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お稲荷さま  作者: 麻本
16/18

キッコさんと街の噂

「あたいは、ひとまず安心じゃ。健太郎。今日もまた、買い物があるなら、あたいを連れていってはくれぬか?」

「いいですよ」

¨いい¨とは言ったものの、僕は、キッコさんを連れていくのに、抵抗があるのだ。

その理由は。

「キッコさん。その髪の色ってどうにかならないの?」

「髪の色?金髪で有る事の、何が悪い?」

「いやあ。黒髪じゃないと、単純に目立つからさ」

「いちいち黒髪にしたり、耳を隠したり。耳はとにかく、髪まで変えるのにはかなりの妖力を使う。それは嫌じゃ。それに、この金髪は、あたいの¨誇り¨なんじゃよ。其処まで変える気はせぬ」

「じゃあ、どうしても駄目だと?」

「うむ!」

「それじゃあ、仕方ないか」

「それならばいいのだな? もう行こう? 健太郎」

「はい、はい」

近場のスーパー。

キッコさんと買い物をして居ると、行き交う人に、やたらとチラチラ見られるのだ。

キッコさんは、金狐故に金髪なのだ。

それで、やたら目立つ事に抵抗があるからだ。

食品スーパーでの買い物は、どうしても人目が気になる。

少しして買い物をしていると、パシャとカメラのシャッター音が聞こえた。

「!?」

音のした方向を振り向くと、僕よりは年上の普通の人が携帯電話のカメラでキッコさんを撮っている。

「こんな所で撮るなんて…」

僕は、非常識だと思った。

しかも、写真を撮った人は、足早に退散する。

「ちょっとっ!」

僕は、呼び止めようとしたが、駄目だった。

「健太郎。何じゃ?今のは」

「多分、キッコさんの姿を撮られたんだと思う」

「あたいの姿をか?何でかのう?」

「僕にも分からない」

「分からないのか。そうなんじゃな?」

「うん」

「仕方ない。それじゃあ、買い物の続きをしようか。また、苺大福を買ってくりゃれ?」

「はいよ」

僕は、何だか府に落ちないまま、キッコさんと買い物をした。

そして、その夜。

夕飯をキッコさんと一緒に作り、キッコさんとオセロゲームとかをやった後、寝床についた。

 翌日。

夏休み。特にやることもなく、正直暇だ。

家でゴロゴロしていると、家のインターフォンが鳴る。

「どちら様ですか?」

「あたしよ!健太郎」

「美徳か。どうしたんだ?」

「キッコさんの事で、ちょっとした騒動になっている見たいなの!」

「えっ!?キッコさんの?」

「だから、ちょっと上がらせて?」

「いいよ。話しを聞かせてくれないか?」

美徳に家に上がってもらい、聞く事にした。

「何なんだい?ちょっとした騒動って」

「ちょっと。コレをみて!コレ!」

「スマートフォン?スマートフォンなんか持ってたんだ。美徳はすげーよな!」

「いいでしょー!このスマートフォン・・じゃあ、なくて!キッコさんの事がYOUpipeの動画にあるの!」

「YOUpipe!?動画投稿サイトの?」

「そう!これをみて」

美徳が携帯電話、スマートフォンの画面をタッチして何やら操作している。

「もしかして、YOUpipeをスマートフォンでなら見れるのか?」

「そうなのよ!前のあたしの携帯電話では駄目だったけど。

ほら。手渡すから、見てみて。画面とか、触らないでね?」

「ん。わかった」

僕は美徳に渡されたスマートフォンの縁を持って動画を見る。

すると、何か音声合成の声でナレーションが流れた。

写真はスライドショーで表されていて、見ているとそれは、妖怪であるキッコさんたち四人の夜の出来事・・・人をばかしていた事が動画で流れ、その中でも、

一時的に着ぐるみ妖怪の変身を解いたキッコさんの姿がクローズアップされていたのだ。

そして、昨日撮られたと思われる、キッコさんの横顔が映ってもいたのだ。

その動画は、あの夜に撮られたキッコさんと、キッコさんの横顔の写真の比較になっていて、

その動画では「近辺に実在の可能性あり!?」と、字幕で書かれていて、音声では

「人がそのままなりきっているか、本物かはまだ不明である。判明したら、投稿するかも」

なんて言っている。

「ありゃあ…注目され始めてる。

キッコさんの様な妖怪は、夜だけだから、むしろ神秘的であり、謎めいていいのに。

やっぱり、僕が買い物に連れて行ったのが失敗だったか」

「どーすんの?健太郎?」

「こうして、見つかってしまったのは仕方ないよ。僕は、キッコさんを今の文化に触れさせたいとも思ったし、長く居ればいずれは、知られる事もあるとは思ったけど。時期が早いとは思うよ。

