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読み切り短編集  作者: おしるこ


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55/62

恋に落ちるのは一瞬

…本当に怖い

どこに逃げても追ってくる…


はっきり断ってるのに…どうして…?


さすがにもう職場を変えるのも…

ここは仕事内容もいいし

人間関係も良好だから…1人を除いて…


その1人、とは…

目の前で眉間にシワを寄せている


神田朝陽、その人だ


《…おい!誤字がひでえぞ!やり直し!》

「はいっ…すみません…!」


私が悪いのは分かっている

でも、言い方がひどいのだ

他の女子社員にはもう少し優しい言い方をするのに

私にだけ、こういう言い方をする


他の人には名前で呼ぶのに

私には、おい!とかお前!とか…


理不尽だよ…嫌われてるのかな…


でも、この人がいるからって辞めたくない


そもそも、あの人がしつこいだけなのに

どうして私が職場を変えなきゃいけないの…


警察にも相談したけど

被害がないから対応できない、といわれて


確かに被害という被害は…ない


会社の前で待ち伏せされたり、何回も告白されたりはあるけど

腕をつかまれたとか

連絡がひっきりなしに来るとか

家に来ることはない


はぁ…


あ…嘘…


会社の前にあの人がいる…


どうして分かったの…?


怖い…


足がすくむ


《おい!こんなところで立ち止まってんじゃねぇ

邪魔だ…》

「…す、すみませ…っ」

《おい!どうした!?》

「あ、いえ…」

《…顔色が悪いな 何があった?》

「…」

《いいから、答えろ》

「…あ、あの…会社の前に…

会いたくない人に待ち伏せされていて…」

《…どいつだ?》

「あの、黒いスーツの…」

《…誰だよ?あれ》

「えっと…何回も告白されていて…はっきり断ってるんですけど…」

《上のフロアで待ってろ 向こうに見られたら面倒だ》

「あ、はい…」

《迎えに行くまで降りてくるなよ 分かったな?》

「はい…」


どうして神田さんがそんなことを言ったのか

それでも

今は神田さんの言う通りにしなければ


わたしは上のフロアに向かった


それから30分経っても神田さんは来なかった

どうしたのかな

何かあったのかな…


降りてみようか…

《迎えに行くまで降りてくるなよ 分かったな?》


だめだ…来てくれるまでここで待たないと…


それでも1人で待つのは心細くて



神田さんが来てくれたのは

それから30分近く経った頃だった…


《おい!大丈夫か!?》

「私は…大丈夫です…あの…」

《アイツやべえな 話が通じねぇ》

「…ですよね…」

《仕方ねぇから、俺の女ってことにした

今から俺んちに帰るぞ》

「え?…え!?」

《しょうがないだろ 我慢しろ 行くぞ!》

「え、あっ…はい…」


肩を抱かれて入口を出ると

あの人が、こちらを見ている…


怖かったけど、耳元で

《俺のことだけ見てろ アイツと目ー合わせんな》

と言われて…


あの人と目を合わせないように

神田さんの方を見ていた


なにこの状況…どうしてこんなことに…


それから神田さんの車に乗って

神田さんについていく


「あの、もう追って来ないようですし…ご迷惑おかけするわけにはいかないので…」

《…わかんないだろ しばらくは俺から離れるな》

「え、でも…」

《わかったな?》

「…はい」


あれよあれよと、しばらく神田さんの家に置いてもらうことになってしまって

先に家に寄ってもらって荷物は持ってきたけど…


本当に…なんでこんなことに…



【朝陽point of view】


こいつは本当にどんくせえ…

誤字は多いし、ちょくちょく転んでるところも見る


山野小春 目の前でオロオロしている女


小さくて丸っこくて…目が離せねぇ


どんどん好きになっていく


最近入ってきた女たちが俺に惚れて女同士で揉めたり辞めたりしていたもんだから

仕事になりゃしない

だから、こいつには厳しくあたっていた


このまま、ただの上司と部下としてやっていこうと思ってた矢先に


これだ


…


《アンタ、山野になんか用か?》

〚…あなたこそ、彼女の何?〛

《何でもいいだろ アイツははっきり断ってんだ

もうつきまとうのはやめてくれ》

〚何で部外者のあなたにそんな事を言われなきゃいけないの

彼女、いるんでしょ 連れてきてよ

もう一度話せばわかってくれるはずだから〛

《アンタさー何回言いよったわけ?》

〚は…?〛

《それでも付き合ってもらえてないんだろ

諦めろ アンタのためだ》

〚…私のため?私のためと言うなら、早く彼女を連れてきてよ 照れ屋さんだから…

今も出てこられないだけなんだから〛

《…》


だめだこりゃ 話が通じねぇ

こんな話を1時間も繰り返して

いい加減疲れてきた


《あー!もう!めんどくせぇな!

