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読み切り短編集  作者: おしるこ


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君の光はわたしの道標

「あっ!!あぶねぇ!!」


え…?

「…っ、おい、大丈夫か?」


上から電球?かな 何かが落ちてきたみたい

この人がビニールシートを持って庇ってくれたんだ

大丈夫かー!?って聞こえる

「こっちは無事ですっ!気をつけてくださいよー

…で、あんた、いつまで俺にしがみついてんだ」〔あ、す、すみませんっ…あの…あなたこそ大丈夫ですか?〕

「俺はいいんだよ ここの作業員だし…げっ!!

すまん!服汚れちゃってんな…

これ、足りるかわからんけど…クリーニング代」

〔いえっ!受け取れません!〕

「洗濯じゃ落ちねぇかもしんねぇぞ…

可愛い格好してんだ

受け取ってくれ…じゃ、気をつけろよ?」

〔あの!!〕

「…なに」

〔このお金で…ご飯に連れてってください!〕

「はぁ!?じゃあ、それで行っていいよ

俺、仕事あんの…」

いいぞー上がって!お嬢さんに怖い思いさせたんだ

飯ぐらい連れてってやれ あとで補填するから

「えー!?…しょーがねーな…行くぞ」

〔…はいっ!〕


道が狭いな…ここ

「あんまりくっつくな…服汚れるぞ」

〔す、すみません…〕

「ちょっと待っててくんない?着替えてくるから」

〔はい〕

「…あ、ここに一人で置いとくのもあれか

入っていいよ こっち」

〔あ、そんな…大丈夫ですから…〕

向こうから男の人が何人か来る…

あ、あっちからも…

「ほら、早くしろよ」

〔は、はい…〕


玄関に入らせてもらった

「なんでそこにいんだよ 入ればいいだろ」

〔あ、いえ…〕



奥の部屋に入って行くその人を待ちながら

ぼーっとしていた


「すまん、待たせた」

〔あ…いえ…〕


作業着もかっこいいけど…私服もかっこいい…


「なんだよ 腹減ったのか?行くぞ」

〔あ、は、はいっ〕

「何食いてーの」

〔あ、何でも…〕

「…お前が飯って言ったんだろ?ほら、何でもいいから言えよ」

〔…じゃあ、ハンバーグ…〕

「おう ハンバーグ…すぐそこにあったな 行くか」

〔あ、あの…〕

「なんだ」

〔すみません…お仕事の邪魔をして…〕

「いや、いいよ 落下物のことはこっちの落ち度だしな 怪我がなくてほっとしたが…なんであんなとこでぼーっとしてたんだ」

〔…作業を…見てたんです〕

「見てただけ?」

〔はい…あ!背中ぶつかったんじゃありませんか?〕

「あー…まぁ、大丈夫だから」

〔…〕

「…っ んだよ…」

やっぱり…触れたら すごく痛そうな顔してる

〔…すみません…〕

「お前のせいじゃない 気にすんな

あー…いつまでもお前、じゃ失礼だな 名前は?」

〔日向千歌です〕

「千歌か 俺、菅原響也」

〔響也さん〕

「…着いたぞ」

〔はい〕


響也さんのお仕事の話とか、わたしのこととか

話しながらご飯を食べた

社長の息子さんなんだって お父さんに憧れて同じ仕事を選ぶなんて…素敵…


お店を出た

もうお別れなんだ…

ちょっとさびしい


「なんだよ」

〔あの…もうちょっとだけ…〕

「…まだ食うのか!?」

〔あ!違うんです!お腹いっぱいです!ありがとうございます〕

「もうちょっと、なんだよ」

〔…一緒にいてもらえませんか〕

「…なに、惚れた?」

〔!!!〕

「お前…冗談だろ…」

〔…〕

「はぁ…」

〔だめ、ですよね…すみません じゃあ…〕

「おい」

〔はい?〕

「だめなんて言ってない…だろ」

〔え…?〕

「来いよ」

〔はいっ〕


【響也point of view】


俺たちの仕事を眺めてた女がいた

可愛い子がいるな、とは思ってた


そしたら、上から電球と部品が…

風強かったからな…

普段、そんなことにならないように細心の注意をしてるんだが…この子に怪我がなくて本当に良かった



ここ何日かずっと眺めてたらしい

何が楽しいんだよ…


飯奢って、帰ろうかと思ったのに

もうちょっと…なんて言うから


やめてくれよ…ドキドキすんだろーが


どこ連れてってやろうか…この時間からだろ…


あ!


