妖怪騒動
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「ツブヤイター」なるSNSのコメントが、記載されている。
その反応は様々だけど、特に「マジかw」とか「本当に居んの?」とか「妖怪カワユス」などのコメントが多く、
「ぬいぐるみの時点でやらせだろ」というのもあったけど、否定的な意見は少数だった。
「周りの反応は悪くないみたいだね」
「そうかもね?ねぇ。健太郎。その夜、どの位の人たちが居たの?」
「50人位は居たかな?」
「50人?結構居るのね。キッコさん達、結構話題になってるんだわ」
「そうかもな?地域コミュニティーの新聞に載ってから約2週間。深夜にも係わらず
50人もの人たちが証乗寺の周りにいるのだから」
「キッコさん達は、後どの位活動してくれるのかしら?」
「活動って・・・美徳。キッコさん達は、妖怪としての本来の性分でやって居るような
ものだと思うよ?人を化かしたい時に化かし、やらない時はやらない。そんな気がする。」
「じゃあ、神出鬼没ってやつ?」
「そうだと思う。キッコさん達の、人を化かす行為が、図らずもこの木皿津への人集めに一役買うよう様になって良かったけど。
あんまり毎日だと、その、有り難みもなくなるだろうし、すぐに飽きられるよ?」
「・・・そうなのかもね?あたしも今考えてみたのだけど、あたし達現代人
って一気に持ち上げて一時期は流行るけど、廃れるのも早いものね?」
「でしょ?ましてや、それで単なる騒動で終わるならまだいいいけど、結構公になって
本当は架空上や伝説でしか無かった妖怪が実在したとあっちゃあ、何か問題も起きそうだし」
「問題かぁ・・・」
「うん。僕が思うに、妖怪が実在するって事が世間が広く認めてと社会的にパニックに成るんじゃないかと。だから、程々がいいっつーか。僕達は認めちゃってるけどね。・・・そうだ。美徳」
「なあに?」
「さっきは、僕が思い出しておくと言いながら駄目で、キッコさん達の映像がある所を閃いて見つけたのは美徳だろ。ありがとうな」
「別にいいわよ。健太郎はパソコンを持ってないから、インターネットテレビは、想像付かなかったろうしね?」
「でも、お陰でいいもの見れたよ。・・・じゃあ悪いけど、そろそろ帰るよ」
「ご飯、食べていきなさいよ。健太郎、ひとり者じゃない?」
「いや。毎回悪いよ。少しは、料理を自分で作ってやらないと。何時まで経っても駄目だから」
「そう。・・ひょっとして、そんな事言いながら、キッコさんが料理作るのを手伝ってくれて居るんでしょ?」
美徳はうつむいて、発する声は小さかった。
「そんな事ないよ!キッコさんから積極的に、料理を作る事なんて殆ど無いんだからな?そりゃあ、
少し、皿洗いとかして貰ったりはしてるけど」
「して貰ってるんじゃない!・・あたしさ。最初は、健太郎がお父さんを亡くして、暗くなってたから、キッコさんが現れた時は、健太郎にとっていい影響になればなーって思ってた。
でもさ、今は違うの。健太郎がキッコさんの方にばかり気が行っているみたいで、健太郎が
遠ざかっていくみたいで嫌なのよ。
あたし、前に健太郎の事が好きって言ったよね?健太郎はあたしの事、どう思っているの?」
「そりゃあ・・僕だって美徳の事が好きだ。幼なじみだし、唯一の気兼ねなく話せる相手なんだし。
ちゃんと気づけなくって済まなかった」
僕は、美徳のだすサインに、どうして気が付けなかったのだろうと思った。
大切なひとがこんなに身近に居ると言うのに。
でも、ごめん。今は、これ以上は無理だよな。
何か、不器用だって自分でも思うよ。
「やっぱ悪いけど、家に戻るよ。キッコさんを監視しないとだから」
「そう?それじゃバイバイ」
美徳の言い方が何か冷たい。
何か知らんけど、まずかったんだな。
僕は美徳の家を後にした。
自宅に戻るとキッコさんが出迎えてくれた。
「お帰り。健太郎。あたい、腹ペコじゃよー。何か作ってくりゃれ?」
「何か作ってって?そう言われても、冷蔵庫の中をみなきゃあ・・・」
僕は帰るなり、冷蔵庫を開けて見た。
すると、冷蔵庫の中はほぼ、空っぽ。
「・・・キッコさん。あいにく食材がないよ。・・コンビニ弁当を買うから。それで我慢して」
「あちゃー!そうなのかー?食材があれば、あたいが調理するのにー」
「・・・それはどうも」
「まだ、店は開いているんでないか?」
キッコさんにこう言われて、時計を見る。
すると時計の針は夕方の6時を指していた。
買い物にはまだ間に合う。
「じゃあ、二人で買い物をしますか?」
「いいのか?じゃあ、うちを連れてってくれ」
そんな訳で、キッコさんと買い物をする事になった。
そして、買い物をする時は、あくまでも人間の姿を維持する様に、注意した。
服装は、美徳が前にコーディネートした服を着て貰った。