アイツは俺の女なんだよ!!》

〚は?今、なんて…?〛

《俺の女だって言ってんの!だから諦めろって言ってんのに…わかった 今から連れてきてやる 

アイツの俺に対する態度見たら傷つくのはアンタだぞ 見たくなきゃ、早く帰るんだな》

〚…〛



めんどくせぇけど…

いい機会だから既成事実でも作ってやろうか


…


山野は俺のことを見つめたまま

アイツの前を通り過ぎた


アイツの悔しそうな顔

見せてやりたかったけどな


まぁ、あんま刺激すっと

刃傷沙汰にでもなったら危ねえから


これからは俺が山野を守ってやる



《ここの部屋を使え》

「すみません…ご迷惑をかけてしま…《そういうのはもうなしだ わかったな?》

「は、はい…お世話になります…よろしくお願いします」

《なぁ》

「はい?」

《恋人同士なんだから、もっと話し方変えろよ》

「こ、恋人…!?あの、おうちの中でも、ですか?」

《いつもちゃんとしておかないと、いざって時に

ボロが出てバレるだろ》

「そういう、ものですか…わかりました」

《わかってねぇな 敬語やめろって言ってんの》

「!あ、…はい…」

《少しずつでいい わかったな?小春》

「!!は、はい…神田さ…」

《…》

「朝陽、さん…?」

《そうだ よくできたな 小春》


頭をぐしゃぐしゃっと撫でる


驚いた顔をしている

そんなのは今までの俺がした嫌な態度への自業自得か


《小春》

「はい…」

《アイツのこと、もう少し詳しく聞かせてくれ》

「あ、えっと…詳しくと言われても、

わたしもよくわからないんです」

《…どういうことだ?》

「あの人は、わたしが知りあいだと言い張るんですけど…会ったことも話したこともなかったんです」

《…それで?》

「うーん…呼び止められて、告白?されて断って…というのを何回もされていました」

《一方的にってことか?…まぁ、しばらくは俺のそばにいろよ

俺もちょっとアイツに言い過ぎたところもあるからな》

「はい…」

《…大丈夫だ 俺が守る》

「あ、あの…」

《なんだ?》

「どうして…ここまでしてくれるんですか?」

《…直にわかる》

「…?」

《さて、腹減ったな なんかあったかな…》

「何か作るんですか?お手伝いします」

《…》

「…手伝う!」

《頼むな 小春》

「…はい!」


冷蔵庫にあるもので パパっとパスタを作った

小春は、やっぱりというべきか…

料理はできなさそうだ

手伝うという気持ちだけいただいておいた


【小春point of view】


…


この人は、いつもの神田さんと同じ人なの…?


目の前にいる朝陽さんは

わたしのことを愛おしそうに見つめてくる

頭を撫でる手が優しくて…

守ると言ってくれた


「おいしい…!朝陽さん、食事作れるんですね!」

《一人暮らしが長いから このくらいならできる》

「毎日こんなにおいしいご飯を食べてるんだぁ」

《…小春もこれからは食べるんだからいいだろう?》

「あ…はい…」


「あ!洗い物はわたしが…」

《いや、いい シンクの下に食洗機があるからな》

「すごぉい…見てていいですか?」

《…そんなのが見たいのか?一緒に見るか》

「はい!」


わぁ…お皿やコップが綺麗になっていく…

朝陽さんのおうち、部屋も多いし

お金持ちなのかな…

課長さんだもんね…


《…》

視線を感じて、顔を上げると朝陽さんと目が合った

「?朝陽さん?どうし…」


え…キス…されちゃっ…

「ん、…っ」

《…あ、すまん…可愛くて、つい》

「…」

《…まだ見てるか?風呂の準備をしてくる》

「あ、朝陽さ…っ」


行っちゃった…どうしよう…

追いかけた方がいいのかな…


【朝陽point of view】


やべえ…やっちまった…


可愛すぎんだろ…


あー…戻ったらどんな顔すりゃいいんだよ…


風呂をゴシゴシと擦りながら、必死に考える

すっかり綺麗になった風呂釜にお湯を張る


はぁ…


「あの…」

《おわぁっ!?》

「ひゃっ!?」

《あ、すまん!なんだ…!?》

「何か…お手伝い…と思ったんです…」

《…もう終わった すぐに湯が張れる

そうしたら先に入っていいぞ》

「いえ!わたしは後で…」

《先でいい》

「後でいいですから」

《先…はぁ…一緒に入るか?》

「!!は、はい…」

《え》

「準備…してきますっ!」


いや、違うだろ

一緒に入るか?→いえ!では先に!の流れだろ…


え?一緒に入るの?