これはもう、むしろ堂々とするしか無いかもね?」

「堂々ってなんで?」

「一種の開き直り!いずればれるだろうから、今のままいるしかない!」

「そうなんだ。ところで、キッコさんは?」

「まだ寝てるよ。起こして、動画を見て貰おう」

僕は、キッコさんを起こして、美徳から動画を見てキッコさんにみて貰った。

キッコさんは「あちゃー!」とか言いながら、キッコさん自身の映った画面をみて頭を抱えた。

「ふわぁ。あたいの姿が確かに映っておる」

「キッコさん。仕方ないよ。あれだけ 頻繁に夜、ポン太郎さんたちと現れて、後、

普通に昼間外に出ればいずれは発見されるんじゃないかって 思っていたよ」

「そうなのかいな?」

「そうだよ。もうこうなったら、逆に社会に溶け込むしかない。 まだ始めだし、幸いこの辺りは人も多くは無いから、撮られても稀だろうし。

これまたポン太郎さんたちの事は注目されてないから。 割と早く風化するよ」

「健太郎?何か言っている事矛盾してない?」

「矛盾?どこが?」

「最初は、キッコさん達が人を化かす事で、この木皿津が有名になればいいとか言って無かった?」

「言ってないぞ?」

「あれっ?そう?」

「そーだって!」

「健太郎や。もうあたいは、外に出ないほうがいいのかな?」

「外に出ないって。極端な。夜の2時とかでなら、出ても大丈夫とは思うよ?えっとそのぉ。キッコさんは、人を化かすのが生業何でしょうけど、今の時代、公になったらえらい事に成るんです。 今までの事が、いろいろ覆ってしまうから」

「むむう」

キッコさんは悩んでいる。

後、さっき美徳にキッコさん達の事で木皿津が有名に成ればいいと言うのを言っていないと言ったけど、あれは嘘。

僕は本当は言った事を記憶している。

正直、難しいのだ。 この問題は。

「そーだ。美徳、キッコさんの事を教えてくれたのはいいけれど、この後どうするんだ?ポン太郎さんの所にでも、一緒に行く?」

「ううん。それがねー。女性限定のバーゲンがあって。これから友達と、それに行くから」

「え?」

「女性限定だから、健太郎を連れて行く訳行かないしー。丁度通り道だったしさ~。それでねっ!」

「それでわざわざ?」

「うん。時間も丁度いいから。おいとまするわ」

「そ、そうか」

僕は困惑した。 ひとまず、美徳を玄関までは送った。

「じゃあねー」

美徳は、行ってしまった。

何だか、美徳との距離が離れてしまったようで何かさみしい。

「健太郎。見事に振られたなー?どうじゃ?あたいと散歩にでも行かぬか?」

「散歩ですか。行きましょう」

僕とキッコさんは家を後にする。

そして向かった先は、キッコさんが封印されていた神社だった。

「さあ。着いたぞ」

キッコさんにそう言われて僕は キッコさんが封印されていた神社の周りだけ

でなく、その周辺を、範囲を広げて見る事にした。

そして見た、信号機の横にあるプレートを見て僕は、一瞬驚いた。

「い、稲荷町?」

そう。

キッコさんの封印された神社が元で、その町名が付いたのである。

「きっ、気がつかなかった!」

「健太郎。どうしたのじゃ? 」

「キッコさん。キッコさんの居た稲荷神社が元で、この一画の町名が決まってるみたいなんだけど?」

「うん?あっはは。本当じゃな!稲荷町とあるな!」

「キッコさん、何か関わりある?」

「無いと言いたい所じゃが。うちは封印される前にひと騒動やってるからな」

「やってるんじゃん!じゃあ、それが元か何かでこの一帯にこの町名が付いたんだね?

