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読み切り短編集  作者: おしるこ


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めぐり逢い

嫌な予感がした


こんな朝方に、どうして人が一人で橋の上なんかにいるんだ…




俺は休みの日の日課のジョギングのために

早く起きて走っていた


?…誰かいる…?こんな時間に…?


ホラーやオカルトはノーセンキューだぞ…

そんなことを思いながら、近づいていくと


その人影はどうやら生身の人間のようだった


ボーッと1点を見つめながら、静かに涙を流した女性だった


足元に花が手向けられており


あ…知り合いがここで…?

ということなんだろうと、なんとなく察した


俺が走ってきたことには気づかなかったようだが、

通り過ぎようとした時


あっ!!!


「だめだっ!!」

〔…え…?〕


スーッと引き寄せられるように

橋の欄干に近づいて手をかけようとする彼女の腕を引っ張った


〔…あれ…私…〕

「無意識だったのか…?」

〔…わかりません〕

「家は近いの?一人で帰れる?」

〔…帰っても…ひとりぼっちなんです〕

「そうか 一つだけ確認させてくれ

今すぐにそっちに行く気はないんだよね…?」

"そっち"という言葉に、ビクッと反応した彼女は

〔…ご迷惑はおかけしませんので…〕

と呟くように言った

「俺で良かったら、話、聞くけど」

放っておけないと思った

〔あ…いえ…そんなことまでしていただくわけには…帰りますから…大丈夫です〕

「…俺さ、こういうモンなんだ」

ウエストポーチに入れていた名刺を渡す

〔…!警察の、方なんですね…〕

「そ!あそこの交番にいるから、何かあったらいつでも来てくださいね」

〔ありがとうございます…〕


無理やりにでも家まで送った方がいいかとも思ったが…

成人している女性だし

意識もしっかりしていた


…踏み込まれたくないこともあるだろう


確か…半年前だったか、この時間にここで亡くなった男性がいたな…


その彼の関係者だろうか


あの橋…しばらく注意しておいた方がいいかもしれない


その次の日

交番にいたら、彼女がきた


〔…本当に…おまわりさんだったんですね…!?〕

「はは…このご時世だからね、その気持ちはわかるよ どう?少しは落ち着いた?」

〔はい…昨日は、ありがとうございました〕

「…で、あの時間にどうして?」

〔…〕

「…」

聞かないわけにはいかないんだ、すまない

相棒はパトロール中だし、今は一人だ

聞くなら今だ、と思った

〔あの時間、だったんです

主人の帰りが遅いなって思ってはいたんですけど…

たまにはそんな時もあるのかなって…

その日に限って…連絡しなかったんです…

そうしたら、朝…警察の方が家にいらして…〕

「…つらかったね」

〔私が早く連絡さえしていれば…彼はそれを選ぶことはなかったんでしょうか…〕

「…一つ、言えることは」

〔…はい〕

「君がそうやって、彼のことを悼んでいることで

彼は安らかに眠れているっていうことだよ」

〔…そう、でしょうか〕

「わかったことを言うようですまない

でもね、亡くなった人の事を想うことは

その人にとってご供養になるんだよ」

〔…〕

「君がもし、後を追ってしまったら…誰が彼のことを思い出すの?誰がこうして偲んでくれる?」

〔…そう、ですね〕

「…辛くなったら、いつでも話を聞くから」

〔ありがとうございます…〕


そこから、

何日かおきに彼女が交番に顔を出すようになった

〔こんにちは!〕

「やぁ、ちゃんと食ってるか?」

〔はい!湊さんおすすめの定食屋さんに、ランチで行ってみました!〕

「あ、もう行ったの?何食べた?」

〔煮魚定食にしましたー〕

「あー俺も好きなんだよーいいなー食いたい」

〔おいしかったですよー!〕

顔色もいい

元気そうにしているから もう安心


ーーーではない


こういう時が一番危ないといってもいいくらいだ


その3日後あたりだったか

俺が走っていると 花を持った彼女がいた


「一緒に行こうか」

〔…湊さん…どうして…?〕

「この間話しただろう?ここは俺のジョギングコースなんだよ」

〔あ…〕

「…そんな暗い顔してどうした?彼が心配するぞ」

〔…思い出してしまって〕

「…」

〔美味しいものを食べてる時、楽しい話をしている時、あぁ、ここにはもう彼はいないんだ…って

