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お稲荷さま  作者: 麻本
15/18

妖怪騒動 二

どやどやと、男達数人が集まり、こちらに向かって来る。

何だかマズイ。

それで僕たちは、一斉に逃げ出した。

追いかけて来る男達に紛れて、一つ目小僧の着ぐるみ妖怪が、宙を浮くようにして男達を追い抜き、こちらに向かって来る。

その追い抜く様を目の当たりにした男達は、びっくりしつつもまだ、

こちらに向かって来る。

そして一つ目小僧が男達の前にでた時に、その体が光を放ち、妖怪が真の姿を現した。

「あたいに何か用か?男ども?」

その姿は金色の短髪で、9つの尻尾が生えている。

そして背は高い。

そして、何より異様な威圧感があった。

「ほ、本物の妖怪!?」 

男達は驚愕する。

「おんしらは邪魔じゃ!あっちへ退けぃ!」

九尾の狐の妖怪は、右手で空を払うと、衝撃波らしいものが発生し、男達は吹き飛ばされた。

そして九尾の狐はじりじりと男達に近寄る。

「うわー!本物だ!ヤバいぞ!逃げろー!」

そう叫ぶと、男達は反対方向に逃げて行った。

それを見た九尾の狐は振り返り、こちらに向かって飛んで来た。

そしてあっという間に追い付かれる。

「戦巫女。あたいを呼んだのはそなたか?」

なんと、九尾の狐自らが、月蓮さん相手に対峙してきたのである。

「藍!よくも、あたしの父を!」

「あたいが何かしたか? おお。思いだした。

お主は、あの退魔師の娘であったか」

「覚悟なさい!今度こそ、中国に帰ってもらうわ!父の仇っ!」

「ほざけ!何が中国じゃ!」

暫く、二人は微動だにしない。

しかし、そう言い放つと、九尾の狐は振り返り、逃げの体制を取った。

「待てっ!逃げるんじゃ無い!」

逃げる、九尾の狐の藍。

藍は、直ぐに姿をくらましてしまった。

「え!藍って狐は、腰抜けってやつ?」

「健太郎。あほ言うで無い!姿をくらましたのは、藍様の作戦じゃ」

「作戦?」

「周りを見てみい?」

「周り?」

そう言われて僕は、周りを見たのだけど、何の変哲も無い街で、夜にしてはひとが多いと言う事位しか思い付かない。

「キッコさん。何がどうだと言うの?」

「分からんようじゃな?今ここで河岸かしを変えないと、周りの人間は愚か、建物まで被害を被る。

藍様は、それを避ける為に、逃げ出したのじゃよ」

「其処まで考えてるのか!」

僕は、九尾の狐の気遣い?に驚いた。

「じゃあ何?其処まで凄いバトルになるの?」

「ばとる?」

「戦い!」

「ああ。凄い戦いになるぞ。ひとまず、藍様達を追いかけよう」

キッコさんと僕は、九尾の狐の藍と月蓮さんを追いかけた。

その途中、よくみると、あちこちの街灯に傷がついたり、家の塀に傷が見られる。

これは、月蓮さんがやった物なのか?

