飾らないキミが好き
「なんであんな美人でナイスバディ振ったのに
あの子はOKだったんだ?」
〔あー?〕
「だいぶ噂ってーか 気になってるやつ多いぞ」
〔別に…〕
「あーあれだ 気まぐれだな?美人ばっかりで飽きたんだろ」
〔…まーな〕
[…んだ?…のか?]
「ん?大輝のやつ、誰かと話してんのか?」
〔なんだ?〕
[よぉー]
〔誰かいたのか?〕
「お前の彼女」
〔は?〕
[どうしたんだ?入らないのか?って聞いたら
用事があったのを思い出したからって、走ってどっかいったぞ]
〔それを早く言えよ!!帰るわ〕
「おい!雄馬!?」
迂闊だった
今あいつが一番聞きたくない話題であろう話を聞かれてしまった
っていうか早くないか!?あいつの仕事が終わるのはもう少し後になるはずだったのに…
俺の元彼女は美人でスタイルがよかった
今の彼女を選んだのには理由があったんだが
あいつはその元彼女のことも知っているから
どうして自分が選ばれたのかって、
みんなの噂やたまに嫌がらせされることもあって
自分は俺に釣り合わないのにって
悩んでる姿も見てきたってのに
その都度、俺なりに説明してたつもりだったんだが…
あいつ、周りの言葉をすげー気にしてたからな…
俺の気持ちさえちゃんとしていれば大丈夫だろう
そう思ってたのに
付き合えたことが本当にうれしかったのに
友達の前で、照れ隠しのつもりで言った一言を
聞かれるなんて
俺は走って車まで行って彼女を追いかけた
家に向かっただろうから
彼女が歩いているであろう道を探す
…いないな
どこかで追い抜いたか…?
ここで待ってたら来るだろうから
もう少し待ってみるか
その間にも連絡を何回も入れているが
既読もつかない
あー…どこ行ってんだよ
とっくに着いていてもおかしくない時間なのに
電話も出ないし…
頼む、話だけでもさせてくれ…
【美帆point of view】
そうだよね
気まぐれだよね
雄馬くんは優しいから
私が忘れようと思って伝えた告白に応えてくれただけだったんだね
うまくいくわけないと思ってたの
雄馬くんの元彼女さんは、女の私から見ても
惚れ惚れするくらい綺麗な人だったから
ただでさえモテモテだし
それでも…気持ちだけは伝えたかった
憧れから始まって、話す機会が増えても
やっぱり手の届かない人だと思ってたから
それなのに
OKしてくれて…自分が一番驚いた
何回も聞いたの
本当に私でいいんですか?って
今なら諦められますから遠慮せずに振ってくださいって
うまくいったのが噂になって
なんであんな子が?とか
たまにはぶすとも付き合いたくなったんじゃない?どうせすぐに別れるよ、とか
聞こえるように言われることも多くなって
少しつらくなってきて
もう別れてもらおうかと思って
早く仕事を終わらせて、彼の部署に迎えに行ったんだけど…
なにも逃げなくても、その場で
〈なら別れましょう〉って言えば済む話だったのに
はぁ…逃げてきてしまった
わかっていても、彼から別れを告げられることが
怖くなってしまって
あ…車が停まってる
来てくれたんだ
でも、もう少しだけ待ってください
別れます
別れますから、あと1日だけ…
【雄馬point of view】
遅ぇ…
いくらなんでも、遅すぎるだろ!?
既読もつかねぇ…何してんだよ、あいつ…
ん?電話だ
んだよ、大輝か
〔なんだ?どうかしたのか?〕
[確保したぞ お前の彼女]
〔なに!?どこにいる!?〕
[▲駅のスタボだ 早く来いよ
逃げ出そうとして困る]
〔すぐ行く〕
なんで駅なんかにいんだよ…
駐車場…よし!空いてる
車を停めた俺は走ってスタボに向かった
あー…ほんとだ 捕まってんな…
小さくなって座っている
〔大輝悪いな 助かった〕
[いいよ たまたま見つけただけだから じゃあ俺帰るわ]
〔おう、また月曜な〕
〔美帆、ごめん〕
〈いいんです わかっています〉
〔違う、あれは〕
〈あの、明日だけでいいんです
一緒に過ごしてもらえませんか?〉
〔え〕
〈駄目なら…いいですから、言ってくれれば…〉
〔明日だけもなにも、別れる気なんかないよ〕
〈え…?〉
〔帰ろう ちゃんと説明する〕
〈…あ、あの〉
〔どうした?〕
〈…冴島さんにコーヒーごちそうになったんです…
お礼…してなくて…〉
〔あとでちゃんとフォローしておくから 行こう〕
〈…はい〉
【美穂point of view】
別れる気はない
…って言ったよね
雄馬くんの車で彼の家に
何回かお邪魔したことはあるけど…
落ち着かないな…
〔あのな 俺がなんで美帆を選んだのか、だけど
さっきのは…その、照れ隠しっていうか
ほんとのこと言うのが恥ずかしくてつい言っちまっただけだ 美帆の終わり時間がもう少し後だと思って油断してた 本当にごめん〕
〈いえ…〉
〔それでな 俺を信じて、少し目をつぶっててくれないか?〕
〈…え?…はい?〉
なに?急になんで!?