一瞬でも考えてしまうと…〕

「…そんな時はどうしろって教えた?」

〔湊さんに…〕

「うん いつでもいいと、言ってあっただろう?」

〔はい…〕

「さて、一緒に手を合わせようか」

〔はい〕


頼むから…連れて行かないでくれ…

彼女は、少しずつ…少しずつだが

前を向こうとしているんだ…頼む


〔…ありがとうございます 湊さん〕

「ん?」

〔警察の方って、こんなに親身になって寄り添ってくださるんですね〕

「んー…」

〔?〕

「そりゃ、俺も男だからね 下心がまったくないと言ったら嘘になるかなぁ」

〔…えっ!〕

「はは、冗談だよ でも、そうだなぁ

仕事だから、というだけではないかな」

〔…湊さん〕

「ん?」

〔ありがとうございます

いつも気にかけてくださって…〕

「…」

頭をくしゃくしゃっと撫でた

〔もぉー!湊さん!〕

「さ、行こうか 送る」

〔…はい〕


彼女の名前やその他もろもろの情報は敢えて聞いてはいない

本当は…聞きたいところなんだけどね


俺のブレーキが、効かなくなりそうだから

家に来たのもこの時が初めてだった

もちろん、部屋にあがる気なんてなかった


〔ここ、なんです〕

「そうか じゃあ、俺は…」

〔湊さん〕

「ん?」

〔あがっていきませんか〕

「いや、それはさすがに…」

〔…私、一人でいたら…何をするかわかりません〕

「…ずるいだろ、それは」

〔コーヒー淹れます〕

「…じゃ、少しだけ」


冗談なのか本気なのかわからなかった、なんてのは

嘘っぱちだ


あがってと言われて嬉しくなった

好きだという感情が溢れそうになる


部屋にお邪魔するのに

手を合わせたいと思ったんだが


あれ…仏壇とか、それらしきものが見当たらない


キョロキョロしていたら

彼女がコーヒーを持ってきた

〔…彼のご両親が…私のところにあったら、今後のためにならないって…連れて行ってしまったんです〕

「そうか…」

仏壇がないから…だから、わざわざ橋の上まで…

彼の最期の場所なんて…つらいだろうに…


〔どうぞ〕

「ありがとう」

〔…姻族関係終了届も出すように言われてしまって〕

「…うん」

〔これで、私と法的に繋がっていた人は誰もいなくなっちゃいました〕

無理して笑う彼女を見て

思わず抱きしめてしまったんだ


〔湊…さん…〕

「つらかったな…」

〔…っ、く…〕

しばらく背中をトントンってしながら

泣き止むまで 

「俺が…そばにいる」

そう、言っていたと思う


それから俺達が結ばれるのに時間は必要なかった


彼女…臼井玲美は俺に縋ることでしか

前を向けなかっただけかもしれない


それでも俺は…


エゴだと言われようがなんだろうが

彼女を一人にはしておけなかった


もう、彼女に惚れていたんだから



それから、一緒に住み始めて半年

彼女が朝方に外に出ることはなくなった


彼女は

手を合わせに行くときは、俺と一緒に

という約束を守っている


月命日には、2人で手を合わせに行っている


俺は、彼女と一緒にいられるなら

それだけで良かった


彼女の心の中に、ずっと彼がいたとしても


失うのだけは…嫌だったから

大切な人を失うなんて…

もう、二度と…


〔湊さん、おはようございます〕

「…うん、おはよう」

〔ご飯できてますよー〕

「ん…いただくよ いつもありがとうね」

〔あの、湊さん〕

「ん?」

〔今日…早く帰って来てもらえませんか?〕

「もちろん、終わったらすぐに帰るけど…どうかしたの?」

〔…後でのお楽しみです!〕

「なんだぁ?楽しみにしておくよ」

〔はい!〕


なんだろ…誕生日が近い、とかかな

俺のはまだ先だし…

やべぇ!そういえば確認してなかったぞ


「じゃ、行ってくる」

〔いってらっしゃい!…あ〕

「ん?」

〔忘れ物…〕

「え!?何か忘れたか?」

これはアレだな… ちゅーだろ?

〔はい、ハンカチ〕

「…ちゅーじゃないのかぁ」

〔…ちゅーも…〕

「ありがとう!頑張れるよ じゃ、行ってくる」

〔はい…!〕




なんだろ…後でのお楽しみかぁ


今日は日勤だからな

それは、俺のモチベーションアップに繋がって

時間までにしっかり事務作業も終わらせた


「じゃあ、上がりますーお疲れっす」


さて、帰るか

"今から帰るよ"

すぐに返事が来た

"気をつけてくださいね 待っています"


Rileも送ったし、急いで帰ろう…と思ったけど

良いことみたいだもんな…

ケーキとか買って帰るか…?