もしもそうなら、藍とキッコさんの考える通り、場所は変えたほうがいいのかも知れない。

そして程なくして僕たちは、藍と月蓮さん達に追いついた。

「やっと追いついたわ。藍!覚悟なさい!」

九尾の狐、藍は立ち止まっている。

「ノーマクサンマンダーボダナン~~オン!」

藍はそう言うと、その場から完全に姿を消した。

「くそっ。逃げられた!藍!卑怯なやつ!」

月蓮さんが、じたんだを踏む。

「ふふっ。健太郎。あたいらは藍様の所にいくぞ」

キッコさんはそう言うと、じたんだを踏んでいる月蓮さんを見つつ、僕の手を繋いできた。そして。

「ノーマクサンマンダーボダナンテンイセンジョウソワカ」

と言いながら、 片手で印を結ぶ。

そしてその動作の最中、月蓮さんが気付いてこっちに近づいてきた。

するとキッコさんは僕を胸の方へ強く引き寄せる。

「わぷっ!」

少しばかり、シュッ!と音がして、何処かへ投げ出された感じになったが、僕とキッコさんの体は密着

していて、変に跳ばされるだとか、ずっこけるまでには至らなかった。

キッコさんが支えてくれたのだ。

「健太郎。着いたぞ。周りをみてみい?」

キッコさんにそう言われて僕は周りを見る。

すると、天井にはちょっと安っぽいシャンデリアや小さなミラーボールが見えた。

それと、周りはカウンターとテーブル。

そしてお酒のボトルらしき物も見える。

「えーっと。ここって喫茶店みたいな所? それともバー?」

「ラウンジと言うそうじゃ」

「キク。それは違うぞ。ここはダイニング&バーじゃ」

いきなり、九尾の狐、藍が現れた。

僕が藍の方へ目をやると、格好がさっきとは違っていた。

色は紫色で、胸の辺りが大きく開いたワンピース。

スリットも入っていて、何だか妖艶な感じだ。

僕は思わず胸元に目が行く。

そして僕が、藍の姿に虜になっていると、何か足のかかとの方が何やら引っ張られる違和感を感じる。

「キッコさん。なんか足下に違和感を感じる。そう言えば月蓮さんは巻いたのかな?」

「どうだかのう?」

「どうだかのうって。え?あれ?後ろに引っ張られる!?」

僕は、かかとが引っ張られることに違和感を感じて後ろをみる。

すると、自分の影が、異様な形に盛り上がっている。

「うわわっ。何だこれ!」

そして、盛り上がった影が次第に形になっていき、その姿を現す。

その姿は人間の女である。

「げげっ!月蓮さん、なに人間離れした事やっているんだ! 僕の影を利用するなんて!」

僕は正直びっくりした。

その月蓮さんは、息を切らして、ぜーはー言っている。

「ふうっ。間に合ったわね!キミの足を掴んでなかったら、振り落とされてどうにかなっていたわ」

と、月蓮さんが言う。

その様子をみていた藍が、キッコさんを睨んだ。

「キク。テメェ~っ!」

藍は凄い怒りの形相をみせた。

そしてキッコさんが

「あちゃー」

とか言っていながらも、その顔は笑っていた。

しかし僕はキッコさんのその笑っている表情がいわゆる「不敵な笑い」にみえていた。

何か企んでるに違いない。

そして、姿をとり戻した月蓮さんが藍の元に歩み寄る。

「ここは、もしかして藍の店?妖怪風情が小さいながらも店を経営しているなんてね!何考えて居るんだか!」

「はあ?人間界で生きる術と、その様子を学ぶためにやっているのだが?別に悪い事はなかろう?」

「いーや。悪いわね!妖怪風情が人間相手に商売だなんて」

何か月蓮さん、妖怪を完全否定してないか?

「大体、妖怪なんて要らないのよ。全てが悪なのよ。神を気取ってみたり、人に憑いて惑わしたり、脅かしたり。人に百害あって一理無しだわ。それに、この世はもう人間の世界なのよ。妖怪なんて全て居なくなるべきだわ。それに、八百万の神なんかも要らない。仏教さえあれば十分なのよ」

僕は、月蓮さんの余りの発言に驚いた。

それに月蓮さんてば、一方的に酷いこと言っているように思う。

「月蓮さん。最初、木皿津の活性化の為に、キッコさん達を赦していた事があったけど。あれは何だったの?」

「ああ、あれ?妖怪達がどう動くのか様子見してたのよ。特徴とか弱点とか。それを探る為に泳がしてたの」

「・・・」

「あら?何だか不思議そうな顔してるわねー?意外だった?」

「意外だよ。僕は、僕の中では。こうして現れたキッコさん達と、認めあっていずれは共存できるような世界を望んでた。

だけれど。大人の事情だか何だか知らないけど、妖怪達を滅ぼすと言わんばかりの発言は、どうかと思う。」

「ほほう?そこの人間。言う事が違うな?どう言う風の吹き回しじゃ?」

藍が僕に質問してきたがすかさずキッコさんが、藍に耳打ちした。

すると藍は、僕の事には納得したのか、話す相手を月蓮さんへと向けた。

「月蓮とやら。お前は本気で仏教だけでよいとお思いか?仏教とて、中国から

伝来したものであろう?ましてや、人間が人間の業を戒めるの為につくったようなもので

ないのかえ?あたいのように、自然に生まれたようなものではないんじゃろう。

仏教なんぞは人間の為の人間によるものでしかない。

それからしたら、八百万の神とて、ひとがつくったものやもしれぬが、あくまでも自然に従い、霊的にも優れているものだと思うがのう?」

「『だと思う?』 へえ。九尾の狐にも、人間について分からない事ってあるのねえ?何が千年を生きる妖怪よ。悟ったふうな口きかないでよ」

九尾の狐がバカにされてる?

