幸せな者たちの物語
【???point of view】
出会ったのは、あなたが大学生の頃
あの頃は、あなたは恋人に振られてしまって
落ち込んでいたんですよね
そんな時にあなたが
私を見つけてくれたんでしたね
「可愛いな…行くところがないのか?
寒いだろう…俺のところに来るか?」
あなたはとても優しかった
私のことをそばにおいて可愛がってくれました
飲み物とおいしいご飯を用意してくれましたね
大学を卒業したあなたは
就職して仕事をするようになりました
帰りにはプレゼントを買ってきてくれて
とても嬉しかったんです
帰ってきたら
私の頭を撫でてくれました
大きな手があたたかくて
私は…その手が大好きです
あなたといることが
私の幸せになりました
でも、仕事が忙しくなると…
帰りが遅くなる日が増えて
休みの日は、お昼まで寝ていることが増えました
それでもいいんです
そばにいられるなら…
私は、いつまでも
あなたの帰りを待っています…
あなたは今日も遅い時間に帰ってきて
寝ていた私の頭を撫でた
おかえりなさい
あなたが帰ってくるまで
起きて待っていようと思っていたのに
いつの間にか眠ってしまっていました
私は起きあがって
あなたのとなりに座る
「寝なくていいのか?起こしてすまんな」
いいんです
あなたのそばにいたいんです
「寂しくなかったか?」
大丈夫です
あなたがこうして帰ってきてくれるから
寂しくないです
帰ってきたらずっとそばにいてくれる
それだけで私は…
でも、あなたはしばらく経った頃…
「お前が寂しがるといけないからな」
そう言って
ひとりの少女を連れてきた
…
そんなことをしてほしいわけではないのです
忙しいのはわかっているし
帰りが遅くて寂しくもある
でもね そういうことではないの
私は…体を硬くして目を細めた
触ろうとするあなたの手から逃げた
ーー初めての反抗の意思表示をしました
「…そうか 余計なことをしたな」
あなたはその少女を連れて外に出ていった
また別の日
遅い時間に帰ってきたあなたは
「しばらく休みをとった」
そう言って
私の頭を撫でてくれた
休みと言うことは
ずっと一緒にいられるんですね
嬉しくてあなたのとなりに座って
あなたに口づけをする
「甘えんぼうだな」
はい
あなたがいない間
ずっと寂しかったから
それから何日かして
んん…少し体が重い
「どうした?どこか悪いのか?」
いえ…心配しないで
そばにいてくれるだけで…
「おいで」
はい
あなたのあたたかい腕の中で
私は…
少しでいいんです
もう少しだけ…
そばに…
「おい…なぁ…目を開けてくれ」
あぁ…
せっかくあなたがそばにいてくれているのに
あなたの声が…
「行かないでくれ…頼む」
聞こえて、
います…
時間、ですね…
あなたの腕の中で…
幸せです
「ずっと一緒にいてくれたじゃないか…
これからも…いてくれるんだろう…?」
泣いているのですか?
あたたかい涙が…落ちてきます
「…ありがとう…大好きだったよ…
ルナ…」
あなたの声を聴きながら
私は眠りにつく
【飼い主point of view】
その猫に出会ったのは、俺が大学生の頃
恋人に振られて…塞ぎ込んでいた
すごく好きだった
…胸にぽっかり穴があいたようだった
そんな時、公園のベンチの下に子猫を見つけた
「可愛いな…行くところがないのか?
寒いだろう…俺のところに来るか?」
ミャオン…と小さく鳴いた猫を抱き上げて
家につれて帰った
調べたら牛乳は良くないと書いてあったから
水と子猫用の猫缶を用意した
おいしそうに食べてたな
名前は"ルナ"にした
大学を卒業して就職した俺は
昼間寂しい思いをさせてるから
帰りにおもちゃを買って帰るようになった
遊んでやるとよろこんでいるようだった
ルナは頭を撫でられるのが好きだ
優しく、優しく…
甘えんぼうのルナを可愛がった
ルナが俺の癒やしの存在になった
でも、仕事が忙しくなると…
帰りが遅くなる日が増えて
休みの日には、昼まで寝てることが増えた
遊んでやれないもどかしさ…
ルナにとって 俺との生活は
幸せなんだろうか
朝から晩まで俺はいないし…
寂しい思いをさせてしまっている
はぁ…疲れた
今日も遅くなった
ルナは…
寝てるか
ルナの頭を撫でる
ミャアン…
ルナは身体を起こして、俺のそばに来た
「寝なくていいのか?起こしてすまんな」
ミャアン…
「寂しくなかったか?」
ルナ…
ごめんな
こんな部屋でひとりぼっちで待ってるんだ
寂しくないわけないよな…
長い間この生活を送ってきて
ルナもおばあちゃん猫になっていた
こんな生活をしていたら
ルナの元気がなくなりそうだ
そんな時
ちょうどよく友達から頼み事をされた
俺は友達が買っている子猫を預かってきた
旅行に行く間の3日間だけ
ルナと仲良くなってくれたら嬉しい
後から新しい猫を飼っても大丈夫なように
ルナに慣らせようと思った
「お前が寂しがるといけないからな」
子猫を見せてみた
…
ルナが体を硬くして目を細める
あれ?子猫だぞー…
ルナ…?
俺が手を伸ばすとルナが逃げた
ーーこれが最初で最後の反抗の意思表示だった
「…そうか 余計なことをしたな」
ルナが嫌がることはできるわけがない
他の友達に預かってくれる奴がいないか探して
そいつに頼むことにした
またしばらく経った頃
ルナの様子がおかしいことに気づいた
呼吸が浅く速かったり、ゆっくりになったり
鳴き声が苦しそうだったり…
獣医師さんに聞いていた話しと同じだ…
俺は覚悟を決めた
ずっと一緒にいてやれなかったから
最期くらいは…
本当はずっと一緒にいてほしいけど…
ルナ…
休みを取るために帰りが遅くなってしまった
ルナ…寝てるか?
「しばらく休みをとった」
ルナの頭を撫でた
ミャアン…
めずらしくルナが抱っこされながら
口元を舐める
「甘えんぼうだな」
ミャアン…
フッ…フッ…
「どうした?どこか悪いのか?」
呼吸が浅い…どんな体勢なら楽になる?
「おいで」
ミャ…ァ
ルナが目を閉じようとする
「おい…なぁ…目を開けてくれ」
まだまだ一緒にいてやれるんだ…
ルナ…
「行かないでくれ…頼む」
ミャ…
「ずっと一緒にいてくれたじゃないか…
これからも…いてくれるんだろう…?」
涙が止まらない
でも、お別れなんだな…
「…ありがとう…大好きだったよ…
ルナ…」
俺の腕の中で 静かに眠ったルナを抱いて
ルナは幸せだったのだろうか…そう考えていた
俺ばっかり幸せでごめんな
タイトル〘幸せな者たちの物語〙
Fin…
こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。
再編集して投稿しております。