あ、いや…良いことだったら…

用意してあるかもしれん


早く帰ってきてって言ってたんだ

早く帰ろう


「ただいまー」

〔おかえりなさいっ〕

「どうしたんだー?」

〔今日は…ケーキを用意してあるんです〕

あぶねー!買ってこなくて良かったー!

「お祝いかぁ!?なになに?」

〔これ…見て、気づくことありますか?〕

「ん?」

誕生日ではないな…この絵は…赤ちゃん?

「もしかして…おめでた…か!?」

〔はい…あの…よろこんで…くれますか…?〕

「当たり前だろう!?そうか…ここに、俺達の子が」

彼女のお腹を撫でる

〔良かった…〕

「よろこばないと思われてたのかー?泣くぞ」

〔あ!違うんです…私で、いいのかと思って〕

「他に誰がいるんだ いいに決まってるし、いてくれないと困る つか、泣く」

〔泣かないで〕

「あーでも、本当に泣きそうなくらい嬉しいぞ」

〔湊さん…〕

「玲美、結婚しよう」

〔…はい!〕

「あ、彼にも報告しに行こうか」

〔その事なんですけど…〕

「うん?」

〔もう、忘れ「だめだよ」

〔湊さん…〕

「彼は、俺にとっても大事な人になってるんだ

ずっと、忘れない 玲美も忘れる必要はない」

〔ありがとう〕


きっと、不安だったんだろうな…

その日の夜 泣きながら話してくれた


結婚するなら、忘れなくちゃいけないって思ってたって


もちろん、俺のことを愛してくれてるけど

彼のことはずっと忘れたくないって




それでいいんだよ、そう言うと

ありがとう…って抱きついてきた




人にはその人の生きてきた道筋があって

それまでに出逢った人や出会った事で出来ている


玲美にとっての彼のように

忘れられない人や想い出があって当たり前


彼女が俺のそばにいて元気に笑ってくれているなら

それで良い


 

【臼井玲美視点】


どうして…

私を置いていったの?


私では、あなたの力になれなかった…?



半年前

私の最愛の主人がいきなりこの世を去ってしまった


この半年…

その事実を受け入れなくてはいけないという想いと

受け入れなくない、信じたくないという想いで

心の中がいっぱいで


ここに来たら


あなたに逢える気がして


〔しばらく来られなくてごめんなさい

いろいろと…立て込んでしまって…

あのね…〕


だめだ…彼のご両親に言われたことを話すわけにはいかない…

彼に心配をかけてしまう…




…彼はもういないのに


そうだ、私は…ひとりぼっちなんだ…


あれ…あなた…?そこにいるの…?

彼が手を差し出してくれた気がして


一歩一歩、歩き出す


待って…もう置いていかないで…っ


「だめだっ!!」

〔…え…?〕


誰…?知らない男性に腕を引っ張られて

私の意識が、そこに戻った


〔…あれ…私…〕

「無意識だったのか…?」

〔…わかりません〕

「家は近いの?一人で帰れる?」

〔…帰っても…ひとりぼっちなんです〕

「そうか 一つだけ確認させてくれ

今すぐにそっちに行く気はないんだよね…?」

"そっち"…っ 私は…何をしようと…?

〔…ご迷惑はおかけしませんので…〕

「俺で良かったら、話、聞くけど」

〔あ…いえ…そんなことまでしていただくわけには…帰りますから…大丈夫です〕

「…俺さ、こういうモンなんだ」

名刺…?その名刺には"巡査 南後 湊"と書いてあった

〔…!警察の、方だったんですね…〕

「そ!あそこの交番にいるから、何かあったらいつでも来てくださいね」

〔ありがとうございます…〕


飛び降りようと…していた…

助けてくれた男性は、警察の人だという


…本当、なのかな


こんな時間に…何をしていたんだろう

制服も着てないし…休み…?


