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読み切り短編集  作者: おしるこ


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53/61

あなたの本音が知りたくて

「さぁ、行こうか」

〔はい!〕


恋人を作りたかったわけではないが

いつも周りをついてくる後輩が

好きだ、と言ってきた


見るからに勇気を出しました!って感じで

可愛かったから


OKして付き合うことにした


僕達は土日休みだから、

たまにしかデートはできないが


今日は何度目かのデート


彼女はいつも僕に似合うように…なんて言って

おしゃれしてくるんだ


ヒールが高いな…あまり歩きすぎたら疲れるだろう

食事をしたら、タクシーでも呼ぶか


「好きなものを頼むといい」

〔先輩は…あっ、祥太朗さんは何を食べるんですか?〕

「そうだなぁ…じゃぁ、君が好きなこれ、にしようかな?」

〔…はい!では私も同じものを…〕


この子は、僕にすべて選ばせる

好きなものを選べと言っても

僕の意見を聞きたがる


だから、彼女の好きなものを選ぶようにしている


いつになったら

遠慮せずに過ごしてくれるようになるんだろうか


たまに思うことがある

そんなに遠慮していて楽しく過ごせているのだろうか?

僕に似合うように、なんて考えなくても

そのままでいればいいのに


他の後輩とは大きな口を開けてハンバーガーを食べてたりするのに…


今も踵を気にしている

靴擦れが痛いんだろう

困った子だ…


【皐月point of view】


ずっと好きだった先輩に、勇気を出して告白してみたらうまくいってしまって…

まだ、少し緊張するけど…今日はデートなんだ!


祥太朗さんにお似合いの彼女になりたくて

頑張ってるんだけど…

うーん…

なかなかうまく振る舞えなくて


やっぱり釣り合ってないよねぇ…


でも…祥太朗さんから何か言ってこない限りは

頑張りたくて


となりにいられる間だけは…


「ここの店、おいしかったね」

〔はい!とってもおいしかったです

あの、ごちそうさまです…

いつもありがとうございます〕

「構わないよ それで、この後なんだが…」

〔はい〕

「足、痛くないか?タクシー呼んであるから」

〔あ…そんな、私、大丈夫ですから…〕

「…踵、痛そうだよ 少し待ってて あ、来た」

え…もう、帰っちゃうの…?