そして、スーパーにつく。
僕はショッピングカートにバスケットを入れて、買い物を始める。
暫く歩くと
「うわぁー!朝市とはえらい違いじゃあ!」
と、結構大きな声を出して驚いていた。
「わわっ!声がデカいって!」
「済まぬ。大きくて、綺麗なもんでつい興奮してしもうた」
僕は周りを見た。
すると、おばさん達の殆どは、肩を揺らして笑っている。
「ああ・・」
僕は恥ずかしくなった。
それで、ちょっと俯いていると、キッコさんが何故かふらふらし出す。
「あぁー。あっちからいい香りがするぅー」
キッコさんが言う香りの有る方に歩き出した。
歩いた先は、果物売り場で、バナナやら苺とかが並ぶ。
そしてキッコさんは、苺の前で止まった。
「この、苺の香りに釣られたんかい・・・」
僕も苺の前に行く。
そして、その苺のパックは、1パック498円と、学生の僕には、かなり高価。
キッコさんをみると、目を輝かせて食べたそうな顔をしている。
出来れば買って上げたいが、それは無理。
だからそれをキッコさんに言うしかない。
「キッコさん。悪いけどそれは買えない」
「駄目なのかえ?」
「ちょっと高いんだ。今回は我慢して」
「高いのか?」
「うん。だからダメ」
「それじゃ、替わりになるものは無いのかいな?一粒でも入ってる奴とか」
「ひと粒でも入っているもの?」
僕はキッコさんにそう言われて
瞬間的にはプリンアラモードとショートケーキが思い浮かんだ。
でも、何かが違う。
キッコさんを見てみる。
妖怪、和風。
それでもって苺?
様々な連想をした後、ようやく一つ思いだした。
あれがあったぞ。
「キッコさん。いいのがあるよ。こっちに来て。一緒に探しましょう」
「ほいきた」
僕は、キッコさんを後ろにつかせて、肉売り場、魚売り場、惣菜コーナーなどを素通りして、お菓子のコーナーにつく。
その中でも、和菓子のセクションにそれはあった。
「あった。これですよ。キッコさん。苺大福!」
「苺大福?大福と苺?」
「そうです。大福の中に苺が丸々一個入ってるのです」
「そりゃあいい!沢山買え!沢山!」
「それはダメ!2個まで!」
「あちゃー!駄目なのかぁ?」
「っ!僕は学生だよ?結構制限があるんだから。勘弁して下さい」
「それは残念じゃが、仕方ないか。じゃあ、戻って買い物しよう」
僕は黙って、もと居た野菜売り場まで、キッコさんを連れて戻る。
野菜を買い、魚は干物。これはキッコさんのリクエスト。
そして、豆腐のコーナーに来た。すると
「おや?何か懐かしい匂いがする」
キッコさんは一直線にそれの匂いのする方向に向かう。
「今度はどうしたの?」
キッコさんはスーッと冷蔵什器の方に向かう。
そしてそこにあったものは油揚げだった。
「油揚げ!?」
「そう。油揚げじゃ。これも買ってくれ?」
「はい・・・」
僕は手に油揚げを持ちながら思った。
狐って本気で油揚げが好きなんだなと。
・・・買い物が終わり、帰路につく。
そして、家に着いた。
するとキッコさんが言う。
「今日は、あたいにご飯の支度を全部、やらせてくれ」
「えっ?いいんですか?」
「ああ。いいとも」
こう言ってくれたので、今回はキッコさんが作る事になった。
それで、ご飯は2合。これは、米を研ぐのも炊くのも僕がやる。
スイッチ一つだし。
そして、主にキッコさんはおかずの担当。
アジの開きや味噌汁。
そして、僕が唯一出来てキッコさんに、
キッコさんに教えた、スクランブルエッグが手際よく作られた。
そしてそれらが食卓に並ぶ。
美味しそうだ。
「いただきます」
キッコさんと二人で手を合わせ、食事に入る。
食事中、僕はキッコに聞いてみた。
「キッコさん。食事終わったらまた今日も、人を化かしに出かけるの?」
「おう。出かけるぞ。・・・まさか、今日も見に行くのか?」
「その積もりです。キッコさんの言う、九尾の狐の藍ってのが気になるので」
「藍様がか!?健太郎。お前ももの好きじゃな!藍様は、人の心を常に読む。場合によってはただでは済まなくなるぞ?それでいいんかい!?」
「はい」
「そうか。それじゃ、また丑三つ時にあの場所へ来るが良い。あわせてやるから」
「はい」
「では、飯も喰ったし、あたいはひと眠りするよ。健太郎も仮眠しとけ?」
「そうします」
・・・僕の目が醒めて、押し入れを確認すると、キッコさんはもう居なかった。
そして僕は、木皿津駅周辺へと向かう。
着いた時にはもう午前2時を回っていて、時々悲鳴が響き渡って居た。
「おー。やってるやってる」
何だか僕も馴れたものだ。
そして、悲鳴の聞こえた現場に向かう。
すると、二人組の男が横切る。
その後を一つ目小僧が追いかけていた。
何だかこれじゃ、人を化かすと言うより鬼ごっこだ。
昔話とか童話とかでなら、人は驚いて腰を抜かして、怖がって逃げ出したもんだが。
これって時代の変化だろうか?
