思いがけない掘り出し物【BL】
見たくないのに、君を目で追っている
君は、白いドレスを着て
大切な人のとなりで微笑んでいる
君のとなりには、僕がいたかったのに
…永遠に叶わない"それ"は、僕の心をグサグサと刺す
「いいかげん忘れろって…」
〔…なんだよ、いきなり〕
「どうせあの子のこと考えてんだろ」
〔…うるせ〕
「どうしたってムリなんだ どんだけ想ってたってお前がきついだけだぞ」
〔わかってんだよ…〕
「えぐいよなー…好きな女が"兄貴の嫁"なんて」
その単語だけは聞きたくなかった
友人の雅史を置いて 僕は仕事に戻る
いつもいつも、僕には手に入らないものを手に入れていく兄
顔の良さも、成績も、運動神経も、
両親からの寵愛も、
ーー彼女も…
僕がそう恨めしく思ってる事を知らずに、
優しく気を配ってくる兄
小さい頃から可愛がってくれているのはわかっている
勉強も見てくれた
遊んでもくれた
それでも…それでも…
彼女との交際が始まってから
僕から距離を置いている
兄は何も悪くないというのに
兄のとなりにいる彼女の笑顔を見たくなかったから
彼女との出逢いは、僕の方が先だった
彼女は僕のクラスメイトだったからだ
3年上の兄が、学校に車で迎えにきたときに
…一目惚れしたそうだ
地獄のようだった
彼女からは、兄の相談をされ
兄からは、彼女の相談をされ
両思いであることは明らかだったのに、
そう伝えなかった僕の思惑にも気づかずに
勝手に惹かれ合い、勝手にくっついていった
二人の関係はトントン拍子に進み
1年半後、結婚式を挙げるまでになる
それが昨日、だ
惹かれ合う二人ってのは、
何もしなくても出会ってしまうものなんだな…
僕とはそうじゃなかったんだから
もちろん諦めるべきで
忘れるべきで
兄弟として、うまくやるべき…
だとしても そんなに簡単に割り切れるものではなくて
あんなに幸せな二人を見せつけられても尚、
未だに一欠片も忘れられずに
彼女のことを考えている
〔家、出ようかな〕
「じゃー俺んち来いよ」
独り言にしては、声も小さかったはずなのに
それに反応したのは、雅史だった
〔なんでここにいるんだよ〕
「休憩中なんだよ!」
〔休憩し過ぎだろ…〕
「なぁ、来いって 家賃半分払ってくれ!」
〔お前の部屋…どこだっけ〕
「□▲の駅から10分」
〔ちょうどいいか…広いの?〕
「2DKだな」
〔それ、部屋余ってないだろ…〕
「余ってるよ 俺荷物少ねーもん」
〔ふーん〕
「考えといてよ 家賃半分!」
"ポンッ"と肩を叩いて去っていった雅史を見ながら
□▲かー
こっからも近いしな…
世話になろうかな…半分なら、出せるし…と前向きに考えていた
あの家から出られればどこでも良かった
週末になると訪れる二人に会わなくて済むから
〔お世話になります〕
「おう!よく来たな」
引っ越しと言っても、スーツケースに服やらなんやらを詰め込んだだけのことだが
〔…おい、部屋余ってねぇじゃん!〕
「んー?余ってるべ?」
〔いやいや…俺どこで寝んの!?〕
「ここ」
〔なんで男二人で同じベッドに寝なきゃならんのだ…帰る〕
「いいじゃん!住めば都、ってさ」
〔はぁ…〕
どちらの部屋も物がたくさんあって、
言ってることとまったく違う惨状に
頭を抱えたのだが…
まぁ、でも…趣味が同じ雅史との暮らしは
案外うまく回って
3日後くらいには快適だと思うくらいになっていた
「な!?俺んち来て良かっただろ?」
〔まぁな…〕
「よしよし こういうの、楽しいんだよなー」
〔友達同士のシェアハウスみたいな暮らしか?〕
「そうそう」
〔僕たちは趣味が合うからいいけど、合わなかったらきついんじゃないのか…?〕
「合わないなら、合わないなりにお互いに擦り合わせればいいだろ?」
〔そういうものか…〕
「現にお前だってうまくやろうとしてくれてるじゃんか?」
〔そりゃそうだろう?お世話になる身だし〕
「家賃半分持ってくれるのに、世話になるもなにもないだろ 楽にしろって 自分の部屋だと思って」
〔…ありがとう〕
「いいぞー今日の夜飯担当な!」
〔まったく…しっかりしてるな〕
料理は二人ともできないから、外食かテイクアウトして部屋で食べている
こういうのも、楽しいかもしれない
雅史が明るいから暗くならなくて済んでいるし
「祐二」
〔なんだ?〕
「これ、やる」
〔食えないの?ピーマン〕
「嫌いなんだよ」
〔…子どもかよ〕
「これも、これも…」
〔…〕
ピザを頼んだんだけど…
ピーマン、タマネギ…野菜嫌いなのか?
