美男と野獣【BL】
「松崎さん!だからっ!何回備品を壊したら気が済むんですか!?」
〚すまん…〛
《森野さん…落ち着いてくださいよぉー…
松崎さんだって、わざとやってるわけでは…》
「ほんっとに…フォローしてるこっちの身にもなってくださいよ… ほんと…何やらしても…」
《言い過ぎですってば!》
〚…っ、すまん…〛
「筋肉バカかよ…ったくもう!!…あ」
やってしまった…
松崎さんが部屋を出ていった
僕だってここまで言うつもりはなかったんだ
《松崎さんに謝らなくていいんですか…?》
相田くんがオロオロしながら話しかけてくる
「…謝る、けど…ちょっと頭を冷やしてくる」
僕は部屋を出ると屋上に向かった
あー…寒いな
季節は冬に差し掛かろうとしている
でも…頭を冷やすならこのくらいの気温の方が涼しくていいだろう
…わかっているんだ
あの人がわざとやってるわけではないってことくらい そんなこと…僕が1番…
忙しすぎて機嫌が悪くなって八つ当たりしたんだ…
〔あーいたいた〕
「課長…さっきはすみませんでした」
〔それは松崎に直接な 寒いだろ、風邪をひくぞ〕
「頭を冷やしてるんです」
〔…風邪なんかひいたら、松崎が気にするぞ〕
「…」
〔あれな、鈴木さんが壊したのを庇ってたんだそうだぞ〕
「…!」
〔あいつ、俺は壊し慣れてるからって 鈴木さんが泣きながら謝るから庇ったんだろう〕
「あ…よく話しも聞かないで…八つ当たりしてしまって…」
〔気持ちはわかる 物が壊れるのはよくあることだし、さっきも3ヶ所直した直後だったしな〕
「…いえ」
〔今はただでさえ忙しいからな…人手を確保できるように動いてはいるから、もう少し辛抱してくれ〕
「すみません…」
〔さ、ほら 本当に風邪をひくぞ 部屋に入れ
あーさむ…〕
「はい」
そうだ…松崎さんは、"そういう人"なのに
僕は…
早く松崎さんに謝らないと…
《あ、森野さん》
「松崎さんは?」
《まだ帰ってきてませんよー》
「そう…帰ってきたら連絡くれる?」
《わかりましたー》
さてと…今日はまだまだ仕事が残ってるんだ
ふぅー
ちょっと風にあたりすぎたな 早く戻らないも
【松崎point of view】
好かれてはいないと思っていた
俺は何回も備品を壊してきたし…
まぁ…俺は怒られ慣れてるし
あの子は初めてのことでびっくりしたんだろうし
…何をやらしても…ってのは、ちょっとキタけどな
森野くんは、庶務課に所属していて
文書・備品管理、会議の準備…それこそ何でもこなす
俺達との関わりも深い
最近、庶務課の人が2人一気に辞めてしまったらしく
そのしわ寄せがすべて森野くんに集中していた
そうだ…あのくらい、言いたくもなるよ
あんなことくらいで、落ち込んでどうする
それこそ落ち込んだところなんて見られでもしたら…気を遣わせるじゃないか
"パァンッ"
両手で頬を叩く
よしっ!気合い入った!
もう昼休みだ あっ…良いこと考えたぞ…
〚課長!〛
〔おぉ、松崎どうした?〕
〚俺になんか手伝えることないっすか!?〛
〔え…?〕
…結構大変なんだな
蛍光灯を取り替えたり
備品の補充、各部署への郵便の仕分け…
この大荷物のカートを押しながら
こうして各署を回るだけでも骨が折れるな
まぁ、俺は体力だけはあるからな
森野くんは毎日1人でこなしてるんだよな…
「松崎さん!?やっと見つけた!何してるんですか!」
〚あれ?森野くん、どうしたの?〛
「どうしたの?じゃないですよ…今昼休みですよ!?ご飯食べたんですか?」
〚あ、忘れてたな〛
「まったく…休憩時間なのに…ほら!行きますよ」
〚え?まだやることあった?〛
「ご飯食べに行くんですよ!」
〚あ、これ戻さないと…〛
「端に置いておけばいいです ほら、これ」
【離席中】と書かれた小さいプレートを掛ける
ほぉー普段こうしているんだなぁ…
なんて思ってたら、腕を引かれて連れて行かれた
〚ちょっとちょっと、ちゃんと行くから〛
「…」
〚はは…強引だなぁ 森野くんは〛
森野くんの行きつけだという定食屋は
メニューも豊富だし、安くて早くてうまいなぁ
〚ここ、また来ようかなぁ〛
「…おいしいでしょ」
〚うん こんなに近くにあったなんて知らなかったよ〛
「あの…さっきはすみませんでした」
〚何のこと?〛
「え?」
〚やー庶務課の仕事、大変だよなぁ 俺の出来そうなものしかやらせてもらえなかったけどさ
午後もさ、時間あるから手伝うよ!〛
「ありがとうございます…」
〚こういう時はお互いさまだよ!明日からも何でも言ってよ ね?〛
「…ごちそうさせてくださいっ!!」
あぁ…気を遣わせてしまった
俺、歳上なんだけど…
2人前食っちゃったし…
そんなことして欲しくて手伝ってるわけじゃないんだけどなぁ
うまくいかないな…
【森野point of view】
こういう時はお互いさまだよ
何でも言ってよ
この人は…こういう人だ
みんなに優しくて…
僕が言ったことなんてなかったことみたいにして…
ランチをごちそうしたくらいでは全然足りないけど
松崎さんのお言葉に甘えて
午後も手伝ってもらった
そうか…こうして手伝ってもらうことも出来たのに
意地を張って、1人でやろうとして…
余裕がなくなって、八つ当たりして…
はぁ…何してるんだ 本当に
結局、今日やるべきことはあと1つまで終わった
〚次は何をやるんだい?〛
「これは僕の仕事ですから、大丈夫ですよ」
〚そっか…じゃあ、また何かあったら何でも言ってよ!楽しかったよ、ありがとう〛
「松崎さん…」
〚ん?どうしたの?〛
あ、あれ…何か…フラフラ、して…
〚え?森野くん!?森野…く…〛
【松崎point of view】
あっつ!!なんだこれ…熱…?