「来いよ」

〔はいっ〕


人通り多いな…

「おい」

〔はい?〕

「ほら、手…」

〔は、はいっ…〕

「もう少し歩くからな」

〔はい〕


手、つないでみたはいいけど

やわらけー…

俺の手、ゴツゴツしてるし 荒れてるからな…


「っ、どうした?」

離そうかと思ったら、ぎゅっと握られた

〔…離れちゃいそうで…〕

「…手、痛くないか?俺荒れてるから」

〔仕事…頑張ってる人の手 すきだなぁ〕

「!!そ、そうか…」

〔!!す、すみません…〕

自分で言って照れてんじゃねーよ…


〔わぁ…っ〕

「…」

いい顔しやがる…連れてきて良かった

イルミネーションに釘付けになってる

ここのイルミも、俺たちの仕事なんだぜ


〔響也さん!素敵です…〕

「少し前の現場だったんだ」

〔そうなんですね!〕



…可愛いなー 千歌


〔あの!響也さん!〕

「なんだ?」

〔もう一つお願いがあるんです…〕

「なんだよ」

〔あのね…お仕事してるところ、近くで見てみたいんです…〕

なにぃーーー!?

「そんなん見てどーすんだよ…」

〔だめ、ですか…?〕

「…っ、邪魔にならないようにしろよ…」

〔はいっ!〕


【千歌point of view】


次の日、ヘルメットを用意してくれた響也さんに

ついていきながら

足場の周りをうろうろしていた


もちろん、足場や梯子を登ったりはできないけれど

下からずっと見てた


はぁ…かっこいい…

響也さんもかっこいいけど、周りの職人さんも…

働く人たちって素敵だー…


「もう少しで飯だから、もうちょっと待ってな」

〔はいっ!〕


でも同僚の人にからかわれているのを見てしまって…響也さん、顔引き攣ってる…

そうだよね…考えが足りなかった…

迷惑かけちゃった…


わたしは、近くの作業員さんにヘルメットを返して

その場を後にした

お礼言いたかったけど…これ以上迷惑かけられない


ごめんなさい…響也さん


【響也point of view】


よーし、終わった…

あれ?千歌?


「すんません、ここにいた女の子知りません?」

えー?それならついさっき帰ったよ?

なんか顔色悪かったけど

「え!?あ、ちょっと出てきます」


顔色悪かった…?何でなんにも言わずに行くんだよ


どこだ!?

