もう一人の妖怪
その現場に着く。すると其処には。
僕の目の前から居なくなった、ろくろ首と子泣きじじいが、男うつ伏せにして、背中に乗っかり
その男を取り押さえていた。
取り巻きには、地元のロックバンドかぶれ?の、格好をした人達もいた。
僕は、その現場に近づいた。
そしてその男の手の直ぐ側にはカッターナイフが落ちていた。
そしてそのカッターナイフをTVクルーの一人が拾い上げる。
それらの様子をカメラマンが撮影していた。
そして、もがいている男の顔がライトで照らし出される。
そして、僕はその男の顔を見た。
その男は、さっきすれ違った、まじめそうな男だったのだ。
「人は見かけによらないな」
そして、この騒動を察知してか、他の妖怪の着ぐるみを追いかけていた人やその辺を歩いていた人達までもが集まって来た。
また、残りの妖怪の着ぐるみ2体まで集まり、4体全てがそろう。
それに気のついた周りの人達。
子泣きじじいと、ろくろ首をゼスチャーで、退く様に促し、代わりに男をロックバンドかぶれの男達が抑える。
そして残りの風神と傘お化けを観客が押しながら誘導して、ほぼ真ん中に集めた。
そして、TVリポーターが質問する。
だが、それぞれの妖怪の着ぐるみたちは、喋る事はないみたいで、4人?でもって身振り手振りで相談らしいのをした後、一列に整列したかと思うと、
ものすごいスピードで、向こうへ走り去ろうとした。
この行動にTVリポーターを始めとしたみんなが驚き、動揺する。
その隙に何か「バッヒューン!」と音を立てた感じて走り去る。
その速さと身のこなしに、みんなが呆気にとられた。
「・・逃がすなっ!追えーっ!」
TVクルーの一人が声を掛ける。
そして、クルーのひとり、観客のひとりが慌てて走り出し追いかける。
数十秒後。
何とか二人で、25メートル位まで追いついた時。
前を走っていた妖怪達は、一瞬強い光を放ったかと思うと、それを追いかけていた二人の目の前でスッと消えた。
「きっ!消えた!?」
この光景を目撃した二人。
しばらくすると、みんなが集まる場所に二人は戻って来た。
TVリポーターが撮影する前に、どうなったかを聞く。
すると、二人は声を揃えて妖怪の着ぐるみ4つが目の前で消えた事をみんなに伝える。
そしてこの時には警察官も到着し、身柄を引き渡していた。
また、着ぐるみが消えた事を疑う者はほぼ皆無で周りは騒然とし、着ぐるみ
は、格好こそ着ぐるみではあるけれど、実は現代に生きる妖怪であるという結論に達したのだ。
そしてその事を僕も聞く事になった。
そしてその朝。
僕は、ワイドショーとかを片っ端からみたのだが、話題が出ない。
新聞は取ってないからこれもダメ。確認出来ない。
地域新聞は発行がまだだし、これも確認出来ない。
そして、その当事者たるキッコさんはと言うと。
僕は押し入れを開ける。すると、キッコさんは軽く寝息をたてて寝ていた。
「呑気なもんだよ…」
僕は、いつ起きるか分からないキッコさんを待つ事にする。
「久しぶりに格闘ゲームでもするかな!」
・・・。
「ふぁー。お早う。健太郎」
キッコさんが起きてきて僕に挨拶する。
「お早う。キッコさん。やっと起きたか。早速だけどキッコさん。ちょっと質問があるんだ」
「質問か?どんな質問じゃ?」
「なんて言ったら、いいのかな?キッコさん達の生業、人を化かす騒動でさ?普段は3人の筈なの
に、昨日は4人だったよね?後の一人は誰なの?」
「あちゃー!?見ていたのか?健太郎!」
「ええ。見てましたよ!隅々まで!しかしさぁ、その『あちゃーっ』とか言うのやめてもらえます?」