医務室に運ばないと…
よっと…
森野くんをおんぶして、医務室まで走る
えっ、軽すぎないか…?
《あれ?どーしたんです!?》
〚あ!相田くん!森野くんが熱出したんだ
庶務課に行って残りの仕事を課長にやってもらえるように話してくれ!俺、医務室行ってくるから〛
《わかりました!!》
"コンコン"
〚岬さん!〛
{あら松崎くん、めずらし…森野くんね?}
〚熱出したみたいなんだ、診てやってくれ〛
{こっちに寝かせて}
〚うん〛
…熱は38度、その他の症状は出ていないようだった
とりあえず、冷やして寝かせておくことにした
〚じゃ、森野くんを頼むね〛
{わかったわ}
さてと、俺は…とりあえず庶務課に戻って課長に報告するか
〚課長〛
〔森野くんはどうだった?〕
〚熱があるんで、医務室に寝かせて来ました〛
〔あーやっぱり風邪ひいたのか、すまなかったね〕
〚やっぱりって?〛
{彼ね、昼休みの前に屋上にいたんだ}
〚この寒いのに!?〛
{頭を冷やしたいからってさ}
〚あ、それなら俺のせいです〛
{いやいや、君たちはさー本当に…何で1人で背負おうとするんだ…ほんと似た者同士だな}
〚…そうですかね〛
{松崎も無理しないでくれよ 手伝ってくれる人がいなくなったら困る}
〚なんとかは風邪なんかひかないっすから!〛
{心強いねぇ}
〚あ、そうだ 最後の仕事ってなんだったんです?俺には出来ないみたいでしたけど〛
〔あぁ…発注だからね 大丈夫だよ、終わらせておいたから〕
〚そうでしたか、それなら良かった
じゃあ、目が覚めたら帰らせていいですよね?〛
〔うん 頼んでいいかい?〕
〚任せてください!〛
〔じゃあ、よろしくね そっちの課長には俺から
言っとくから〕
〚助かります!では、失礼します〛
良かった良かった
とりあえず医務室行くか
"コンコン"
{まだ目は覚めてないわよ}
〚そうか…〛
{そうだ、ちょっと留守番頼めない?}
〚ん?いいぞ〛
{すぐ戻るわ}
…森野くんは眠っている
無理してたんだなぁ
あんまり一人で背負い込まないでほしいな
俺だって…いるんだし、さ
【森野point of view】
…ん…ここは…医務室、か?
あれ…僕、何で…え?松崎さんが壁に寄りかかって寝てる…
{あら?目が覚めた?}
「あ、岬先生…あの、僕…」
{熱出して倒れたのを、この人が運んで来たのよ}
「そうだったんですか…迷惑かけちゃったな」
{気にしなくていいわよ バカ力なんだから}
「仲良いんですね?」
{腐れ縁よ…元カレなの}
「え!?」
{そんなに驚く?}
「いや、だって…美女と野獣みたいな…」
{あははっ…それ、あの頃もよく言われたけど…逆なのよ}
「え?」
{心はね、この人のほうがずっとピュアなの}
「…まだ、好きなんですか?」
{別れたのを後悔するくらいには、ね}
「どうして…」
{別れたのかって?んー…あの頃は、物足りないって思っちゃったのよね
この人のことを、ただ優しいだけって思ってた
それがどれほど幸せなことだったのか…
失ってから気付いたの}
「松崎さんなら、より戻してくれそうなのに…」
{言えばそうしてくれたでしょうけど…どちらにしても今はもう無理ね}
「?どうしてですか?」
{彼の心には他の人がいるから、かな?}
「そうですか…」
なんだろう
心がズキッと痛んだ気がした
〚ふわぁー…あ、目が覚めたのか!森野くん〛
「あ、松崎さん!すみません また迷惑を…」
〚いいんだ、そんなことは そうそう、目が覚めたら帰っていいって言われてるんだ 家まで送るよ〛
「え!?いやいや、いいです!大丈夫ですよ」
〚だめだ!いつまた倒れるかわからないだろう?