〔いいから…ほら〕
…言われた通り、目を瞑る
お化粧?されている?
髪も触られてる 何を…しているの…?
〔いいぞ 目、開けてみ〕
〈え…だれ…〉
そこには、見たこともない人がいて
信じられないんだけれど、どうやら私のようだった
〔これで、俺のとなりに自信を持っていてくれるようになるだろ?〕
〈…〉
〔美帆?〕
〈…再現できません〉
〔俺がやってやる 毎日〕
〈毎日!?〉
〔本当はさ この姿も他のやつらに見せるの嫌なんだ でも、自信持ってもらうほうが先だからな〕
〈…雄馬くん〉
〔ん?〕
〈私がメイクしたら化けるって分かってたからOKしてくれたっていうことですか?〉
〔違う …好きだから〕
〈え?〉
〔美帆と話してると安心するんだよ〕
〈…?〉
〔そういうとこ〕
〈あ、あの…意味が…〉
〔打算がないところ 変に媚びてこないところ〕
〈…うーん〉
〔わかんないなら、そのままでいてくれればいい〕
〈あの…せっかく綺麗にしていただいたのに、すみません 落ち着かないです…〉
〔いいよ 今日はもう風呂入ろ〕
〈はい〉
雄馬くんがお風呂の準備をしてくれてる間に
私は夜ご飯の下拵えをする
雄馬くんは自炊する人だから
冷蔵庫に豊富に食材が入っている
何を使っていいかを確認したら
親子丼が作れそうだったから
お味噌汁と卵をとじる前までの分を作っておいた
〔風呂、そろそろできるぞ〕
〈はい、雄馬くんお先どうぞ〉
〔一緒に決まってるだろ〕
〈え!?〉
〔…それ、落とせるのか?〕
このメイクを落とすのって、何かテクニックがいるの…?
どうしよう…
〈…うぅ〉
〔決まり 準備しとけよ〕
〈…はい〉
初めてだった いつも別々に入っていたから
どうしよう…恥ずかしすぎる…
〈もう!!普段の洗顔料で落ちたじゃないですか…〉
〔落ちるだろ、そりゃ〕
〈…落とせるのかって聞かれたから…違うやり方でもあるのかと思ったんです…〉
〔一緒に入りたかったんだよ 悪かった〕
〈…いいですけど…髪の毛まで乾かしてもらって…
ありがとうございます〉
〔いいんだよ 飯食おうぜ〕
〈あ、はい 今やりますから…〉
〔座ってな 俺がやる〕
〈ありがとう…すみません〉
雄馬くん、いつも料理してるから手際よく卵をとじていく
ふわふわな親子丼が目の前に…
〈おいしそーう!〉
〔召し上がれ ま、俺は卵やっただけだけど〕
〈ありがとう!いただきます!〉
あーおいしい…
〔うまいな〕
〈おいしいです ふわふわー〉
〔…〕
なんか…見られてる、ような…
〈どうか…しました?〉
〔可愛いから〕
〈!!や、やめてください…〉
〔俺、思ったことどんどん言っていくことにしたから〕
〈…どうしてですか?〉
〔何も伝えないと、美帆がいなくなるから〕
〈すみません…〉
〔何で美帆が謝るんだよ 俺だろ悪いのは〕
〈そんなこと…〉
〔美帆がいてもいなくても、言葉にしたらいけないことってあるんだよな 本当にごめんな〕
〈気にしてませんから〉
〔でも〕
〈え?〉
〔勝手に別れようとするのは許さないから〕
〈…すみません〉
〔あ、そうだ 明日のことなんだけど〕
〈はい〉
〔何か準備でもしてくれたのか?明日だけでも、
なんていうから気になってさ〕
〈はい!〉
〔そっか これ以上は聞かないでおく
でも今日は帰さないから〕
〈…はい〉
明日はね…あなたの誕生日だから
ずーっと欲しがってたもの
準備してあるの
どうしても渡したかったの
よろこんでもらえるといいな…
【雄馬point of view】
美帆が側にいてくれることだけでも、
誕生日プレゼントとしてはうれしいんだけどな
何か準備してくれてるらしい
楽しみにしておこう
〔美帆ー〕
〈はい〉
〔こっちおいで〕
〈…はい〉
〔今日はさ、こうして抱きしめて寝たい〕
〈腕、疲れませんか?〉
〔大丈夫だよ〕
〈ありがとう…うれしいです!〉
〔なーそれなんとかなんない?〕
〈?どれ、です?〉
〔敬語だよ 俺たち同じ歳なのに〕
〈あ、えーっと…そうですね 追々…〉
〔少しずつでいい〕
〈…うん〉
〔じゃー寝るか おやすみ〕
〈おやすみなさい〉
離れることにならなくて本当に良かった…
こうして腕枕しながら抱きつかれて寝てる美帆を見て、腕は痺れてきたけど 幸せだーって思うんだ
〔おいおい…これ…〕
美帆が渡したいものがあるっていうから、
美帆の家に来たんだが…
〈お誕生日おめでとうございます!