「あちゃー!どうしてじゃ?」
「どこで覚えたのか知らないけど、おちょくられて居るような気がして、ならないんですっ!」
「あちゃー!って。何だか気に入ってしもうてなー?」
「うがーっ!なんっかハラたつー!」
「『短気は損気』やぞ?健太郎や?」
「キッコさんが言うかっ!兎に角、4人目は誰なの?説明して!」
「大ざっぱじゃのう・・・」
「・・・っ!」
僕の手が、思わず上がる。
「まあまあ。そう怒るでない。・・・もう一人はな。あたいらの首領、藍様じゃ!」
「藍さまぁ!?誰それ?」
「知らんのか?九尾の狐である藍様を?」
「うん!知らないっ!」
「やれやれ。藍様はな。千年の時を生きる、大妖怪様じゃ!」
「そんな偉そうなのが、何でキッコさん達と行動を共にしたの?」
「さあな?」
「『さあな?』って聞いてないんですか?」
「うむ。ただ『時には人間を化かしたい』と、突然藍様の方から現れたのじゃ」
「化かしたいって、それだけ?」
「そうじゃよ。コレに理由はいらぬ。本人のみぞ知る所なのじゃからな?」
僕は、そんな大妖怪と言われる程のものが、理由もなしに現れるとは、到底考えられなかった。
何か埒があかない。
「キッコさん。ちょっとお留守番しててくれますか?夕方には帰るので」
「何じゃあ?改まって。いつもの事じゃろ。いっといで」
「・・それじゃあ、行って来ます」
僕は、何か情報を持っていそうな美徳の家を目指す。
「ごめんくださーい」
「はいー?どちらさまでしょうか?」
この声は、美徳のお母さんだな。
「五井ですけど。美徳さん居ますか?」
「いるわよ。ここに呼ぶから、ちょっと待って居なさいね」
そう言われたので、僕は、玄関で待つ。
美徳のお母さんは、2階に上がって、美徳を呼んでくれている様子だ。
そして、程なくして、美徳は玄関まで降りて来た。
「こんちゃ。健太郎どうしたの?」
「ちょっと調べたい事が有って。美徳に協力して欲しいんだ」
「分かったわ。じゃあ、上がって?」
「おじゃまします」
僕は美徳の家に上がる。
「ねぇ?調べたい事ってナニ?」
「キッコさんが九尾の狐とか言って来てさ。それを知りたいんだよ」
「そうなんだ。ちょっと待ってね」
美徳は、ノートパソコンの電源を入れる。
美徳は、高校生であるのに、パソコンを持っていて使いこなせるのは、凄いとは思う。
なんて考えて居ると、美徳は直ぐに見つけた。
「でたよ?九尾の狐の事。これだよね?」
「もう、探し当てたんだ。早いね。ちょっと画面見せてくれる?」
「いいわよ」
美徳は、パソコンの前を譲ってくれた。
「何々?九尾の狐とは、中国神話の生物。9本の尻尾を持つ妖狐。単純に九尾または複数の尾を持つ狐の総称として尾裂狐とも呼ばれる・・・」
しばらくは他の事も読み、九尾の狐がどちらかと言うと、悪しき霊的存在として認識されている事を知る。
「しかし。記述の中にある『赤ん坊のような声で鳴き、人を喰らう』ってのは怖いな。あくまでも伝承に過ぎないけど」
「九尾の狐ってそんななんだ。初めて知ったわ。キッコさん、その九尾の狐の事を自慢でもしていた?」
美徳が僕に質問する。
「うーん。自慢していたかな。誇らしげな言い方はしていたよ」
「ねぇねぇ。もうちょっと調べてみましょうよ?だから、健太郎はどいて?」
「ん」
「僕は美徳にパソコンを譲る。
「さーて。後はどんなのがヒットするかなー?」
美徳が検索をすると、
「狐の嫁入り」というタグを見つけ出した。
「ちょっと開いてみようか。どんななのかな?」
美徳は興味深々だ。