は?


【小春point of view】


ひゃー!!

一緒に入ることになっちゃった…


ど、どうしよう…

誰とも入ったことないのに…


…と、とりあえず、準備…準備しなきゃ…


シャンプーとかは持ってきたし…

下着と、パジャマと…あっ、ブラ忘れないようにしなきゃ…


"コンコン"

「は、はいっ」

《…準備できたか?》

「はい…!」

《タオルは、こっちにある おいで》

「…はい…」


朝陽さん、何とも思ってなさそう…

慣れてるのかな…


《…恥ずかしければ、タオルつけてていいぞ》

「あ…はい…」


さっき、チラッと覗いたけど

やっぱりお風呂広い…

2人くらいなら入れそう…


身体を洗ってから、湯船に浸かる

…けど…

触れてしまいそう…


《何してる》

「はい!?」

《それじゃ、疲れが取れないだろ

こっち、寄っかかっていい》

「あ…こう、ですか?」

《…あぁ》


え、これ、待って…

後ろ向けないからわかんないけど…


え、朝陽さんとくっついてる…?

耳元に息がかかる…


ど、どうしよう…

ドキドキし過ぎて、のぼせちゃいそう…


【朝陽point of view】


…小春、やっぱ小せえな…

守ってやりたくなる


…だけじゃ終わらなさそうでやべえ


あんまり長く浸かってると

反応しそうだ

《そろそろ出るか?》

「…」

《小春?おい!?どうした!?》


顔が赤い…

のぼせてんのか!?

急いで抱き上げて風呂の外へ


ちょっと悪ぃけど…タオルを外して

乾いたタオルで拭いてやる


エアコンはついてるし…


《小春…小春…!!》

「ん…あさ、ひさ…ん」

《よかった…今、飲み物持ってくるからな》

「…」


水を持ってきた

《小春…?》

「ん…」


…

しょうがねぇ…


《…》

「…ん…冷たい…」

《大丈夫か?》

「…あ、すみません…朝陽さん…」

《心配したぞ 今着替え持ってきてやる》

「ありがとう、ございます…」


えーっと、さっき置いてあったやつが…


おい…なんでブラが2つあんだよ…


パンツはどこだ!?


《あの、小春…》

「はい…?」

《下着…が揃ってないんだが…》

「…え」

《部屋から取ってきてもいいか…?》

「す、すみません…」


え…普段こんなのつけてんの…?


とりあえず、あんまり見ないようにして…

ブラと同じものを手に取った


帰ってくると、座り込んだ小春がいた

「朝陽さん、すみません…

あの、ありがとうございました…

でもあの…見られちゃいましたよね…」

《…すまん とりあえずゆっくり着替えな

俺はあっちで着替えてくる》


…

落ち着け


落ち着け…


緊急事態だったんだぞ…あれは!


ふー…


さてと、ドライヤー持ってってやらねえと


《小春…着替えたか?》

「はい…」

《…うん 髪乾かすぞ》

「あ、はい…」

《座っていろ》

「え?」

《…》


綺麗な髪だな…

栗色の長い髪


「…」

《よし、乾いたな》

「ありがとうございます…」


元気ないな…

《小春?》

「…はい?」

《どこか体調でも悪いのか?》

「あ…いえ…大丈夫です」

《そうか その水もう少し飲んでおけよ》

「はい…」


さてと、寝る準備するか…



【小春point of view】


…


慣れてるんだ


女の人の裸を見るのも

下着も

髪を乾かすのも


そうだよね


わたしなんかじゃ…


《その水もう少し飲んでおけよ》

「はい…」

え?水…?

いつ飲んだっけ…


…!!!

そういえば、口移しだった…ような…!?