…もう終わりなんだ…

〔あの、祥太朗さん、私…〕

「ほら、乗って」

〔あ…はい…〕

「?何をしている?つめてくれないか?」

〔え?〕

「〇〇にお願いします」

〔あ…〕

行き先は、祥太朗さんの家の住所だった

てっきり帰されるんだと思った…


「ん?どうした?」

〔あ、いえ…〕

手を繋いで微笑んでくれる彼を見て

帰される、なんて思ったことが申し訳なくなった




「大丈夫か?」

〔はい…〕

ほんとはちょっと…ううん、かなり痛い…


手際よく手当てをしてくれた祥太朗さんが

もう手洗いを済ませて飲み物を用意してくれている


本当に…すごいな…

「さっきから、ずっと僕のことを見ているが…


もっと近くで見なくていいのかい?」

〔あ…!はい…〕

恥ずかしくて、下を向いた私の顔を覗き込んでくる

かっこいいし、可愛いところもあって…

はぁ…素敵… 

おうちにまでお邪魔して、

となりに座ってるなんて…


「ねぇ」

〔はい?〕

「無理しなくていいんだよ」

〔え?〕

「あんなに高いヒールを履かなくたって

普通にしていてくれたらいいんだから」

〔あ…はい…結局、こうして迷惑かけてしまって…〕

「そうじゃないんだ」

〔…?〕

「何といえばいいんだろうな…

作り物みたいで、気になる」

〔え…〕

「ありのままでいい 君の好きな服を着て、好きなメイクをして、メイクだってしたくなければしなくてもいいし

とにかく無理をさせたくないんだよ わかる?」

〔あ、はい…〕

「気持ちはとても嬉しいけど、ね

僕だって完璧にしてないといけなくなるだろう?」

〔だって…祥太朗さんは完璧で…〕

「…まさか そんなことはない」

〔…?〕

「ありのままでいいんだろう?」

〔それは、もちろん…〕

「うん それなら、君もそうして」

〔…はい!〕


【祥太朗point of view】


さて、と

「さ、送るよ」

〔え…?〕

「ん?」

〔あ、いえ…〕

「そうだ この靴、履いて帰るといい」

〔え、っと、これは…〕

「君に似合うかと思って、ね」

〔うれしい…ありがとうございます!あの、でも

私、誕生日とかではないんですが…〕

「?知っている それはまた、その時にでも」

〔すみません…ありがとうございます!〕


タクシーを呼んで、彼女を送る

彼女が部屋に入るのを確認して、

僕はまた自分の部屋に戻った


ふぅ…


彼女といると、疲れてしまう


大事にしたいという気持ちはあるが…


さっきも、帰りたくないのに!って顔をしてたのに

結局自分の意見は言わなかった


ありのままでいい、と言ったのにな…


僕の虚像を見つめて、

僕に似合うように、なんて

そんなものを求めているわけじゃないんだ


帰りたくないとか

まだもう少し一緒にいたいって言ってくれれば

どんなに良かったか


はぁ…


このままではいけないんだろな

次のデートの時にでも

話さないと…

こういうのは目を見て話さないと伝わらないからな


【皐月point of view】


もっと一緒にいたかったなぁ…

それでも、言えなかった

呆れられたくない…嫌われたくない…


靴はうれしかったけど…

可愛らしいパンプスは、

子どもっぽく見られているみたいで

少し…切なくなった


背伸びしても、手が届かないのかな…




【次の土曜日】


〔祥太朗さん!〕

「やぁ 待たせてしまったね すまない」

〔あ、いえ 私が早く着いてしまって…〕

「履いてくれているんだね それ」

〔はい!ありがとうございます!可愛くて…〕

「…うん じゃあ、行こうか」

〔はい!〕


今日は手を繋いでくれないのかな…

歩幅は合わせてくれているけど…

〔あ、あの 祥太朗さん〕

「なんだい?」

〔…あの…手を…〕

「あ、すまない…どうぞ?」

〔はい!うれしい〕


よかった…ドキドキしちゃった…

「それで?今日は何が見たいんだったかな?」

〔あ、えっと…〕

「うん」

忘れちゃったのかな…

「映画を観たくて…〇〇っていう…」

〔本当にそれで良かった?〕

「え?」

〔君の観たいものでいいんだよ〕

「…あっ、と、それなら…」

〔うん〕

「□□□が…観たくて…」

〔うん、それにしようか〕


祥太朗さん…今日はどうしたんだろう…

私に選ばせてくれてるのかな


席についた私達は、

飲み物を片手に始まるのを待った

「…」

〔祥太朗さん〕

「ん?」

〔あの…〕

「どうしたの?」

〔手、つなぎたくて…〕

「いいよ、はい」

〔ありがとう〕

ホラー映画選んじゃった…怖すぎたらどうしよう…

「もっとくっつかなくていいの?」

耳元でコソッと囁かれた私は、

自分でも真っ赤になってるってわかるくらい ドキドキしてしまって


〔…怖かったときに、抱きついてしまったらごめんなさい〕

「もちろん、そうしてくれていいよ」

〔…!ありがとう…祥太朗さん〕


…めちゃくちゃ怖い…

失敗したかも…

大きな声を出さないように気をつけながら

祥太朗さんに抱きついていた

その度に、

「大丈夫だよ」って小声で言ってくれて


優しい…好き…


「…大丈夫かい?」

〔怖かったです…〕

「それはわかっているよ」

〔でも楽しかった!〕

「…それなら良かった」

〔祥太朗さんが手をつないでいてくれたからですよ ありがとうございます〕

「手だけじゃなくて、

ずっと抱きつかれていたなぁ?」

〔…す、すみませ…ん…〕

「はは いいんだよ さて、食事の予約をしてあるんだ 行こうか」

〔はい!〕




少し歩くみたい

手をつないで、ゆっくり歩いている時


前から女性が1人歩いてきた


「あ…」

え…?

祥太朗さんの顔が変わった

祥太朗さんの目が、振り返って彼女を捉えてる


…きっと、この時

祥太朗さんは彼女に恋に落ちたんだと思った


私には見せたことのない…

素敵な横顔だったから…


この人と並んだ2人を想像してしまう


あぁ…なんてお似合いなんだろう


〔…〕

「…え、どうした?」

立ち止まってしまった私を気にしてくれているのに

私は…うまく笑えなくて

〔今日は…帰ります〕

「え?」

〔映画、観に行ってくれてありがとうございました〕

「ちょっと…」

〔ごめんなさい〕

走ってその場を後にした


           ..