大して驚かれ無いし、寧ろ妖怪が人にからかわれて居る様な感じさえする。
僕は、着ぐるみ妖怪達が良く出るスポットまで来た。
その辺りを数分うろつくと、見覚えのある人影を発見した。
あの紫色の巫女服は、牡丹さん?
僕は、声をかける事にした。
「今晩は。牡丹さん。久し振りです。どうしたんですか?」
「!?・・誰かと思ったら、五井くんよね?君こそ、こんな時間にどうしたのよ?」
「いやぁ。キッコさんの様子を見ようと」
「そうなの?あたしは、父の仇が現れたって情報があったからね?実際、気配あるからね」
「えっ‥」
僕は、牡丹さんの情報の早さに驚いた。
4体目が現れたのは、つい昨日の事だからだ。
僕は、こんな牡丹さんが少し怖くなり、離れる事にした。
だが、牡丹さんは付いてくる。
「牡丹さん。何故こっちに来るの?」
「そっちから気配がするのよ!それに、ここでは月蓮って呼んで!」
僕と月蓮さんが向かった先には、子泣き爺がいた。
子泣き爺といえば、昨日は九尾の狐、藍が化けていたのだけど。
役割というのか?そうそう他のに化けるとは思えない。
もしかして、月蓮さんには分かるのか?
最初は小走りだったが、段々と早足になる。
子泣き爺に近づくと、月蓮さんの手には、いつの間にか呪文入りのあの球体が握られていた。
どこから出したんだ?
そして、距離にして15メートル位に近づいた時。
月蓮さんは球体を子泣き爺に向かって手から勢い良く放つ。
「ぎゃんっ!」
放たれた球体は、子泣き爺の身体にヒットした。
ボボンッ!!
という音を立て、子泣き爺の変身が解ける。
それで正体を現したのは、キッコさんであった。
「キッコさん!?何で子泣き爺がキッコさんなの!」
予想外の展開に、驚いた僕は、思わず声に出して叫んでしまう。
「痛っつー・効いたー!」
姿を現したキッコさんは、当たった箇所を手でさすった。
そして、こちらに気付く。
「ほぇ?健太郎に月蓮じゃあないか!」
あれ?キッコさんてば、月蓮さんの姿がみえてる?
そう言って居る間に、月蓮さんはキッコさんに近づき胸ぐらを掴む。
「何であんたなのよ!あの波長!藍と同じものだったのに!」
「いやぁ。それはだ。月蓮さん。藍様から、波長を合わせるように言われなぁ。合わせたまでじゃ!」
「ッ!藍の奴。やるじゃない!」
「そーいや。今日は何で、子泣き爺をキッコさんがやってんの?僕はてっきり、キッコさんは同じ傘お化けかと思ったのに」
「健太郎。別に、誰が何をやるかなんて決まっておらん。代わり番こで
様々なものに化けるがな?」
「代わり番こ?」
「そうじゃよー?同じのに化ける日もあれば、違う日もある。普通じゃがのぅ?」
「ちょっと。キッコ」
「何じゃ?月蓮さん?」
「あんたさぁ?人間と妖怪のどっちの味方な訳?」
「月蓮さんの口調が・・・」
「はい?どちらの味方でも無いぞ?しゃばに出てからは、面白おかしく生きてるぞ?特に人間に迷惑はかけてないがなぁ?」
俺の事は無視された?
暫くこの場に留まっていたら、一般男性が此方を見つける。
その気配に気の付いた僕たち3人は一斉に男性の方へ目を向ける。
すると、男性の声は聞こえないが、その行動から、誰かを呼んでいる様子だった。
少しの間、僕たちはその場にいて様子を見る。
すると、声が聞こえた。
「こっちで巫女と新しい妖怪が睨みあってるぞォ!」
こう、聞こえた。
続く