あ、家に俺のこと入れたくないか…
じゃあ、俺んちでもいいぞ!〛
「え?いや、そういうことでは…」
〚タクシー捕まえてくるから、準備しといてくれ〛
「あ、松崎さん!アプリで呼…あぁ、行っちゃった」
{まったく…騒がしいわねぇ}
「迷惑かけっぱなしになっちゃいました」
{んー…きっと、そんなことは、これっぽっちも思ってないと思うわよ じゃ、お大事にね?}
「え?はい…ありがとうございました」
入口まで歩いていくと
〚あ、言ってくれれば迎えに行ったのに〛
「大丈夫ですから…」
〚よし、行こう 俺んちでいいよね?〛
「え?いや、僕のうちで…」
〚俺、入ってもいいの…?〛
「当たり前じゃないですか…」
〚そっか!じゃあ、行こう〛
僕のうちに松崎さんを連れてきた
〚熱は…少し下がったか 俺何か買い物してくるよ〛
「…松崎さん」
〚ん?何だ?〛
「アプリで配達できますから…買いに行かなくても大丈夫なんですよ」
〚へぇー!そんな便利なものがあるのか!〛
「えっ!?使ったことないんですか?」
〚ないな!〛
「教えますよ!」
〚俺にわかるかなぁ〛
松崎さんのスマホにアプリをインストールしようとしたけど、重すぎて遅い…
ちょっと待って…いつのスマホ使ってるんだ…
「松崎さん…スマホ買い替えましょう、僕一緒に行きますから!」
〚まだ使えるぞ!?〛
「いつ壊れてもおかしくないですよ…画面にヒビ入ってるし…」
〚そ、そうか…元気になったら頼む〛
「はい!」
〚届いたらおかゆ作るよ キッチンを借りるが、いいか?〛
「すみません…お願いします」
〚任せてくれ!こういうのは得意なんだ!〛
岬先生が言ったこと思い出した
「すみません、松崎さんにこんなことまでさせてしまって」
〚何を言ってるの 当然じゃないか〛
「え?」
〚…元気になってほしいからさ〛
「…」
そんな顔して笑わないでくださいよ
期待しちゃいますよ…
〚あ!それより、もっと頼ってくれよ
何でも1人で背負い込むのはよくないぞ〛
「ありがとうございます」
〚うん!どんどん甘えてくれていいからな!
他のメンバーだっているんだしさ!〛
僕が甘えられる人なんて…あなたしかいないのに
「はい」
〚よーし…できたぞー 食べさせようか?〛
「じ、自分で…できますから」
〚そうか ゆっくり食べなよ
俺、キッチン片付けてくるから〛
「すみません」
【松崎point of view】
まぁ、伝わらないよな
君のことだからこんなに必死になってる、なんてさ
でもいいんだ
嫌われてはいなさそうだってことがわかっただけでも、充分だ
「松崎さん」
〚あれ?もう食べたの?早いね〛
「あ、いえ…あの…」
〚ん?〛
「僕…その…聞いちゃって」
〚うん?何を?〛
「…岬先生が…元カノって」
〚あぁ うん〛
「松崎さん、今好きな人とか…いるんですか?」
〚…何でそんなこと聞くの?〛
おいおい…どうすればいい?
目の前にいる、なんて言えないぞ…
「…」
〚…好きな人がいるのか?と聞かれたら
そりゃいるっていうけど…〛
「…」
そんな悲しそうな顔しないでよ
〚…その人はね、頑張り過ぎて倒れちゃうような人なんだ 本当は支えになりたいんだけどね〛
「!…あの…」
〚うん〛
「もし…その人が…あなたを好きだって言ったら…
付き合えますか?」
〚…〛
「…」
〚何て答えてほしいの?〛
「…っ」
〚君が好きだよ 付き合ってほしい〛
「松崎さん…」
〚これじゃあ…下心があるから家にまで着いてきたみたいじゃないか〛
「そんなこと…思ってません」
〚そうか よかった ほら…ゆっくり食べて まだ熱もあるんだから〛
「…食べさせて…ほしい」
〚…いいよ〛
あぁ…伝えちゃったな
ずっと隠しておこうと思ってたのに
「おいしい…」
〚だろう?俺料理は好きなんだ〛
「意外…」
〚よく言われたなぁ〛
「岬先生ですか?」
〚そう その顔で!?とかさ〛
「僕もちょっと思っちゃいました ごめんなさい」
〚ははは、いいよいいよ〛
「松崎さん」
〚ん?なんだい?〛
「もっと…甘えてもいいですか?」
〚…もちろん〛
「ありがとうございます…」
〚してほしいこと、何でも言ってくれていいぞ?〛
家事は得意だからな こう見えてもさ
「…じゃあ…
抱きしめて…キスして…?」
タイトル〘美男と野獣〙
Fin…
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