〔なぁなぁ、これにさ、追いチーズやろうぜ〕
〔あ、うまそうだな、それ〕
「な!チーズは買ってあるんだよ」
トースターがあるから、2切れずつ温めた
〔うまーっ〕
「うめー!サイコー」
〔…楽しいわ、本当に〕
「だろ?」
〔あー食ったなー〕
「もう一枚いけたな…次は多めに頼もうぜ」
〔そうだな〕
Rileのメッセージの着信音が鳴る
誰だろ
"友達の家に引っ越したんだって?元気にしてるのか?また、近いうち帰ってくるんだろ?
次は会えるのを楽しみにしているよ"
返事もせずに…ポンっと放り投げると
炭酸飲料をがぶ飲みした
「どうした?」
〔あー 兄貴〕
「見してみ」
〔え?あ、おい〕
「あー…まかせろ」
〔え?〕
勝手にスマホを操作している
何してるんだ、こいつは…
〔おい、何して…〕
"元気だよ!
恋人ができたから、しばらく二人で過ごしたい
僕のことはいいから、みんなで楽しんで!
落ち着いたら連絡するから"
〔勝手に…何して…あ〕
"そうなのか!よかったなー祐二
わかった!落ち着くまではこちらも待とう
またな"
「な?うまくいったろ」
〔…サンキュ〕
うまくいくと思わなかった
しばらくは連絡が来なくて済むのか…良かった
〔…〕
「…祐二」
〔ん?〕
「やっぱ足んねぇよ!なんか食いに行こうぜ」
〔…そうだな!行くか〕
こんな具合に、
雅史のおかげで、悩まなくて済んでいる
助かっているんだ 本当に
ふーっ
「大丈夫か?」
〔あ、いや、さすがに食いすぎた 大盛りにするんだもん 食べきれないかと思ったよ〕
「こんぐらい余裕だろー?」
〔お前と暮らしたら太りそうだよな…〕
「じゃあ、運動でもすっか!」
〔そうだなー走って帰るか〕
「競争な フォミマまで よーい、ドン!!」
〔あ!ずるいぞ!〕
「はぁ…はぁ…」
〔言い出しっぺだから…速いのかと思ったら…
はぁ…余裕で遅いじゃんか〕
「疲れた…久々に走った…はぁ…」
〔いいよ、飲み物買ってやるから 待ってな〕
「さんきゅ…はぁ…」
飲み物と、軽くデザートも選んできて
よぼよぼと歩きながら帰った
まだ若いのに…体力つけないとな…
「ジムでも通うか?」
〔いきなりハードル高くないか!?〕
「んー…じゃあ!家でできる筋トレとか!」
〔あ、いいかもしんない 動画探すか〕
「祐二、明日からな」
〔お前、やる気ないだろ〕
「今日はもうキツイって 風呂も入るのだりーもん」
〔汗かいてんだ、入るぞ〕
「やだ!このまま寝たい…」
〔汚ねーな!行くぞ ほら!!〕
「力つえーな、おい…」
なんで男二人でシャワーを浴びなきゃならんのだ…
勘弁してくれよ、なんて思ったけど
水掛け合ったりして…やっぱり楽しかった
子どもかよ…
〔髪拭けよ!濡れたままだとよくないだろ〕
「疲れたー」
〔こいつ…二度と競争とか言うなよ!〕
髪を拭いて乾かしてやった
こいつの髪、さらさらしてんなー
「なぁ!祐二…」
〔え?〕
振り向いた、雅史の顔を見て
不覚にもドキッとしてしまった
おいおい…相手は雅史だぞ?