雄馬くん、欲しがってたから…〉
〔いや、確かにそうだけど…高かったろ、これ〕
〈残業頑張りました!〉
〔…頼むから、無理しないでくれ ありがたいけど、これのために美帆が無理したと思うと…〕
〈うれしかったんです 雄馬くんが付き合ってくれたことも、私が残業してたら迎えに来てくれたり
日頃、優しくしてくれることへの
少しですけど、お礼がしたかったんです〉
俺の欲しがってたブランドの財布だった
これを買うために自炊して、金貯めてるところだったんだ
まさか、付き合う何ヶ月も前にちょっと話したことを覚えててくれてるなんて思わなかったから
うれしかった
でもあれだな…
美帆の誕生日プレゼントのハードル上がったな
〔ありがとな…大事に使わせてもらう〕
〈よかった…!よろこんでもらえたならうれしい〉
〔美帆〕
〈はい…どうしました?〉
〔ありがとう、本当に〕
抱きしめたまま、離れたくなかった
〈雄馬くんの好きなケーキも買いに行きましょう〉
〔いらない〕
〈え?〉
〔美帆がいてくれればいい〕
〈雄馬くん…〉
〔俺んちに連れて帰る 一緒に住もう?〕
〈まだ早い気が…〉
〔やだ、無理 一緒に住む〕
〈もう…〉
〔準備して 早く!〕
〈わかりました…あっち向いててください〉
〔なんで?〕
〈下着も…ありますから…〉
〔見せて?〕
〈駄目です!!〉
〔冗談だろー怒るなよー〕
荷物を準備した美帆と家に帰ってきた
ケーキも食べたがってたから、買ってきた
〔美帆、あーん〕
〈…雄馬くん どうしたんですか?〉
〔なにが?〕
〈何か…いつもと違います〉
〔こっちが素なんだよ 嫌か?〕
〈嫌なわけないです…!〉
〔これからはさ 俺が周りに何も言わせないから〕
〈…ありがとう〉
〔今までごめんな〕
〈もう…大丈夫ですから はい、あーん〉
〔…うまー ほら、美帆あーん〕
〈おいしいです!ありがとう〉
〔俺の好きなものを、美帆も好きだって言ってくれるのがうれしいんだ〕
〈わかります その気持ち〉
〔そういうの、少しずつ増えていくといいな〕
〈はい〉
〔美帆の好きなものもどんどん教えてくれよ〕
〈うん!〉
【月曜日】
〈あの…本当にこの姿で行くんですか…?〉
〔当たり前 堂々として 俺の彼女なんだから〕
〈…はい〉
うわぁ…誰?…あんな子、この会社にいた?
そんな声が次々に聞こえてくる
俺の自慢の彼女だ 綺麗だろ?よく見ておけよ
[へぇー]
〔あ、大輝おはよ〕
〈コーヒーごちそうさまでした ありがとうございます〉
[いや、いいよ 仲直りできてよかったな 雄馬]
「おい!雄馬!その子誰だよ」
〔美帆だけど〕
[わかるだろ]
「嘘だろ!?あ、本人を前にして…ごめん」
〈いえ…雄馬くんがメイクしてくれたんです〉
「お前、メイクなんかできんの!?」
〔見様見真似だけどな〕
[よく似合ってる]
〈ありがとう…冴島くん〉
〔おい!あんまりじろじろ見んな 俺の彼女だぞ〕[はいはい]
〈雄馬くん…もう じゃあ、私行きますね〉
〔あー心配だ…〕
〈大丈夫ですよ ではまたあとで〉
「なぁ、女って…すげーな」
〔元がいいから、何したって可愛いんだよ〕
「うわ、惚気だした…」
俺の心配が的中していたことを知ったのは昼休みに入ったときだった
〈…雄馬くん、もうこれ落としたいです…〉
〔すごかったらしいな…〕
〈…自信持ちますから、落としていいですか?〉
〔うん、いいぞ ほら これ使いな〕
〈持ってきてくれてたんですね ありがとう〉
化粧を落とした彼女を見て、
それまでのパニックはすっかり落ち着いた
何人かに食事に誘われたらしい
ふざけんなよ 俺の彼女なのに…
〈お待たせしました〉
〔うん、このままが1番可愛い〕
〈…えぇ…?〉
俺の彼女は外見も心も綺麗な人なんだ
俺が初めて、自分から好きになった人だから
タイトル〘飾らないキミが好き〙
Fin…
こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。
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