…


緊急事態だから、だよね…


朝陽さんは慣れてるんだもん


わたしだから、じゃ…


あれ…


どうして…


涙が出てくる


嫌われてると思ってたのに

優しくしてもらったから


好きになっちゃったのかな…


こんなに良くしてもらってるのに

これ以上、望んだってだめなのに


…


そうだった


これは、恋人ごっこなんだった


解決したら、そのごっこも終わっちゃうんだ


…これ以上好きになったらだめ…


わたしはお水を一気に飲み干した






《小春、おはよう》

「…朝日さん…?」

《朝だぞ よく眠れたか?》

「はい 眠れました」

《うん 顔色も良さそうだ 朝飯食えるか?》

「はい…!」


眠い目を擦りながらリビングへ

コーヒーとトーストのいい匂い…


「いい匂い…」

《ジャムもあるぞ》

「わぁー!いただきます!」

《…》


マーマレードを塗って食べる

卵焼きやウインナー、サラダもある…

「おいしいです!」

《そりゃよかった 30分になったら出るぞ》

「わかりました」


身支度をすませて、荷物を片付ける


《小春、行くぞ》

「はい」


会社に着くと あの人はいなかった

…


それから1週間…

朝も帰りも現れることがなかった


今までだったら、毎日来てたから

もう来ないということかなぁ


早かったなぁ…もう、終わりなんだ…


《よかったな、今日もアイツ来てないな》

「…はい もう大丈夫そうですね

今までお世話になりました」

《は?》

「神田さんに恋人ごっこをしてもらったから…

解決したんだと思います

もう、自分の家に帰ります」

《…ごっこ、だと?》

「…え?」

《俺はごっこなんて思ったことはないが》

「え?でも…」

《あと、名前で呼べと言ったはずだが》

「あの…」

《…好きだ もう離す気はない》

「…!!」

《帰るぞ 小春》


「…朝陽さん…!」


わたしの大好きな彼は


抱きついたわたしを愛おしそうに見て笑っている



【???point of view】


ずっと見ていた


たんぽぽのような笑顔の彼女を…



彼女はスーパーの店員だった

高校生かな…バイトをしていたみたい


レジで何回も会っていた


笑顔で応対してくれて

とても可愛いなって思ったのが最初


私が化粧水がどこにあるのかを聞いたときに

親切に売り場まで連れて行ってくれて

他にも探し物はありますか?と聞いてくれた


その後も

何回か探し物がどこの売り場にあるのか

案内してもらっていた



「あっ!!いったぁ…」

…また転んでいる ドジっ子さんなのかな

とても可愛らしいけど 心配ですぐに駆け寄った

〚大丈夫ですか!?〛

「すみません…大丈夫です…!恥ずかしい…」

気恥ずかしそうに笑っている彼女も可愛かった


何回か転んだところに遭遇した

その時は毎回駆け寄って起こしてあげた


そんな可愛い彼女にたまらなくなって…


初めて告白したのは

1年前のことだった


〚あの…突然すみません…〛

「はい!何かお探し物ですか?」

いつものように笑顔の彼女が目の前にいる


〚あの、ちょっとお話があるんですが〛

「え…?わたしに、ですか…?」

〚はい 少しだけお話しいいですか?〛

「あの、仕事中なので…えっと、あと40分くらいで終わりますから…その後でも構わないでしょうか?」

〚もちろんです!えっと…じゃあ、となりの喫茶店で待っていますので…!〛

「…わかりました…」


よかった…話ができる…


待ってる間、すぐに時間が経った


「あの…お客様…ですよね…?」

〚あ、はいっ!すみません…名前も名乗っていなくて…改めまして 横内優里といいます〛

「あ…山野小春です…えっと…なんでしょうか…?」

〚…好きなんです…!まずはお友達になっていただけませんか?〛

「え…?」

〚お友達になってほしいんです…!〛

「えっと…あの、どこかで…お会いしてましたっけ…?」

〚え…!?何回も話してますよ…!〛

「す、すみません…その…わたし、人見知りも激しくて…急にその…、お友達と言われても…

ごめんなさいっ…!」

〚あ…〛


彼女は受け入れてはくれなかった


恋人になってほしいといったわけではなくて

友達になってほしかっただけなのに…


次の日、もう一度話がしたくてスーパーに行くと

彼女はもう辞めてしまっていた


…どうして…?


辞めるほど、嫌だったということ…?


その時、声が聞こえてきた

{山野さん、〇〇に就職決まったんだってね!すごいよねー}


…〇〇…

となりの駅にある大きな会社の名前だ…


そうか…就職が決まったからバイトを辞めたんだね


ということは、働き出すのは4月からだろうか


私は4月に入ってから、

その会社の前で待つことにした


…

あ、いた…本当にここで働いているんだ…


〚山野さん!〛

「え…?え!?あの、どうして…?」

〚もう一度、お話を聞いて欲しいんです…!少しだけでいいですから…〛

「あの、この間の件は…お断りしましたから…」

〚でも、私たちはまだお互いのことを知らないですよね?