そんなことを考えながら、部屋まで戻る


戻ったって…誰もいないのに


うつらうつらと…眠気がやってきた頃

頭に浮かんでいたのは、

さっきの男性だった


その次の日

交番に行ってみたら、昨日の人がいた


〔…本当に…おまわりさんだったんですね…!?〕

「はは…このご時世だからね、その気持ちはわかるよ どう?少しは落ち着いた?」

〔はい…昨日は、ありがとうございました〕

「…で、あの時間にどうして?」

〔…〕

やっぱり聞かれるよね…ちゃんと答えなきゃ

「…」

〔あの時間、だったんです

主人の帰りが遅いなって思ってはいたんですけど…

たまにはそんな時もあるのかなって…

その日に限って…連絡しなかったんです…

そうしたら、朝…警察の方が家にいらして…〕

「…つらかったね」

〔私が早く連絡さえしていれば…彼はそれを選ぶことはなかったんでしょうか…〕

「…一つ、言えることは」

〔…はい〕

「君がそうやって、彼のことを悼んでいることで

彼は安らかに眠れているっていうことだよ」

〔…そう、でしょうか〕

「わかったことを言うようですまないが

でもね、亡くなった人の事を想うことは

その人にとってご供養になるんだよ」

〔…〕

「君がもし、後を追ってしまったら…誰が彼のことを思い出すの?誰がこうして偲んでくれる?」

〔…そう、ですね〕

「…辛くなったら、いつでも話を聞くから」

〔ありがとうございます…〕


そこから、

何日かおきに交番に顔を見せに行くようになって…

〔こんにちは!〕

「やぁ、ちゃんと食ってるか?」

〔はい!湊さんおすすめの定食屋さんに、ランチで行ってみました!〕

「あ、もう行ったの?何食べた?」

〔煮魚定食にしましたー〕

「あー俺も好きなんだよーいいなー食いたい」

〔おいしかったですよー!〕


そう言って笑ってくれる湊さんに会えるのが嬉し…



え…私、いま…何を言おうとしてた…?


彼がいなくなってから、まだ半年なのよ…


私だけ…幸せになるなんて…

そんなこと、いけないはずなのに…


湊さんがいてくれることが…

私の心の支えになっていることに気がついた



…それでも…彼に悪いことをしているようで

お花を持って謝りに行こうと思った


彼は…許してくれるだろうか…


そんなことを考えながら歩いていたら…

「一緒に行こうか」

安心できる声がした

〔…湊さん…どうして…?〕

「この間話しただろう?ここは俺のジョギングコースなんだよ」

〔あ…〕

「…そんな暗い顔してどうした?彼が心配するぞ」

〔…思い出してしまって〕

「…」

〔美味しいものを食べてる時、楽しい話をしている時、あぁ、ここにはもう彼はいないんだ…って

一瞬でも考えてしまうと…〕

「…そんな時はどうしろって教えた?」

〔湊さんに…〕

「うん いつでもいいと、言ってあっただろう?」

〔はい…〕

「さて、一緒に手を合わせようか」

〔はい〕


本当のことなんて言えなかった

湊さんには、絶対に


湊さんは、お仕事でこうしてくれているだけ


そう言い聞かせながら、

湊さんにお礼を言った

〔…ありがとうございます 湊さん〕

「ん?」

〔警察の方って、こんなに親身になって寄り添ってくださるんですね〕

「んー…」

〔?〕

「そりゃ、俺も男だからね 下心がまったくないと言ったら嘘になるかなぁ」

〔…えっ!〕

う、嘘…

「はは、冗談だよ でも、そうだなぁ

仕事だから、というだけではないかな」

〔…湊さん〕

「ん?」

〔ありがとうございます

いつも気にかけてくださって…〕

「…」

頭を撫でてくれた…この手が…私は…

〔もぉー!湊さん!〕

「さ、行こうか 送る」

〔…はい〕


…

私、湊さんが…好き、なんだ…


一度自覚してしまうと、

もう止められなくて…


〔ここ、なんです〕

「そうか じゃあ、俺は…」

〔湊さん〕

「ん?」

〔あがっていきませんか〕

「いや、それはさすがに…」

〔…私、一人でいたら…何をするかわかりません〕

「…ずるいだろ、それは」

〔コーヒー淹れます〕

「…じゃ、少しだけ」


無理やり、部屋に上がってもらった


ごめんなさい…

ご迷惑だとは思うんですけど…

少しだけ…

もう少しだけでいいんです…


そばに…いてくれませんか…



コーヒーを淹れて戻ったら、

湊さんがキョロキョロしている

何かを…探してる…?

あっ…彼の…?

〔…彼のご両親が…私のところにあったら、今後のためにならないって…連れて行ってしまったんです〕

「そうか…」

やっぱり彼のことだった

手を合わせてくれようとしてたんだ…


〔どうぞ〕

「ありがとう」

〔…姻族関係終了届も出すように言われてしまって〕

「…うん」

〔これで、私と法的に繋がっていた人は誰もいなくなっちゃいました〕

湊さんは優しすぎるから

これ以上心配かけたくなくて

無理やり笑顔を作ったんだ


そうしたら…抱きしめられていて…

〔湊…さん…?〕

「つらかったな…」

〔…っ、く…〕

「…」

あぁ…安心してしまう…

涙が止まらなくなってしまって…

湊さんはしばらく背中をトントンってしてくれてる

「俺が…そばにいる」

そう、言ってくれたことが

嬉しくて…嬉しくて…


私、ひとりぼっちじゃなかったんだ…


その日、私達は結ばれた


本当に嬉しかったの

でも…湊さんにとっては…どうかわからなくて


ただ、今は

今だけは…あなたのそばにいたかった



それから、湊さんと一緒に住み始めて半年が経った


月命日には2人で手を合わせに行っているんだけど…

もうそろそろ…

彼のところに行くのも…終わりにしなくちゃだめなのかな…


湊さんのことは、本当に好き


でも…だからと言って、彼のことを忘れて…

なんて…私には…


もちろん、湊さんはそんなことは言っていないし

きっと言わないと思う

優しい人だもの


だから…

私から、言わなくちゃ…いけないんだよね…?