何をやらかしたの?」

「ん‐?人間と一緒に住もうとしただけじゃが。後は、忘れた!」

「ああ、そう」

こんな事を喋って居ると、こちらに向かって来る一人の女性が現れた。

「あら?いつかの青少年じゃない?」

「何言ってるんですか!牡丹さん!」

「んふふ。冗談よ。五井君だったね。キクと一緒なんだ?」

「そうですけど。牡丹さんのその格好って」


牡丹さんのその格好は、胸元が大きく開いたようなチューブトップの服であり、正直

目のやり場に困る。

「あら?もしかして、あたしのこの格好に悩殺されちゃう?」

牡丹さんが、軽く身体を揺らしながら迫って来た。

「からかわないでください!」

「んふふ。照れちゃってかーわいい」

「でもなんで僧侶の牡丹さんがそんな格好してるの?」

「これ?今日は非番でさー。仲間のコンサートを見に行くのよ」

「普通、僧侶って、休みとか無いんじゃあないの?」

「あら?勘違いしてるねー?あたしは退魔師よ?もっとも寺はあるけど単立で、お墓を管理、供養してる訳じゃないし。

朝のお勤めはしてるけど、後は非番でねー。これから居た大学のバンド見に行くの」

「バンド?」

「あたしね。大学時代はドラム叩いてたのよ」

「どっ、ドラマ-!?歌とかはっ!?」

「歌?ふーん。ボーカルはやってないよ?」

「でもでもっ!お寺と言ったら鐘とか太鼓とかっ」

「あっはは。太鼓もドラムも、共通点はあるかもね。歌うのと唱えるのも共通点ありで、言わば『仏法イズ ロック』ってやつー?」

「なんですか?そりゃ?」

僕はちょっと白けた。キッコさんもあ然としている。

そんな僕たちの姿を見た牡丹さんは、恥ずかしくなったのか、急に顔を赤らめた。

そりゃあそうだろう。

自分の言った事がスベったのだから。

「キク。あんたの事、いつか封じてやるからね!」

あっ!牡丹さん、ごまかした!

「うーん。封印で思い出したけど。牡丹さんさ。九尾の藍とは、あの争いの後、どうしたんですか?」

「藍には後一歩の所で逃げられたわ。強い光で目眩ましされてね」

「目眩ましすか」

「それで今は?」

「他の退魔師に追跡してもらって居るわ」

「藍のいる場所とか分かったんですか?」

「うーん」

「?」

「出雲にいるって話しよ?」

「出雲ですか?何でででしょうね?」

「さあね?八百万の神とか関係あるかも知れないけど、それ以上はあたしも分からないわ。もういいかしら?そろそろ行かなきゃだから」

「あっ。ごめんなさい?」

「じゃあね。キク。あんまり人にちょっかい出さないでね?」

「気をつけるわい!」

そう言うと、牡丹さんはこの場から立ち去って行った。

「なあ、健太郎。ちょっとこっちに来い」

僕はキッコさんに誘導されて、小さな社にある石段に、キッコさんと二人で座る。

「お主にはあたいの昔話をして置こうか」

「昔話?」

「そうじゃ。あたいの事、健太郎には話しして見たくなって」

「その話し、聞かせて下さい」

「そうか。あたいはな。妖弧になってから、この社に住み人の生活を見守っておった。ある日、一人の漁師がお参りに来て、突然に歌を披露してくれたんじゃ。

あたいはその歌に惚れて、妖力を使い、語りかけてその漁師に封じのしめ縄を切らせた。

それから直ぐ、人間に化けてその漁師に近づいたんじゃ。妖怪で有ることは伏せてな。

それからあたいは、その男と共に町人として生活を続けて来る事が出来た。

それで、妖怪と人では子は授けられる事は無かったが、一緒に過ごした日々は楽しかったなぁ。

でもある日、他にこの男を好くのが現れて喧嘩になり、それであたいが妖怪である事が知られてもうて。

騒動になり、退魔師によって社に再び封印されてしまったんじゃ。

しかしなんだな?コレも縁というやつか。お主、健太郎に封印を解かれようとはな」

「縁?縁てどんな?」

「分からぬか?お主はその、あたいが好きになった男の子孫なんじゃよ」

「えーっ!」

「因みに江戸時代とやらの中頃でなぁ。

健太郎の曾祖父じゃろな。



続く


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