祥太朗さんは、きっと彼女を追いかけるーー




「待って!」

後ろから腕を引かれる

〔え?〕


「はぁ、はぁ…一体どうしたっていうんだ?」

〔どうし…て…?〕

「どうしても何も、君が急に走り出したから追いかけてきたんだが…?」

〔いや、だって…さっきの人のこと…〕

「さっきの人?誰のことだ?」

〔え!?いや、さっきすれ違った女性のこと、

ずっと、見てたじゃないですか…〕

「?僕が見ていたのは、ハイヒールだよ」

〔…え〕

「君が先週履いていた物だった

僕は君が無理して履いていると決めつけてしまったけど、流行っていたとしたら…

君が好きで履いていたのかもしれないって思って」

〔え…〕

「それで?どうして急に帰ろうとしたのか

説明してもらおうか?」

〔あ…あの…〕

「…」

〔ごめんなさいっ!その人のことを好きになったんだと思って…〕

「は?」

〔…綺麗な…人、だったから…〕

「はぁ…もういい とりあえず食事に行こうか」

〔え?あ、あの…〕

「帰さないから」

〔え!?祥太朗さん…!?〕

「僕の彼女は自分に自信がないのか…僕の気持ちを

何にもわかろうとしてくれないからね

ちゃんとわかるまで話し合おうね?

時間はたくさんあるんだから」

〔…は、はい…〕


どうやら、私の早とちりだったみたいで…

あんなに焦ったり悲しい顔をしている祥太朗さんを見たのは初めてだった…


手をつないで、というより

腕を絡ませて…逃げられないようにされてる?


予約したというお店に着いて、

自分で選んでと言われて

ちゃんと自分の好きなものを選ぶと

いつもの優しい笑顔に戻ってくれた


「君はいつも僕に選ばせていたからね…

これからは自分の好きなものを選んでほしい」

〔はい…〕

「あと、大きな口を開けて食べてるのを可愛いと

思ってるのに僕の前ではしてくれないのも不満だ」

〔え…み、見てたんですか…!?〕

「そりゃあ、彼女の一挙手一投足を見逃すわけがないだろう?」

〔はい…〕

「やっと映画で少し近づいたと思ったのに…

まさか僕が彼女とのデート中に他の女性にうつつを

抜かす男だと思われていたなんてー 悲しいなー」

〔祥太朗さん…最後棒読みになってます…〕

「仮にそうだったとして、だ

君を捨てると思われてたということだろう?