「・・これって天気雨の事なの?つまらないなー」
「もっと下を見てみようか」
僕はマウスホイールを下に回す。
画面が下に流れ、みるとまた幾つかの狐の嫁入りについてのタグがあった。
僕は、その中の一つをクリックする。
するとそこには、女狐が人間の男に恋をし、子を宿す。
という記述も見られた。
「キッコさんが、この記述と同じ事をして居たような?」
「キッコさんは、そんな事言っていたっけ?」
「えーと。ほら。キッコさんと3人で食事した時、江戸時代の話しになったじゃん!?ご飯の事とか。
その時には人間と一緒に生活していた事もあるって、言っていたぞ」
「そうだったっけ?」
「そうだよ。その時にキッコさんが実はキクって名前だって分かったし、人間に化けて生活してたけど、
ばれて追い出されたって話し」
「アハハ。忘れちゃってた」
「そうなんだ。でも、ありがとな。おかげで九尾の狐の事が分かったよ」
「どういたしまして。・・じゃあ、せっかく来てくれたんだし、買い物に付き合ってくれる?」
「まだまだ時間あるし、いいよ」
こうして、僕は美徳の買い物に付き合ったのだった。
買い物袋を持って美徳の家に帰る。
「何か忘れてるんだよな?」
「何か忘れてるってぇ!?健太郎はあたしの事、言えないじゃない!」
「そうなんだよなー。面目無い」
「じゃあ、あたしんちに荷物置きに帰るまでには思い出してよ?いいわね?」
「ああ。なんとか思い出しますとも」
そして、美徳の家に戻る。
僕はこの間に、キッコさんの事でいろいろ思い浮かべて、すっぽり抜けた部分を要約思い出せた。
美徳の家に着き、荷物を置いて再び、美徳のパソコンで検索をして貰う。
「健太郎。何か思い出した?」
「ああ。思い出したよ。キッコさんたちのこの間の夜の騒動。テレビにも新聞の千葉県版でもやって無い。それで検索掛ければ出ると思ってな?」
「・・テレビが居たのにテレビでやらない?うーん。・・そうだそれ!きっとネット中継!」
美徳は閃いて、手をパン!と叩く。
「健太郎。待ってね。今、出してみせるから」
そう言って美徳がパソコンのキーを「木皿津 妖怪動画」で検索する。
するとYou○ubeに、投稿が僅か2時間前の動画があった。
「きっとこれよね?」
美徳はその動画のバナーをクリックする。
そして、動画が流れ始めた。
その動画は約12分。
その中で、リポーターによる解説から始まる。
数分して、カメラは着ぐるみの妖怪たちを捉えていた。
また、動画の中では子泣き爺がカメラの前に現れて、堂々と化かす姿なんかも映っていた。
それもはっきりと。
それから、僕もあの時に目撃した、乱暴者を捕まえた映像まであった。
「ありゃ。妖怪に扮したキッコさんたち、ばっちり映ってるじゃん」
「夜だったのに、随分はっきり映ってるのね~?」
美徳は怪訝そうな顔をした。何が不満なんだ?
「技術の進歩ってやつじゃね?」
僕は美徳にそう答えた。
そんなこんなで動画も進み、妖怪が整列する場面になった。
すると、画面上では、ちょっとゴーストを残す感じで消える。
「逃がすなっ!追えーっ」
と、あの時の声も入っている。
それから、画面が凄く揺らいだ。
「あー。あの時のカメラマン。とっさに動いてたんだなぁ」
「そんなに凄かったの?」
「そりゃあもう。キッコさん達は『加速装置!』って言わんばかりに、スゲー速さで立ち去ったんだ」
「ふーん?」
その後字幕で、
「この着ぐるみの妖怪達は、本物かも知れない。我々は追って調査する」
と言う文字で、締めくくれられていた。
続く