…あ、いた…あっ、急がないと駅に向かってんな…


「千歌ーーー!」

〔!?き、響也さ…〕


「はぁ…はぁ、どうしたんだよ…」

〔ごめんなさい…〕

「謝らなくていい どうした?」

〔…からかわれてたでしょ…〕

「あ、いや…」

〔ごめんなさい…〕

「…っ」

〔き、響也さん…?〕

人目も憚らず、抱きしめてしまった

「気にするな 急にいなくなられたら…心配するだろ」

〔ごめんなさい…〕

「戻るぞ」

〔でも…〕

「堂々としてろ 俺が…いいって言ってんだ」

〔響也さん…〕


手を繋いで、2人で歩く


「あ!!服汚れてねーか?」

〔大丈夫ですよ〕

「良かった…それにしても、俺たちの作業の何がそんなにおもしろいんだ?」

〔こういう作業ってなかなか見る機会ないでしょう?建築とか、電飾とか…興味あって〕

「へぇー」

〔0から何かが作られるのって、素敵だなーって思うんです〕

「…」

そんな風に思ったことも言われたこともなかった

俺たちの仕事は、そういう仕事なんだ…


「あ!飯も食わねぇとな メック寄るか」

〔はい〕


テイクアウトして、現場の端で食べた

からかわれようが、何しようが関係ねぇ


なんて思ってたんだけど…


《響也…こんなほこりっぽいところに可愛いお嬢さんをお連れするなよ…》

「げ、親父…来てたのか」

〔す、すみませんっ、無理言ってお邪魔して…〕

《いえいえ…響也の父です 朝から見学していたそうだね?どうだった?》

〔みなさん、かっこよかったです!作業のひとつひとつが初めて見るもので…

こうして、綺麗なイルミネーションが出来上がるんだと思うと、ワクワクしてしまいました〕

《そう…明日、少し早いんだが時間があるなら来るといいよ》

〔いいんですか!?〕

《うん 良いものを見せてあげる》

〔いいもの…?〕

「あー…よろこぶぞ、きっと」

〔ありがとうございます!楽しみにしています〕

《じゃあ、またね》

〔はい…っ!〕


まさか親父が来るとは思わなかった

…にやにやしやがって…


「千歌」

〔はい?〕

「親父に気に入られちゃったなー」

〔そ、そうなんですか…?〕

「俺の姉や妹は、こういうの興味ないからさ

娘と仕事の話しするのが夢だったらしいけどな」

〔お姉さんと妹さんがいるんだー〕

「おう」

〔だから響也さん、優しいんだー〕

「…」


ちげーよ お前にだけだし…


「さ!もう一仕事するか

千歌どうする?終わりまでいるか?」

〔いてもいいんですか…?〕

「いいよ ほら、ヘルメットは被っておけよ」

〔はい!〕


【千歌point of view】


すごいなぁ…

ずいぶん高いところまで行くんだ…


「千歌」

〔はい〕

「ちょっとだけ、登ってみるか?」

〔いいんですか!?〕

「これ、ハーネスつけろよ」

〔はい…えっと…〕

「あーいいよ つけてやる…お前細いな」

〔そ、そうですか…?〕

「… あと、手は触れるなよ

ここ、つかんでろ」

〔はい!〕


わぁ…手作業で電飾が繋がれていく…


「お前、すげーじーっと見るじゃん

そんなに好きだったら資格取れよ」

〔資格?〕

「電気工事士とか夜景観光士なんてのもあるな」

〔取れるかなぁ?〕

「千歌の頑張り次第だなー」

〔調べてみようかな〕

「取れたら、俺が雇ってやるよ」

〔ほんと!?〕

「…取れたら、な」

〔ふふ〕


「よし!終わったー 降りるぞ 気をつけろよ」

〔はい!〕


最後の一段は手を繋いで降ろしてくれた

「ハーネス外すぞ」

〔お願いします〕


「よし じゃーヘルメットとこれ戻してくるから、ちょっと待ってろ」

〔はーい〕


《千歌さん、だったかな?》

〔あ、響也さんのお父さん…作業を見せていただいてありがとうございます!〕

《いいんだよ 響也が女性とここまで仲良くしているところを初めて見たからね…》

〔そうなんですか?〕

《余程、特別と見たなーこれからが楽しみだ》

〔!!!〕

「おい…余計なこと言うなよ…」

《おっと…叱られる前に行こうかな

千歌さん、また明日ね》

〔はいっ!失礼します〕

「…何話してたんだよ」

〔えっと…〕

「いや、いい きっと碌なことじゃねーだろ

帰るぞ」

〔はい!〕

「あっ なぁ、明日だけどさ」

〔はい〕

「一緒に行くか?」

〔いいんですか?〕

「おう 朝早いんだよ 暗いうちに出るから泊まってけよ な?」

〔!!!!〕

「やめろ…リアクションに困る」

〔す、すみませ…〕

「飯食ったら、帰るぞ」

〔はいっ〕



食事をして、響也さんのお部屋に…

〔お邪魔します…〕

「どーぞ」

〔…〕

「急に黙るなよ…」

〔き、緊張…しちゃって…〕

「や、やめろよな…ほら」

〔わっ…〕

肩を抱かれて見つめられて…る

「千歌…」

〔は、はい…〕

「…ぶっ、あははは…」

〔え!?な、なんですか!?〕

「意識してんじゃねーよ…っくく…」

〔ひどーい!〕

「ほら、これ 資格の本 貸してやる

電気工事士だけどな これ渡したかったんだよ」

〔すごい…付箋や書き込みがたくさん…いいんですか?〕

「いいよ 俺が側にいると思って頑張れよ」

〔はいっ!〕




翌日、わたしは響也さんと昨日の現場へ

目を瞑るように言われて…


「千歌、目ー開けていいぞ」

〔はい〕

《千歌さん、このスイッチ押してごらん?》

〔はい!いきますよー…せーのっ〕


わぁ…!!!

素敵…


《この顔が見たかったんだ》

「な?すげーだろ?前の現場のもよろこんでたぞ」

《ほうーそれはそれは…》


〔響也さん!すごいねっ!〕

「だろー あ、千歌

あそこらへんが、お前が昨日登ったところだ」

〔すごーい…感動する…〕

《これは…予想以上の収穫だな》

「おい、あんまり千歌のこと見んなよ」

《はぁ…我が息子ながら…》

「うるせぇ チェック終わったんだから早く帰れ」

《はいはい…》


「よろこんでくれて良かったよ」

〔こちらこそ!見せてくれてありがとうございました!〕

「さ、ここの現場はこれで終わりだ」

〔…あ〕

「なんだよ?」

〔…もう、響也さんとお別れかと思うと…〕

「…んなわけねーだろ」

〔え?〕

「今日はもう休みだし、離すわけねーだろ?」

〔響也さん…〕

「俺、お前が好きだ 付き合ってくれ」

〔!!!わたしも…大好きですっ!〕


イルミネーションの前で告白してくれるなんて…

感動して涙が出た


【2年後】


〔うぅ…また落ちたぁぁーー〕

「しょうがねぇよ また次頑張れ」

〔今年はどうしても取りたかったのに…〕

「?なんで」

〔…〕

「あー雇う話?」

〔はい…〕

「別にいいだろ?嫁入りすれば」

〔…え?〕

「家族だからなー手伝いくらいはできるよなー?」

〔響也さん…〕

「…結婚しよう?俺が待てない」

〔…はいっ!〕


この2年後、やっと資格が取れたわたしは

響也さんといろいろな現場で

イルミネーションを作っている

この光が、どなかの感動に繋がってくれるといいな…


ね!響也さん!


タイトル〘君の光はわたしの道標〙


 

                    Fin…


こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。

再編集して投稿しております。

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