「祐二?」
〔あ、なんだ?〕
「俺もやってやるよ!」
〔いいよ、僕は…〕
「良いから!座れ」
〔…〕
慣れた手つきで髪を乾かしている
こいつ、彼女とかいたんだなー
「結構難しいのな 初めてやったわ」
〔え?初めてだったの?慣れてるかと思った〕
「いや?初めて」
〔へぇー意外だな〕
「意外?」
〔元カノとかいるんだろー?〕
「いねーよ?」
〔へぇー?そうなんだ〕
「…お前さ」
〔ん?〕
「いや?デザート買ってくれてたろ?食おうぜ」
〔まだ食うのかよ!?〕
「さっき走ったじゃんか 腹減った」
〔…燃費悪いな…〕
デザート食って、テレビ見て
いい休みになったなー
あー眠いかも…
「…じ 祐二…?」
呼ばれてる気がするけど…
目が開かない
眠い…無理だ…起きてられ…な…い
ん…なんか、なんだ…
くすぐったい…気がする
〔ん…〕
真っ暗だ…まだ夜か…もう少し眠れる…な
〔え?〕
明らかに何かされている…
〔なに…なんだ…?〕
「起きた?祐二」
〔雅史…?あ…え?ちょ!ちょっとまて…
どこ、触って…〕
「俺、元カノなんかいねーよ?」
〔それは、さっき…っ、〕
「お前がずっと好きだったんだから」
〔…へ?今、なん、て〕
「好きだ…祐二」
「いや、僕たちは男ど…」
〔ん…入った…〕
「え…」
雅史の…に、入ってる…のか…?
「俺が動くから、そのままでいて」
〔あ、ちょっ……!!!んっ〕
なんだこれ…気持ちいい…
初めてなのに…腰が動いて…
〔…〕
キスされたり、身体中舐められて
…
気持ちよすぎて…逝ってしまった
「気持ちよかっただろ?」
〔…〕
「怒んなよ…」
〔…〕
「なぁ、祐二…」
〔どうしてくれるんだ…〕
「ハマれよ、俺に」
〔…〕
「女なんか忘れさせてやる」
〔…雅史…〕
「ん?」
〔気持ちよかった…キス、して〕
「…」
一晩中、してしまった
男とするのが…こんなに気持ちいいなんて…
「違うだろ」
〔え?〕
「俺とするから、気持ちいいんだろ?」
〔…わかんない〕
「へぇー?」
〔…なに〕
「いや?わかるまで、可愛がってやるよ?」
〔!!!!〕
いちいち、ドキッとさせてくる…
勘弁してくれ…
さすがに仕事を休むわけにいかないから、
お互いにへろへろの体で出勤した
〔やべー…今日は早く寝ないと…〕
「眠れると思うなよ?」
〔…出ていくぞ〕
「…それは困る」
〔今日は早く寝るぞ…あれは、休みの前の日だけだ〕
「はぁー!?」
〔さ、仕事すんぞ〕
納得いかない!みたいな、顔されても無理なものは無理だ
働かなきゃ、家賃も入れられないんだぞ…
まったく…
「なぁー 一回でいいからー」
〔でかい声でやめろ!もう!わかったから〕
「よーし!今日は俺がごちそうするよ 飯行こ」
〔はいはい…はぁ〕
あれから、毎日してる…さすがに一回ずつにしているけど…
すっかりハマってしまった…
「あ、もうすぐここ更新なんだよなー」
〔そうなんだ?広いとこ、引っ越すか?〕
「やだよ」
〔なんで?広いほうがいいだろ…〕
「お前に部屋渡したら出てこないだろ
俺、ずっととなりに置いときてぇもん」
「…」
これだよ
いちいち、こういう言葉にドキドキさせられているんだ
「なんだよ」
〔べつに〕
「…惚れたか?」
にやにやしながら覗き込むこいつの額に
思いっきりデコピンを食らわせてやった
タイトル〘思いがけない掘り出し物〙
Fin…
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