。


『それが私の愛だ!』

『あの人とずっと一緒にいたい!笑顔にしてあげたい!』

『そんな言葉が嬉しいと思ってしまったんです』


聞こえてくるのは溢れんばかりのダイナへの愛の言葉で。抜け殻になった瞳に光がさした。


「あんたが本当は何を考えてたのかも何を望んでたのかも知らないけどさ。これだけの愛を向けられて、絶望してる暇なんてないんじゃない?」


自分のしたいようにできて満足そうに笑うシュカに、ウタハは羨ましいような呆れ果てるような気持ちになる。

でもその行動は確実にダイナを救った。


「アイツらはどうなった」

「全員大人しく捕まってるよ。結構満足した顔してるらしいから、あんたのやったことも無駄じゃなかったんじゃない?」

「そうか。なら、連れてけ。俺はもう抵抗する気はない」


そのままコハクに連れられてダイナは大人しく部屋を出て行く。複雑な顔をしているウタハにシュカが嬉しそうに近づいてきた。


「どう?僕がルームメイトで良かったでしょ?こんなに頼りになるやつはなかなかいないよ」


言外に褒めろという圧力を込められて、ウタハがはぁーっとため息をついてその場にしゃがみ込んだ。


「わかったよ。俺の完敗だ。お前は凄いやつだよ」

「分かればよろしい」


ニカッと笑い、綺麗な姿勢で立ち去るシュカ。

通信機からは糸が仕掛けられた人達が暴れる事件が鎮静化したとの一報が入ってきた。


『やっと終わった……』


ウタハは天を仰ぎながら、天井に阻まれて見えない空を思い浮かべて胸を撫で下ろした。




ダイナ達を連れて突入班が公安へと帰ってきた。それぞれに対峙した相手を連れて建物へと入ってくる。


「シバさん!」


事前に連絡して待機してもらっていたシバにスイレンがモガのことを説明する。早口で捲したてるスイレンと穏やかに対応するシバの隣で、ホムラが所在なさげにしているモガに付き添ってあげていた。


「このまま診察室に行くけど、辛いかな?」

「ううん。大丈夫」


突き放された過去を思い出すかと心配するカグラに、ゼロは落ち着いた様子で答える。保護者モードに入ったカグラにゼロがすっかり心を開いているのを見て、セキトは何かを思いついたようにどこかへ消えていった。


「彼は眠っているし、聴取の時間以外は付き添ってあげるかい?」

「……ああ」


まだ麻酔で眠っているリファを運ぶトカゲにダイナがついていく。コハクとシュカがそれに同行した。


そして、突入班帰還の連絡に護衛組が入口へと降りてきた。


「ウタハ!」


無事に帰ったみんなを見てララがウタハに駆け寄ってきた。ウタハも手を広げて迎え入れ、小さな体を強く抱きしめる。


「ただいま。ララ。よく頑張ったな」

「ぼく、こわくなかったよ。みんなが守ってくれたから」

「そうか。そうだな。俺も安心して悪いヤツを捕まえに行けた。……動物園行こうな」

「うん!」


満面の笑みで答えるララに癒されながら、悪いヤツという自分の言葉にウタハは少しの引っかかりを感じる。それは大切な気持ちだと感じて、忘れないように勝利の喜びに浸る心の隅にそっとしまった。


「ウタハ。無事で良かった」


安堵したように声をかけてくるヨルの姿を見て、ウタハは大切なことを思い出した。


「ヨル!そうだ!帰ったらすぐ言おうと思ってたんだ!家族を殺したのはお前じゃなかった!」


思いもしないウタハの言葉にヨルは戸惑って動きを止めてしまう。その肩をそっと抱いて、ハナが詳しい説明を求めてきた。


「ウタハさん。それはいったい?」

「確かにダイナに能力を使われて3人の所まで行ったけど、殺せなかったんだ。ハナとララに会えなくなるって泣いて。だから、ヨルは殺してない」


信じられない真実にヨルの瞳から涙が溢れる。


「本当に?……ずっとハナとララといられるのか?」

「ああ。ずっと一緒にいられる!ダイナも捕まって、これでお前達は自由だ!」


泣き崩れるヨルをハナが優しく支える。ヨルのそんな弱い姿を初めて見たララは、涙を流す体をそっと抱きしめた。




「フチ君は…」


護衛班と共に入り口に降りてきたルナは、想いを伝えるためにフチを探す。だが、その視界に入ってきたのは信じられない光景だった。


「なあ。付き合ってよ〜。フチも楽しかっただろ〜」

「はいはい。わかったから」


ジルバがフチに甘えるようにまとわりついている。横にいるキトラは楽しそうにそれを見守り、フチも仕方がないなぁといった感じで甘やかしていた。


「……ダメー!」


突然の大声にその場にいた全員が声の方を見る。それでもルナの言葉は止まらなかった。


「嫌だ!フチ君に……伝えようと思ってたのに……キリの時は諦めれたけど……フチ君はダメ………だって、だって好きなんだ」


まさかの告発に全員が呆気に取られる。だがフチだけはジルバをキトラに預け、しっかりとした足取りでルナに近づいた。


「フチく…」

「式はいつにしましょうか⁉︎」


ガシッとルナの手を掴むフチに再び全員が呆気に取られる。ルナまで何を言われているのか理解が追いつかない中で、フチが誰かを彷彿とさせる語りを始めた。


「あ!ご両親への挨拶が先ですかね?ご兄弟が多いと言われてましたよね。お会いしたいです。新居も探さないといけませんし、ああ、やる事がたくさんだ。楽しみですね!」

「え?え?」


戸惑うルナにフチが不思議そうな顔をする。


「あれ?今のって結婚しましょうって話じゃないんですか?」


飛躍しすぎているフチに周囲が向ける苦笑には微笑ましさが含まれている。ルナは結婚の言葉に顔を真っ赤にした。


「いや、えっと、そこまでは……」

「違うんですか?」


垂れたしっぽが見えそうなほど悲しむフチにルナは考えて考えて言葉を口にした。


「……結婚を前提にお付き合いしてください」

「はい!喜んで!」


満面の笑みで答えるフチ。気づけばみんなで2人に拍手していた。



そんな予想外の幸せに満たされた空間で、キリがウタハのところにやってきた。


「ルナのやつ、告白するとは言ってたけどこんな大胆な事するなんてな」

「いいんじゃねぇか。幸せそうだし」


フチがルナをお姫様抱っこするのを見て2人して微笑みあう。


「おかえり」

「ただいま」


そのまま指を絡めて手を繋ぎ、2人は何も言わずに寄り添った。

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