お友達からでいいんです…お願いします…!〛

「あの…本当に申し訳ないんですけど…

こういうのは、やめてください…!すみません」


また、受け入れてもらえなかった


私が答えを急ぎすぎたからだろうか


違うの…

そうではないことを、伝えなくては…!


場所はわかっている


焦らなくてもいい


私は頭の中で

彼女とどう会話をしたらわかってもらえるのか

シミュレーションをしながら過ごした




ある日、遅くなってしまったけど

彼女の職場に来た


…もう帰ってしまったのだろうか

彼女は出てこなかった


そんな時、声が聞こえてきた

{山野さんって照れ屋だよなーあーいうところが

可愛いんだよなーほんと}


…!!

照れ屋…!

そうか…それは知らなかった


照れ屋さんにグイグイいってもうまくいかないわけだ


シミュレーションをやり直さないと…


次の日、もう一度彼女の元へ向かう


あぁ、いた…


彼女は照れ屋だから…すぐに答えを求めずに安心できるような言い方を心がけるんだ…


〚山野さん!〛

「あ…」

〚大丈夫…ゆっくりでいいんです

時間をかけて、お友達になりませんか?〛

「あの…ですから…!」

〚あ、何か食事でも食べに行くのはどうですか?

無理なら、お茶でもいいんですが…〛

「…もういい加減にしてください…!

失礼します…!」


…あ…


あんなにシミュレーションしたのに…


また、答えを求めて怒らせてしまった…


それからは、何回会いに行っても

私の顔を見ると隠れてしまって…


私はただ謝りたいだけなのに…


仲直りをしなければ、友達にはなれないのに



しばらくしてからまた職場に行くと

もう、辞めてしまっていた


どこに行ってしまったんだろう…


早く謝らなくちゃ…


仲直りできないよ


その後も、

職場を見つけては話せないままいなくなってしまうことが続いた


鬼ごっこをしている気分だ


…そうか!

友達になってくれていたんだね!


私は鬼だから、

彼女にタッチをしなくてはならない…




早く次の職場を探さないと…


 

でも、今度の職場を探すのは時間がかかった



3ヶ月後、やっと見つけた…




かくれんぼも上手なんだね、山野さんは…



今日も私は友達を待っている


すると、前から男性が近づいてきた


《アンタ、山野になんか用か?》

〚…あなたこそ、彼女の何?〛

《何でもいいだろ アイツははっきり断ってんだ

もうつきまとうのはやめてくれ》

〚何で部外者のあなたにそんな事を言われなきゃいけないの

彼女、いるんでしょ 連れてきてよ

もう一度話せばわかってくれるはずだから〛

《アンタさー何回言いよったわけ?》

〚は…?〛

《それでも付き合ってもらえてないんだろ

諦めろ アンタのためだ》

〚…私のため?私のためと言うなら、早く彼女を連れてきてよ 照れ屋さんだから…

今も出てこられないだけなんだから〛

《…》


私は男性と話したいわけではないのに

この男性は1時間も同じ話を繰り返してきて

いい加減、疲れてしまった


早く連れてきてくれればいいだけなのに


《あー!もう!めんどくせぇな!アイツは俺の女なんだよ!!》

〚は?今、なんて…?〛

《俺の女だって言ってんの!だから諦めろって言ってんのに…わかった 今から連れてきてやる

アイツの俺に対する態度見たら傷つくのはアンタだぞ 見たくなきゃ、早く帰るんだな》

〚…〛


この人は一体何を言ってるんだろう


この人が山野さんの恋人…?


こんな横暴そうな人が…?


え?山野さんって…男性が好きなの…?


信じられない…




私はこの人の言う通りに、山野さんの態度を見ることにした


だって…違うものね?

山野さんは、私と友達になってくれたんだから…




あ…


そこには、あの男性に肩を抱かれて

彼のことを見つめている山野さんがいた


私の方を見ようともしない


友達なのに


 

そう…


その人のことが好きなのね…


 

私の前を通り過ぎる間に

彼が勝ち誇った顔をしていたのには腹が立ったけど


彼女のあんな顔を見させられたら…


彼女は友達よりも彼氏を取る人だったの…?


せっかく友達になれたのに


これから、たくさん楽しい時間を過ごせると思ったのに…




こんなに好きだったけど


彼女のために


この想いは忘れることにすると決めた




もう会いに来ない


ごめんなさいね


あなたとなら仲良くできると思ったけど


私は…


男性の前で笑っている…

あなたのそんな幸せそうな顔はもう見たくないの




タイトル〘恋に落ちるのは一瞬〙


 

                     Fin…

こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。

再編集して投稿しております。

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