これからのことを考えたら

そうしなくちゃ…


〔湊さん、おはようございます〕

「…うん、おはよう」

〔ご飯できてますよー〕

「ん…いただくよ いつもありがとうね」

〔あの、湊さん〕

「ん?」

〔今日…早く帰って来てもらえませんか?〕

「もちろん、終わったらすぐに帰るけど…どうかしたの?」

〔…後でのお楽しみです!〕

「なんだぁ?楽しみにしておくよ」

〔はい!〕


楽しみにしてくれている、という湊さんが

本当に嬉しそうにしてくれているから

少し、安心している


帰ってきたら話すことを

よろこんで…くれますように…


「じゃ、行ってくる」

〔いってらっしゃい!…あ〕

「ん?」

〔忘れ物…〕

「え!?何か忘れたか?」

これはアレだな… ちゅーだろ?

〔はい、ハンカチ〕

「…ちゅーじゃないのかぁ」

〔…ちゅーも…〕

「ありがとう!頑張れるよ じゃ、行ってくる」

〔はい…!〕


もう…湊さんったら…

私、すごく幸せです

湊さんのおかげです…


…大丈夫かな…少し…不安になってきた


ううん…湊さんなら…

きっと…大丈夫…


私は、家事や買い物をしながら

帰りを待った


"今から帰るよ"

Rileが来た!

あの日から、必ず送ってくれるRile


私が安心できるように、いつも気を配ってくれる

"気をつけてくださいね 待っています"


「ただいまー」

〔おかえりなさいっ〕

「どうしたんだー?」

〔今日は…ケーキを用意してあるんです〕

「お祝いかぁ!?なになに?」

〔これ…見て、気づくことありますか?〕

「ん?…もしかして…おめでた…か!?」

〔はい…あの…よろこんで…くれますか…?〕

「当たり前だろう!?そうか…ここに、俺達の子が」

お腹を撫でてくれている

〔良かった…〕

「よろこばないと思われてたのかー?泣くぞ」

〔あ!違うんです…私で、いいのかと思って〕

「他に誰がいるんだ いいに決まってるし、いてくれないと困る つか、泣く」

〔泣かないで〕

「あーでも、本当に泣きそうなくらい嬉しいぞ」

〔湊さん…〕

「玲美、結婚しよう」

〔…はい!〕

「あ、彼にも報告しに行こうか」

〔その事なんですけど…〕

「うん?」

〔もう、忘れ「だめだよ」

〔湊さん…〕

「彼は、俺にとっても大事な人になってるんだ

ずっと、忘れない 玲美も忘れる必要はない」

〔ありがとう〕


湊さんは…心からそう思ってくれていたんだ

彼のことも大事だと言ってくれて…

本当に嬉しかった


この人となら

また、幸せになれる…


そう、思った


湊さんと私と、この子…そして、彼も


私にはたくさんの家族が出来たんだ


「愛してるよ 玲美」

〔湊さん…愛してます〕


 

そういえば…

湊さんの待ち受け画面…若い男性が写ってる…


「気になる?」

〔あ、ごめんなさい…じーっと見ちゃって…〕

「俺の同期なんだ 殉職してね」

〔…そうだったんですね〕

「大事な仲間だし、それにお守りにしたくて写真をいただいたんだ」

〔…お守り?〕

「うん この仕事はさ、どうしても危険を伴うことも多いだろう?だから、俺のことを守ってくれってお願いしてるんだ」

〔そうだったんですね…今度、お墓参りに行きましょうか 私もご挨拶したいです〕

「ありがとう アイツ、驚くだろうなーこんな可愛い子を連れてったら」

〔湊さんったら…もう…〕


「もう、二度と 大切な人を失いたくない

俺も、君にそんな想いはさせたくない」

〔はい…私もです〕

「…」

湊さんは、私の頭をくしゃくしゃっと撫でた



タイトル〘めぐり逢い〙


 

                     Fin…


こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。

再編集して投稿しております。

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