不満だ」

〔はい…すみません…〕

「まぁ、それはおいといて 

ここね、前に接待で来ておいしかったから君を連れて来たかったんだ

ほら、食べよう?」

〔あ…ありがとうございます…いただきます〕


その後の食事はいつもみたいにおいしくいただいた

仲直り?出来てよかった…


〔今日もありがとうございました おいしかったです!着いたら連絡しますね〕

「何を言っている?」

〔え?〕

「帰さないと言ったと思うが」

〔え?それは、食事のことなのでは…〕

「まさか…帰るよ」

〔あ、待って…腕を引っ張らないでぇ…〕


【祥太朗point of view】


はぁ…まったく…

勘弁してほしい…


振られるかと思った…

こんなに好きなのに…どうして伝わってないんだ…


彼女に逃げられないように

腕をがっしり掴んで

タクシーに乗り込んだ


彼女は顔を真っ赤にしながら俯いているが…


すぐに到着して、部屋の中に連れてきた


「足は大丈夫なの?」

〔はい…!大丈夫です〕

「走らせてしまったからな すまない」

〔いえ、それは私が勝手に…〕

「頼むから…」

〔え?〕

「勝手にいなくならないでほしい」

〔祥太朗さん…〕

「捕まえられなかったらどうしようかと、気が気でなかった」

〔そんな風に言ってもらえるなんて…〕

「僕が君のことを好きじゃないと思ってたのか?」

〔好きじゃないというか…私だけが、好きなんだと…〕

「僕は好きでもない子を家にあげないし、

プレゼントなんてしない

食事だって二人きりでは行かないぞ」

〔…お言葉ですけど〕

「ん?なんだろうか」

〔祥太朗さんから、好きとかって言われたことないんですもん〕

「…言ってなかったか?」

〔はい〕

「…珈琲飲むだろう?今お湯を…」

〔祥太朗さん…!〕

「…後で、飽きるほど言ってあげる」

〔…!!〕

「逃げないでね?逃がす気はないけど」

〔…ずるいです〕

「なにがぁ?」

〔…もう!〕


好きって伝えてなかったんだっけ…

それにしたって、

行動には出てたと思うんだけどな


まぁ、それは後でしっかり

わかってもらうとして…


だいぶ打ち解けてきたんだろうか

彼女の話し方も変わってきたように思う


君は僕の彼女なのに

どこか手の届かない人のようだったから


こんなに好きにさせておいて…


もう紳士ぶるのは終わりだ


「ほら、こっちへ」

〔え…?〕

「おいで」

〔は、はい…〕

真っ赤になって俯く彼女の顎に指を添えて上を向かせる

〔祥太朗、さん…〕

ぎゅっと目を瞑る彼女が愛おしくて


…

でもまだしてあげない


〔…?祥太朗さん?〕

キスをしてこない僕に痺れを切らして目を開いたところで…

「好きだ…皐月…」

〔ん、ん…〕

目を瞑るなんて許さない

僕のこと、ちゃんと見て

「好きだよ…」

〔しょうたろ、さん…〕

「…」

〔…?〕

「さて…皐月?」

〔はい…?〕

「このまま…してもいーい?」

〔…!ぁ、えっと…〕

「ん?どうしたい?」

〔いじわる…〕

「意地悪な男は嫌いかな?」

〔…祥太朗さんは…好き〕

「ふ…それで?どうしたい?」

〔…祥太朗さんと…〕

「僕と?」

〔あの…〕

「うん」

〔…〕

涙目で訴えてくる 可愛い

本当は…もっと泣かせてみたい気もするけど

「あー…ごめんね 意地悪しすぎてしまったね


でもね、もう僕が我慢できない」

〔…え?〕

「ふふ 目、瞑らないで良く見てて

顔を隠しちゃだめだよ」

〔でも…〕

「…見てて」

〔は、い…〕


ーーーーー


〔あの…祥太朗さん…〕

「なぁに?」

〔怒って、ますか…?〕

「怒ってはいないが…嫉妬はしている」


彼女は僕が初めてだと思っていたのに…

いや、しょうがない

彼女には彼女の人生があったわけだから


でも…どうしようもなく

苛ついた

彼女に当たるわけにもいかないし…


〔祥太朗さん〕

「なんだい?」

〔"最初"はあげられませんでしたけど…

"最後"はもらってくれますか?〕

「…まだ付き合って日も浅いがプロポーズされたという認識で合ってる?」

〔…えっ!〕

「何を驚いている」

〔…確かに、最後っていうと…そういうことに…〕

「だろう?僕からしたかったんだが…君からというのも良いな」

〔えっ!?〕

「皐月」

〔はい…〕

「君の最後の男になれるように努力しよう」

〔祥太朗さぁん…〕

「ふ…可愛いなぁ 本当に」


泣かれてしまった

思っていたのとは違う"泣き顔"ではあるけど

これはこれで良いか



ーー今カノEND




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


↷彼女は走って帰ってしまった


僕は…今すれ違った人が気になって仕方なくて

気づいたら走って追いかけていた


…

「待って!」

《…》

「久しぶりだね 葉月…戻ってきていたのか」

《…覚えていてくれたのね 祥太朗》

「忘れるもんか…」

《先ほど一緒にいた女性はどうしたの?》

「帰った」

《…罪作りな人ね》

「…時間は、あるだろうか」

《えぇ…私で良ければ…》

「…」


差し出した手はすぐに繋がれて、彼女と歩き出す


彼女は…元カノだ

二年前に遠距離が原因で別れた

嫌いで別れたんじゃないから

ずっと忘れられなかった


足早に僕の部屋に連れてきた


先ほどまで一緒にいた"彼女"のことなんて何もなかったみたいに

今、目の前にいる彼女を夢中で貪る


《祥太朗…っ》

「あぁ…葉月…愛してるよ」

《…愛してる…》

「僕も…っ、…」


もう二度と離してなるもんか

君がそばにいてくれるなら

もう何も…


〔祥太朗さん!〕

頭の中に一瞬思い浮かんだ"彼女"を打ち消すように

葉月を何度も、何度も…


ーーーーー


《もう離さないで》

「あぁ…約束する 愛してるよ 葉月」

《うん…私も愛してる》


愛しい人を抱きしめながら

早く"彼女"に別れの連絡をしないと…


その事しか頭になかった



ーー元カノEND


    

                    Fin…



こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。

再編集して投稿しております。

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