「ひとに悟りなぞないと思うが?あたいの見た中に悟りを開いたという輩は、やがて気がふれておかしくなっておるぞ?そして、あたいには悟りなぞないぞ?」

「それが千年を生きて学んだ事ぉ!?大したことないわねぇ。やっぱり大人しく中国へ帰ったら?」

「うつけが!仏教とて、中国から伝来したものであろう!二度も言わせるな!」

藍から鋭い爪が伸び、月蓮さんに襲いかかった。

「きゃっ!」

月蓮さんは、寸前で避ける。あのとき僕に捕まって来た際に、あの槍みたいのは持ち込めて居ないようだ。

「なあんちゃって!」

月蓮さんは、袴のポケットから、お札らしい物を二枚出す。

「コレでも食らいなさい!」

月蓮さんはお札を藍目掛けて投げる。

しかし、それは藍に、呆気なく避けられた。

「ふん!こんなもの。今度はこちらの・・!?」

藍の腕が途中から動かなくなっていた。

僕が、藍の後ろをみているとさっき投げられた札が壁に張り付いている。

そしてそこから、蜃気楼みたいに、一部の空間が霞んで、紐状になり藍の腕にまとわりついているのが僕にも見えた。

「ぬうっ!?」

藍がもがいていて動きがままならない。

それを見た月蓮さんは、藍に近寄りだす。

しかし藍は、近づいてきた月蓮さん目掛けて手の平から火の玉をだし、それを投げる。だが、狙いが逸れて、

当たったソファーに燃え広がった。

「うわっ!やっば!」

ソファーから上がる炎。

「キッコさん!何とかして消さないと!」

「その必要はない。藍様が健太郎を連れて逃げろってな!」

僕はキッコさんに腕を掴まれ、誘導されて店のドアを出る。

するとそこは2階で、急いで階段駆け降りた。

店の外に出て2階の2つある出窓をみると同時に、店の看板が僕の眼に飛び込んでくる。

その看板にはダイニング&バー Cu‐bi

と、書いてあった。

しかも、人間の女で、9つの尻尾が生えているイラスト入り。

「Cuーbi…九尾?なんかそのまんまじゃないか!」

それとなくわかるサインを出している看板に僕は驚いた。

そしてまた、上を見上げると、出窓が赤く光っている。

そして窓ガラスが一瞬膨らんだかと思うと、バリーン!と凄い音を立てて割れる。

「うひゃーっ!」

僕は思わず声を上げる。何だか大変な事になっているようだ。

僕は、あの二人がどういう戦いをしてるか知りたい所だけど、危険なため、それを見る事は出来ない。

「どうなってるんだろう?」

「さあの?ただ、月蓮は手強いようじゃな。藍様が押されとるようじゃ」

「えっ!キッコさん。中の様子が分かるの?」

「詳しくは分からぬが、藍様があたいの心に伝えてくれる。それにな。もうこの場から消えろじゃと」

「心が通じてるの?」

「そう。以心伝心ってやつじゃな。それよりも行くぞ。あたいと手を繋げ?健太郎」

「うん」

「よし!ノーマクサンマンダーボダナンテンイキサラツソワカ」

キッコさんがそう言うと、キッコさんの手を繋いでいた僕も一緒に跳んで、一瞬にして証乗寺の前に戻って来た。

「さあ。戻って来たぞ健太郎」

証乗寺の周りはもう、静かだ。

「うん。う言えば、ポン太郎さん達は?どうしてるんだろう」

「ちょっと待て?」

キッコさんがこめかみに手を当てる。

「通じんな。おそらくは寝てるんじゃろう」

「寝てるんだ。もう、人気もないし、帰りましょうか」

「そうじゃな」

・・・その日の昼。

何となく、昼のニュースをみていたら、地方ニュースの所でなんと、バーCuーbiの火事のニュースをやっていたのだ。

何でも、所有者と見られる人と連絡が取れないのと、そういう場合には、炎に巻き込まれるか何かで上がるであろう、それらしい遺体も見つかっていなく、消息不明である事が、ニュースとしての材料となったようだ。

「九尾の藍ってどうなったんだろう?」

「藍様か?逃げてるんと違うか?」

「もしかして通じる?」

「やってみよか?ちょっと待て・・うん、だめじゃな。姿を眩ませている」

「完全に逃げてるんだね」


続く



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